英語を独学で進めるか、スクールに通うかという問いは、どちらが優れているかという形では答えが出ません。
同じ人が同じ期間に両方を試すことはできないので、比較そのものが成立しないからです。
そこでこのページでは、公表されている数字だけを使って、条件ごとにどちらが速くなりやすいかを分けて並べます。
使うのは米国務省・Cambridge English・文部科学省・総務省が公表している値で、出どころは本文中と記事末に置きました。
独学とスクールの「速い」を先に定義しないと比較にならない
速さを比べるには、何から何までの時間を測るのかを決める必要があります。
英語学習の場合、この起点と終点を決めずに話が進むことがほとんどです。
起点は「いまの自分の水準」で、終点は「到達したい水準」になります。
この2つが数字で決まっていないと、独学が速いという主張もスクールが速いという主張も検証できません。
水準の目盛りとして使いやすいのはCEFRで、A1からC2までの6段階に分かれています。
各種の英語試験は、自分のスコアがCEFRのどの位置に当たるかを公表しているので、そこから起点を数字にできます。
起点と終点が決まると、次に必要なのは「その差を埋めるのに何時間かかるか」という総量です。
この総量が分かってはじめて、独学とスクールのどちらがその時間を確保しやすいかという話に進めます。
独学かスクールかを決める前に、必要な総時間の桁を知っておく
Cambridge Englishは、初学者の状態からCEFRの各レベルに到達するまでの目安時間を公表しています。
これはguided learning hoursと呼ばれ、教室での学習や、語学力を伸ばすために設計された宿題などを含む時間を指します。
| CEFRレベル | 初学者からの累計の目安 | ひとつ下のレベルからの差 |
|---|---|---|
| A1 | 90〜100時間 | — |
| A2 | 180〜200時間 | 約90〜100時間 |
| B1 | 350〜400時間 | 約170〜200時間 |
| B2 | 500〜600時間 | 約150〜200時間 |
| C1 | 700〜800時間 | 約200時間 |
| C2 | 1,000〜1,200時間 | 約300〜400時間 |
累計の数字はCambridge English「Guided learning hours」の公表値で、右端の差は筆者が引き算したものです。
同ページは、1レベル上げるのにおよそ200時間という目安も示しています。
同時に、この数値は目安にすぎず、必要な時間は人によって増減するとも明記されています。
ここで押さえておきたいのは、桁が「数百時間」だという点です。
数十時間で1段上がる前提で計画を立てると、独学でもスクールでも予定は崩れます。
独学とスクールで変わるのは総時間ではなく、週あたりの密度
総時間の目安が分かると、次に判断材料として生きてくるのは1週間に何時間を割り当てられるかです。
この点で参考になるのが、米国務省の外交官養成機関が公表している語学研修の設計です。
同機関は、典型的な1週間を「授業23時間・自習17時間」と説明しています。
つまり週40時間、平日を丸ごと語学だけに使う設計です。
| 難易度の区分 | 研修期間 | 授業時間の合計 |
|---|---|---|
| カテゴリーI(英語に近い言語) | 24〜30週 | 552〜690時間 |
| カテゴリーII | 約36週 | 828時間 |
| カテゴリーIII | 約44週 | 1,012時間 |
| カテゴリーIV(超高難度) | 88週 | 2,200時間 |
数値はU.S. Department of State「Foreign Language Training」の公表値です。
同ページは、この期間が学習者の適性や過去の学習経験、教室で過ごす時間によって変わるとも書いています。
なお、この数字は英語を母語とする人が他の言語を学ぶ場合のもので、日本語を母語とする人が英語を学ぶ場合の数字ではありません。
そのまま裏返して使えるかどうかは公表資料からは分からないので、ここでは「密度の設計例」としてだけ読んでください。
読み取れるのは、専門機関が本気で短期間に仕上げるときは、週40時間という密度を置いているという事実です。
週3時間の独学と比べると、同じ総時間に到達するまでの期間は13倍以上の開きになります。
独学とスクールの差が出るのは、時間の質より「時間の確保」のほう
ここまでの2つの表を重ねると、速さを決めているのは主に週あたりの時間だと分かります。
仮にB1からB2まで約200時間だとすると、週あたりの時間で期間はこう変わります。
| 週あたりの学習時間 | 200時間に到達するまで |
|---|---|
| 週2時間 | 100週(約1年11か月) |
| 週5時間 | 40週(約9か月) |
| 週10時間 | 20週(約4か月半) |
| 週20時間 | 10週(約2か月半) |
| 週40時間 | 5週 |
この表は目安時間を週数で割っただけの単純計算で、公表された調査結果ではありません。
それでも、独学かスクールかという問いの前に決めるべき変数がどれかは、はっきり見えてきます。
週2時間しか出せない人がスクールに入っても、期間は劇的には縮みません。
逆に、週10時間出せる人が独学で進めても、条件がそろえば同じ期間で進みます。
つまり判断の分かれ目は、その週あたりの時間を自分ひとりで確保し続けられるかどうかに移ります。
独学の基準線として、日本の学校教育で英語に使う時間を数えてみる
自分の出発点を把握するために、学校教育で英語に何時間使ってきたかを計算しておくと役に立ちます。
授業時数は学校教育法施行規則の別表に定められており、文部科学省が公表しています。
| 段階 | 授業時数 | 1単位時間 | 時間に換算すると |
|---|---|---|---|
| 小学3・4年(外国語活動) | 2年間で計70単位時間 | 45分 | 52.5時間 |
| 小学5・6年(外国語科) | 2年間で計140単位時間 | 45分 | 105時間 |
| 中学1〜3年(外国語) | 各学年140単位時間・計420単位時間 | 50分 | 350時間 |
| 小中の合計 | 630単位時間 | — | 507.5時間 |
小学校の時数は文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編」に、中学校の時数と1単位時間は文部科学省「中学校標準授業時数」(学校教育法施行規則 別表第二)に記載があります。
時間への換算は、単位時間の数に1単位時間の分数を掛けた筆者の計算です。
この507.5時間という数字を、先ほどのCEFRの目安と重ねると、ちょうどB2の目安(500〜600時間)に届く量になります。
独学の計画を立てるときに、この時間の積み上げを鵜呑みにしてはいけない理由
ところが、実際の到達状況はこの計算とは一致していません。
文部科学省の令和6年度「英語教育実施状況調査」によると、CEFR A1レベル相当以上を達成した中学3年生の割合は52.4%です。
高校3年生でCEFR A2レベル相当以上を達成した割合は51.6%、B1レベル相当以上は21.2%となっています。
授業時数を単純に足すとB2の目安に届く量になるのに、実際の到達水準はA1やA2の付近に集まっているわけです。
この差が何によるものかは、公表資料からは特定できません。
考えられる要因としては、単位時間のすべてが英語に触れる時間ではないこと、9年に分散した時間と集中的な時間では性質が違うこと、目安時間そのものが成人の学習者を想定していることなどが挙げられます。
ただし、これらのどれがどの程度寄与しているかを示した調査は見当たりませんでした。
分かっているのは「授業時数の累計」と「到達水準」が一致しないという事実だけで、その理由は分かっていません。
したがって、独学の計画でも「机に向かった時間」だけを数えると、同じずれが起きる可能性があります。
独学のほうが速くなりやすい4つの条件
ここからは、条件別にどちらが速くなりやすいかを分けます。
独学が有利に働くのは、次の4つが同時に成り立っているときです。
1つめは、自分の現在地をCEFRなどの目盛りで数字にできていることです。
2つめは、その水準に合った教材を自分で選べることです。
3つめは、週あたりの時間を予定表に固定できていることです。
4つめは、誤りを自分で見つけて直せる分野を扱っていることです。
読解と語彙は、正解が本の中にあるので4つめを満たしやすい分野です。
この4つがそろっていれば、移動時間も予約の手間も発生しない分だけ、独学のほうが同じ総時間に早く到達します。
スクールのほうが速くなりやすい4つの条件と、独学が止まる場所
逆に、独学が止まりやすいのは次の4つのどれかに当たっているときです。
1つめは、自分の誤りに自分で気づけない分野を扱っている場合です。
発音や話す力は、自分の出力を自分で判定するのが難しい領域に当たります。
2つめは、期日が外から決まっていて、逆算の設計が必要な場合です。
3つめは、週あたりの時間を自分では固定できず、予定が毎週崩れる場合です。
4つめは、教材の選択そのもので時間を使ってしまい、学習に入れない場合です。
この4つに当たっているとき、外から時間と手順を固定する仕組みは判断材料として大きくなります。
言い換えると、スクールが速いのではなく、独学が止まる要因を外部化できるかどうかの問題です。
独学とスクールの費用は「1時間あたり」に直してから比べる
費用の比較は、月額や総額のままでは意味を持ちません。
独学は教材費が中心なので、同じ教材を何時間使うかで1時間あたりの負担が大きく変わります。
スクールは期間契約が中心なので、契約期間に自分が確保できる総時間で割る必要があります。
| 比べる項目 | 独学 | スクール |
|---|---|---|
| 主な支出 | 教材・試験の受験料 | 受講料・入会金 |
| 時間あたりの計算 | 教材費 ÷ その教材に使った時間 | 総額 ÷ 契約期間に確保できる総時間 |
| 途中でやめたとき | 教材は手元に残る | 契約により精算方法が変わる |
| 時間が確保できなかったとき | 支出は増えない | 時間あたりの負担が上がる |
最下段が重要で、時間を確保できないほどスクールの1時間あたりの負担は上がります。
忙しいからスクールに入るという判断は、この点だけを見ると逆向きに働くことがあります。
なお、期間が2月を超えて金額が5万円を超える語学教室の契約は、特定商取引法の特定継続的役務提供に当たり、中途解約の規定が働きます。
この金額の基準は法令上の区分で、税込か税抜かの表記は置かれていないため、実際の契約書での確認が必要です。
詳細は消費者庁「特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供」に記載があります。
独学からスクールへ、スクールから独学へ切り替える判断の目印
どちらかを選んだあとも、途中で切り替えたほうがよい場面があります。
独学からスクールへ移る目印は、3か月続けても週あたりの時間が予定どおりに積み上がらないことです。
計画の問題ではなく実行の問題なので、教材を変えても同じことが起きます。
もうひとつの目印は、同じ誤りを繰り返していると分かっているのに、直し方が分からないことです。
逆に、スクールから独学へ移る目印は、指定される課題を毎回余裕をもって終えられるようになったことです。
この状態は、設計を自分で持てる段階に入った合図として読めます。
もうひとつは、面談で確認される内容が自分の記録と一致していて、新しい指摘が出なくなったときです。
独学とスクールの併用が成立する条件と、成立しない条件
両方を同時に使う選び方もありますが、常に成立するわけではありません。
成立するのは、扱う領域が分かれている場合です。
たとえば読解と語彙を独学で積み、話す練習だけを外部に置く分け方は、時間が競合しません。
成立しないのは、同じ領域を二重にやろうとして、週あたりの総時間が変わらない場合です。
この場合は支出だけが増えて、期間は先ほどの表のとおりのままになります。
併用を検討するときは、増えるのが時間なのか支出だけなのかを先に確かめてください。
独学とスクールの比較で、いまのところ分かっていないこと
最後に、このページで断定できなかった論点をまとめておきます。
まず、独学とスクールのどちらが平均的に速いかを比べた全国規模の調査は見当たりませんでした。
形態別に到達水準を追跡した公的統計が存在しないため、平均としてどちらが速いかは分かりません。
次に、Cambridge Englishの目安時間が、日本語を母語とする学習者にそのまま当てはまるかどうかも公表されていません。
同様に、米国務省の研修期間は英語話者が他言語を学ぶ場合の数字で、逆方向の数字ではありません。
さらに、学校の授業時数の累計と実際の到達水準がずれる理由も、要因ごとの寄与は分かっていません。
分かっているのは、どちらの形態でも総時間の桁は数百時間だということと、週あたりの時間で期間が決まるということの2つです。
まとめ:独学とスクールの判断は、時間の順に決めていく
ここまでの内容を、決める順番に並べ直します。
最初に、いまの水準と目標の水準をCEFRなどの目盛りで数字にします。
次に、その差を埋めるのに必要な総時間の目安を、公表されている表から拾います。
そのうえで、週に何時間を英語に出せるかを現実的に決め、期間を割り算で出します。
ここまでで期間の見込みが立つので、最後に「その週あたりの時間を自分で守れるか」を判断します。
守れるなら独学、守れないなら守らせる仕組みを外から買う、という順序になります。
どちらが優れているかではなく、自分の実行力の弱点をどこで補うかという問いに置き換えると、判断がぶれにくくなります。
Cambridge English「Guided learning hours」(https://support.cambridgeenglish.org/hc/en-gb/articles/202838506-Guided-learning-hours)
U.S. Department of State「Foreign Language Training」(https://www.state.gov/foreign-language-training/)
文部科学省「令和6年度 英語教育実施状況調査」(https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1415043_00013.htm)
文部科学省「中学校標準授業時数」(学校教育法施行規則 別表第二)(https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2018/09/20/1409429_012_1.pdf)
消費者庁「特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供」(https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/)
本文の数値は2026年9月時点で各公表資料に記載されていたものです。最新の内容は各公式ページでご確認ください。

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