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観光地の多言語対応はどこまで進んだ?観光庁の公表データを並べた

訪日客が観光中に多言語表示で困った割合10.9%・スタッフとの英語コミュニケーションで困った割合15.4%という観光庁調査の結果を並べた、AI語学の解説記事のアイキャッチ
訪日客が観光中に多言語表示で困った割合10.9%・スタッフとの英語コミュニケーションで困った割合15.4%という観光庁調査の結果を並べた、AI語学の解説記事のアイキャッチ

日本の観光地で、英語や多言語の案内はどこまで整っているのか。

観光庁が2026年4月28日に公表した令和7年度の調査では、訪日旅行中に「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」で困ったと答えた人は10.9%、「施設等のスタッフとのコミュニケーション(英語が通じない等)」で困った人は15.4%だった(回答4,110件・複数選択)。

同じ調査で、多言語表示を「便利だと感じた」と答えた人は92%にのぼる。

この記事は、観光庁と日本政府観光局(JNTO)が公表している調査結果・統計を並べ直したものだ。

数字は2026年9月21日に各機関の公表資料で確認した。

確認が取れなかったものは載せていない。

目次

観光中に「多言語で困った」人は何%か(最新の公表値)

観光庁は、訪日外国人旅行者が旅行中に困ったことを継続的に調べている。

令和7年度の調査は、成田国際空港・東京国際空港・関西国際空港・福岡空港・新千歳空港の5空港で、出国前の訪日外国人に対面で行われた。

調査期間は令和7年11月18日から令和8年1月13日まで、回収は4,110件である。

上位7項目と「困ったことはなかった」の割合は次のとおりだ。

順位旅行中に困ったこと令和7年度の割合
1ごみ箱の少なさ17.2%
2施設等のスタッフとのコミュニケーション15.4%
3観光地や地域の混雑12.9%
4交通機関の利用11.3%
5多言語表示の少なさ・わかりにくさ10.9%
6クレジット/デビットカードの利用10.7%
7入国手続き10.3%
-困ったことはなかった43.7%

言葉に関わる項目は2位と5位で、1位のごみ箱に次ぐ位置にある。

この表を読むときの前提

複数選択の設問なので、割合の合計は100%にならない。

母数は空港で回答した訪日外国人旅行者4,110人であり、日本の観光施設の数を数えたものではない。

観光の多言語対応で困った割合は3年でどう動いたか

同じ設問は令和5年度・令和6年度にも行われている。

観光庁の報道発表には、3か年を並べた抜粋表が載っている。

項目令和5年度(n=4,012)令和6年度(n=4,189)令和7年度(n=4,110)
ごみ箱の少なさ30.1%21.9%17.2%
施設等のスタッフとのコミュニケーション22.5%15.2%15.4%
観光地や地域の混雑令和6年度新設13.1%12.9%
交通機関の利用12.8%12.2%11.3%
多言語表示の少なさ・わかりにくさ13.4%10.8%10.9%
クレジット/デビットカードの利用7.0%7.8%10.7%
入国手続き3.5%8.6%10.3%
困ったことはなかった29.7%51.1%43.7%

観光庁は多言語表示とスタッフとのコミュニケーションを「概ね横ばい」と説明している。

なお令和2年度から令和4年度は調査そのものが実施されていない。

別紙の4か年比較グラフでは、令和元年度(n=4,006)の値として多言語表示11.1%、スタッフとのコミュニケーション17.0%という数値ラベルが付されている。

観光地のどこで多言語表示に困ったのか

別紙には、多言語表示で困ったと答えた446人に対する「場所」の内訳が載っている。

都市部のみを訪れた人は166人、地方部のみを訪れた人は93人が母数だ。

困った場所全回答者(n=446)都市部のみ(n=166)地方部のみ(n=93)
鉄道駅構内24%30%16%
飲食店24%23%23%
その他小売店20%23%20%
百貨店・ショッピングセンター19%19%20%
その他観光スポット13%10%15%
城郭・神社仏閣13%11%9%
バスターミナル構内11%11%9%
美術館・博物館9%6%16%
国立公園9%8%9%
ホテル8%5%11%
観光案内所6%6%5%

観光庁は都市部では鉄道駅構内が30%で最多、地方部では飲食店が23%で最多とまとめている。

美術館・博物館は地方部だけ16%に上がり、都市部の6%と10ポイント離れている。

観光客は多言語表示の「何」に困ったのか

困った中身の内訳も同じ446人が母数になっている。

困った内容全回答者(n=446)都市部のみ(n=166)地方部のみ(n=93)
多言語対応されていない/表示言語数が不足している67%63%70%
記載量が原文と比較して少ない24%22%22%
誤訳があった20%24%14%
固有名詞等の表記が統一されていない9%8%13%
その他5%3%4%

最大の不満は「そもそも多言語で書かれていない・言語の数が足りない」で67%を占める。

一方で、訳の量が足りない24%と誤訳20%を合わせると、翻訳の中身に関する不満も一定の厚みがある。

都市部では誤訳が24%で2番目に多く、地方部では14%にとどまる。

観光中に言葉で詰まった人がとった行動

困ったあとに何をしたのかも、同じ調査で聞かれている。

困った場面とった行動割合
多言語表示(n=446)自動翻訳システムや翻訳アプリなどのICTツールで解読した57%
周りのスタッフ・旅行客に聞いた36%
表示の解読を諦めた29%
スタッフとの会話(n=634)スタッフ側または旅行者自らがICTツールで会話した68%
コミュニケーションを諦めた31%
別の対応者を要請して会話した14%

どちらの場面でも、いちばん多い対処は翻訳アプリなどのICTツールである。

多言語表示の解読では、地方部のみを訪れた人のICTツール利用が63%と、都市部の53%を上回っている。

その一方で、会話を諦めた人が31%、表示の解読を諦めた人が29%という数字も同時に出ている。

観光の現場で「英語が通じない」と感じた場所

スタッフとのコミュニケーションで困ったと答えたのは634人だった。

その人たちが挙げた場所は次のとおりだ。

困った場所全回答者(n=634)都市部のみ(n=212)地方部のみ(n=140)
飲食店(レストラン、居酒屋等)38%36%36%
鉄道駅、バスターミナル27%27%23%
その他小売店(ドラッグストア、コンビニ、土産物店等)22%24%18%
百貨店・ショッピングセンター20%26%16%
交通機関(鉄道、地下鉄、バス、タクシー等)の車内20%22%19%
観光スポット、観光案内所18%18%15%
観光スポットに向かう過程14%13%13%
宿泊施設(ホテル、旅館、ゲストハウス等)9%10%14%
公共施設(公共トイレ、医療機関等)5%5%5%
空港、港湾5%6%6%

観光スポットや観光案内所そのものより、飲食店の38%が突出している。

空港や港湾は5%で、いちばん低い部類に入る。

観光の受入環境で「便利だった」と答えた割合

この調査は困りごとだけを聞いているわけではない。

受入環境の項目ごとに「便利だと感じた」割合も公表されている(母数は回答者4,110人)。

受入環境の項目いずれかの都市で「便利」と回答した割合
多言語表示92%
公共交通の利用92%
クレジット/デビットカードの利用91%
施設等のスタッフとのコミュニケーション91%
無料公衆無線LAN(フリーWi-Fi)環境80%

便利だと感じた理由も、項目ごとに集計されている。

項目便利だと感じた理由割合
多言語表示(n=3,780)多言語対応されている場所が全般的に多かった86%
多言語表示の内容に誤訳はなく、理解しやすかった28%
多言語アプリが利用できた5%
スタッフとの会話(n=3,742)スタッフが英語(あるいは自分の言語)を話せた66%
通訳機器・タブレット・指さし会話シートなどを利用できた51%
多言語構内アナウンスを通じて理解できた18%
電話通訳を通して会話が取れた15%
公共交通の利用(n=3,774)目的地への経路を簡単に特定できた82%
目的地へのチケットが簡単に入手できた45%
構内の多言語表示が多く、スムーズに乗車できた34%

スタッフとの会話では、英語などが話せたが66%、通訳機器や指さし会話シートが51%と、人と機械の両方が挙がっている。

観光案内所の言語対応はどこまで整っているか

JNTOは、一定の基準を満たした観光案内所を「JNTO認定外国人観光案内所」として認定している。

カテゴリーは言語対応の体制などで分かれており、2026年8月末時点の認定件数は全国1,501か所だ。

区分言語対応の要件2026年8月末の件数
カテゴリー3常時英語で対応でき、さらに英語以外に2言語以上での案内が常時可能51
カテゴリー2少なくとも英語で対応できるスタッフが常駐、またはビデオ通話での案内が常時可能308
カテゴリー1常駐でなくとも何らかの方法で英語対応が可能703
パートナー施設外国人受入の意欲があり、中立的な地域案内を提供する施設439
合計-1,501

年度末時点の件数も公表されており、総数はゆるやかに減っている。

時点カテゴリー3カテゴリー2カテゴリー1パートナー施設合計
2021年3月末513336874871,558
2022年3月末513296944861,560
2023年3月末533226994401,514
2024年3月末523177044371,510
2025年3月末513177024431,513
2026年3月末513147024371,504
2026年8月末513087034391,501

都道府県別では東京都129か所、北海道102か所、長崎県73か所、大阪府53か所、静岡県と広島県が各49か所の順だ。

いちばん少ないのは宮崎県の10か所である。

観光地に来ている人の規模はどれくらいか

多言語対応の話は、受け入れている人数と切り離せない。

JNTOの推計では、2025年の訪日外客数は42,683,600人で前年比15.8%増だった。

確定値である2024年の36,870,148人を580万人以上上回っている。

国・地域2025年(推計値)前年比
総数42,683,600人+15.8%
韓国9,459,600人+7.3%
中国9,096,300人+30.3%
台湾6,763,400人+11.9%
米国3,306,800人+21.4%
香港2,517,300人-6.2%
タイ1,233,100人+7.3%
豪州1,058,300人+15.0%
フィリピン885,100人+8.1%
シンガポール726,200人+5.1%
カナダ688,000人+18.7%

英語圏として一般に数えられる米国・豪州・カナダ・英国の4市場を足すと5,588,100人になる(編集部が公表値を合計したもの)。

直近では、2026年8月の訪日外客数は3,098,900人で前年同月比9.6%減、1月から8月の累計は27,626,300人で前年同期比2.7%減となっている。

観光の受入が地方へ広がっている数字

観光庁の宿泊旅行統計調査では、2025年の外国人延べ宿泊者数の確定値は179,922,130人泊で前年比9.4%増だった。

2019年と比べると55.6%増になる。

伸び方は三大都市圏と地方部で差がある。

区分2025年の前年比
三大都市圏(東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・大阪・京都・兵庫の8都府県)+5.1%
地方部(上記以外の道県)+19.1%

都道府県別の上位は次のとおりだ。

都道府県2025年の外国人延べ宿泊者数前年比2019年比
全国179,922,130人泊+9.4%+55.6%
東京都60,115,730人泊+5.8%+104.8%
大阪府24,517,740人泊-3.5%+36.8%
京都府18,291,230人泊+8.0%+52.1%
北海道13,302,640人泊+29.0%+51.1%
沖縄県9,211,700人泊+32.8%+18.8%
福岡県8,421,130人泊+14.0%+97.6%

地方部の伸びが都市部の約3.7倍という構図は、多言語表示で困った場所の内訳が都市部と地方部で違っていたことと重ねて読める。

観光庁が決めている観光地の英語表記のルール

日本の観光地の多言語表示には、国が定めた共通の指針がある。

観光庁は平成26年3月に「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」を策定した。

使用言語は英語を基本とし、禁止・注意を示すものと、名称・案内・誘導・位置を示すものは英語の併記を基本とする。

展示物等の文章解説は、視認性や美観に問題がない限り英語を表記することが望ましいとされている。

施設や地域の特性から必要性が高い場合は、中国語・韓国語のほかタイ語やロシア語などを併記することが望ましいとも書かれている。

専ら地域住民が使う施設は日本語表記のみでよい。

ガイドラインには、英語・中国語・韓国語の3言語で400以上の用語・文例の対訳が収録されている。

英語表記の作り方は、次の型で示されている。

型ガイドラインの例
固有名詞(ローマ字)+普通名詞(英語)成田空港=Narita Airport/日比谷公園=Hibiya Park
切り離すと意味をなさない場合は全体をローマ字にして英訳を重ねる月山=Mt. Gassan/荒川=Arakawa River/清水寺=Kiyomizu-dera Temple
日本語の読みが確立している駅名などはローマ字+意味の補記国会議事堂前=Kokkai-Gijidomae(National Diet Bldg.)
日本文化の理解に読みが要るものはローマ字+英語の補記茶碗=Chawan(Tea bowl)/暖簾=Noren(Traditional shop curtain)
読みが広く知られているものは英語の補記なし侍=Samurai/温泉=Onsen/寿司=Sushi
訳語がない場合はローマ字+説明棚田=Tanada(rice terrace)/酒蔵=Sakagura(sake brewery)

温泉については、Hot SpringやSpaなど他の訳語もあるなかで、海外のガイドブックを含めて定着しているとしてOnsenに統一する方針が示されている。

観光ガイドの国家資格は何言語あるか

報酬を得て外国語で旅行案内を行う国家資格が全国通訳案内士だ。

試験はJNTOが実施しており、受験言語は10言語に分かれている。

受験言語受験者数最終合格者数最終合格率
英語3,180人500人15.7%
中国語268人29人10.8%
フランス語146人4人2.7%
スペイン語118人20人16.9%
韓国語82人12人14.6%
イタリア語55人4人7.3%
ドイツ語47人9人19.1%
ロシア語35人0人0.0%
ポルトガル語34人4人11.8%
タイ語22人3人13.6%
計3,987人585人14.7%

受験者の79.8%が英語に集中している(編集部が公表値から計算した割合)。

受験者数には筆記試験免除者が含まれる。

観光の多言語対応の数字で読み違えやすい点

ここまでの数字は、読み方を間違えやすい形をしている。

まず10.9%という値は、多言語対応ができていない観光地の割合ではない。

空港で回答した訪日外国人4,110人のうち、そう答えた人の割合である。

次に、困った人の割合と便利だった人の割合は排他ではない。

同じ調査で多言語表示が便利92%と、多言語表示で困った10.9%が同時に成立している。

また、場所別・内容別の内訳は母数が小さい。

多言語表示で困った人のうち地方部のみを訪れた人は93人にすぎず、1人あたりが1ポイント以上動く規模だ。

調査場所が5空港に限られている点も押さえておきたい。

観光の多言語対応について最後に確認しておくこと

この記事で確認した数字
  • 令和7年度に多言語表示で困った訪日外国人は10.9%、スタッフとの会話で困った人は15.4%(n=4,110・複数選択)
  • 多言語表示で困った中身は「多言語対応されていない/言語数が不足」が67%で最多(n=446)
  • 困ったときの対処はICTツールが最多で、表示は57%、会話は68%
  • 多言語表示を便利だと感じた人は92%、理由は「対応している場所が全般的に多かった」が86%
  • JNTO認定外国人観光案内所は2026年8月末で1,501か所、うち英語+2言語以上のカテゴリー3は51か所
  • 2025年の訪日外客数は42,683,600人、外国人延べ宿泊者数は179,922,130人泊
  • 多言語対応の指針は英語が基本で、対訳語は英語・中国語・韓国語の3言語に400以上収録
  • 全国通訳案内士試験の受験言語は10言語、2025年度の最終合格者は585人
【この記事の数字の出どころ】

観光庁「令和7年度『訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート』調査結果」および同報道発表(令和8年4月28日公表/調査期間 令和7年11月18日〜令和8年1月13日/回収4,110件)。確認日2026年9月21日。

日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2025年12月推計値)」(2026年1月21日発表)および「訪日外客数(2026年8月推計値)」(2026年9月16日発表)。確認日2026年9月21日。

観光庁「宿泊旅行統計調査(2025年・年間値(確定値))」(2026年7月6日公表)。確認日2026年9月21日。

日本政府観光局(JNTO)「『JNTO認定外国人観光案内所』認定件数」(2026年8月末現在)および外国人観光案内所認定制度の認定区分。確認日2026年9月21日。

観光庁「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」(平成26年3月策定)概要資料。確認日2026年9月21日。

日本政府観光局(JNTO)「2025年度 全国通訳案内士試験 受験者数及び合格者数」。確認日2026年9月21日。

英語圏4市場の合計と英語受験者の構成比は、編集部が上記の公表値から計算したものである。

観光地の多言語対応は、公表値だけを見れば「9割が便利だと答え、1割が困っている」という形で止まっている。

困りごとの中身が「言語数が足りない」から「訳の量と正確さ」へ広がっている点と、地方部の宿泊が前年比19.1%増で伸びている点は、いずれも国の公表資料から読み取れる事実だ。

数字が更新されたら、この記事も各機関の公表値に合わせて差し替える。

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