英語学習が続かないという悩みは、原因が本人の意志にあるものとして語られがちです。
ところが、公表されている統計を並べていくと、意志より先に確認すべき条件がいくつも出てきます。
このページでは、総務省統計局・文部科学省・Cambridge Englishが公表している数字だけを使って、続かなさの構造を分解します。
推測で埋めた部分と、公表値をそのまま使った部分は、文中で区別して書きました。
英語学習が続かない理由は、まず「調べられていること」と「いないこと」に分ける
最初に、このテーマで確認できる範囲をはっきりさせておきます。
日本の公的統計には、「英語学習をやめた理由」を全国規模で集計したものが見当たりませんでした。
つまり「続かない理由の第1位は◯◯」という形の答えは、公的なデータからは出てきません。
一方で、どれくらいの人が学習しているか、どんな目的で学んでいるか、年齢によってどう違うかは、全国調査の結果として公表されています。
また、必要な学習時間の目安も、試験実施団体が数字で示しています。
このページで扱うのは、その2種類の公表値と、そこから機械的に計算できることだけです。
「なぜやめたか」という心理の部分は調べられていないので、断定せずに保留にします。
英語学習を1年間で実際に行った人はどれくらいいるのか
総務省統計局の令和3年社会生活基本調査は、2020年10月20日から2021年10月19日までの1年間を対象に、自由時間の学習行動を集計しています。
この調査では、社会人の職場研修や、児童・生徒・学生が学業として行うものは除かれています。
同調査によると、「学習・自己啓発・訓練」を行った人は10歳以上で4455万6千人、行動者率は39.6%でした。
2016年と比べると2.7ポイント上昇しており、減っているわけではありません。
その内訳のうち「英語」を挙げた人の割合は、男性が13.5%、女性が12.2%です。
| 学習の種類 | 男性の行動者率 | 女性の行動者率 |
|---|---|---|
| パソコンなどの情報処理 | 20.1% | 13.0% |
| 家政・家事 | — | 17.7% |
| 英語 | 13.5% | 12.2% |
| 人文・社会・自然科学 | 11.9% | — |
| 商業実務・ビジネス関係 | 11.5% | — |
| 芸術・文化 | — | 12.5% |
数値は総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」結果の概要からの引用で、表に載せたのは各性別で上位に入っていた項目です。
つまり、英語は10人に1人強が1年のうちに手をつけている分野だということになります。
やっている人が極端に少ないわけではなく、始める人は毎年一定数いると読めます。
英語学習を続けている人の割合は、年齢でどう変わるのか
同じ調査には、年齢階級ごとの行動者率も載っています。
英語だけを取り出した年齢別の数字は公表されていないため、ここでは「学習・自己啓発・訓練」全体の値を見ます。
| 年齢階級 | 2016年 | 2021年 | 増減(ポイント) |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 52.8% | 56.5% | 3.7 |
| 25〜29歳 | 46.0% | 49.6% | 3.6 |
| 30〜34歳 | 40.2% | 47.3% | 7.1 |
| 35〜39歳 | 38.8% | 45.4% | 6.6 |
| 40〜44歳 | 35.1% | 39.9% | 4.8 |
| 45〜49歳 | 34.5% | 38.1% | 3.6 |
| 50〜54歳 | 37.2% | 38.8% | 1.6 |
目立つのは、20代前半から40代後半にかけて行動者率が下がり続けている点です。
同時に、上昇幅がいちばん大きかったのは30〜34歳の7.1ポイントで、次が35〜39歳の6.6ポイントでした。
つまり30歳代は、水準としては低いのに伸び幅は最大という位置にあります。
この調査は理由を聞いていないので、なぜ年齢とともに下がるのかは分かりません。
ただ、続かなさが個人の性格ではなく、年齢に伴う時間の制約と重なって現れていることは読み取れます。
英語学習の目的の内訳が、続かなさの構造を説明している
同じ調査は、学習の種類ごとに目的も集計しています。
それによると、「英語」「芸術・文化」「人文・社会・自然科学」などは「自分の教養を高めるため」が最も高くなっています。
一方で「パソコンなどの情報処理」「商業実務・ビジネス関係」などは「現在の仕事に役立てるため」が最も高いという結果でした。
この対比に、続かなさの構造がひとつ見えます。
仕事に直結する学習には、期日と評価が外から与えられます。
教養を目的とする学習には、それがありません。
やめても誰も困らない構造になっているという点で、英語学習は同じ「学習」でも性質が違います。
この違いは意志の強さとは無関係で、目的の置き方によって生じています。
英語学習が途切れる最大の要因は、必要時間の見積もり違いかもしれない
もうひとつ、数字から見える要因があります。
Cambridge Englishは、初学者の状態からCEFRの各レベルに到達するまでの目安時間を公表しています。
A1が90〜100時間、A2が180〜200時間、B1が350〜400時間、B2が500〜600時間、C1が700〜800時間、C2が1,000〜1,200時間という累計の目安です。
同ページは、1段階上げるのにおよそ200時間という目安も示しています。
この200時間を週あたりの時間で割ると、期間はこう変わります。
| 1週間に使える時間 | 200時間に届くまでの期間 | 1日あたりに直すと |
|---|---|---|
| 週1時間 | 200週(約3年10か月) | 約9分 |
| 週3時間 | 約67週(約1年3か月) | 約26分 |
| 週5時間 | 40週(約9か月) | 約43分 |
| 週10時間 | 20週(約4か月半) | 約1時間26分 |
累計時間はCambridge English「Guided learning hours」の公表値で、期間の欄は筆者の割り算です。
同ページは、この数値が目安であり、必要な時間は人によって増減するとも明記しています。
それでも、週3時間でおよそ1年3か月という桁は変わりません。
3か月やって変化を感じないという状態は、この計算からすると想定どおりの経過です。
つまり「伸びないからやめた」の相当部分は、伸びていないのではなく、まだ到達していないだけという可能性があります。
英語学習の計画が崩れる型を、時間の側から4つに分ける
ここからは、公表値から機械的に導ける範囲で、崩れ方を分類します。
以下は調査結果ではなく、これまでの数字を組み合わせた筆者の整理です。
| 崩れ方 | 何が起きているか | 先に確認すること |
|---|---|---|
| 期間の見積もり違い | 数十時間で結果が出る前提で始めている | 目標レベルまでの累計時間を表で確認する |
| 週あたり時間の未確定 | 空いた時間にやる設計になっている | 曜日と時刻を予定表に固定する |
| 目的に期日がない | やめても支障が生じない構造 | 外部試験など期日のある指標を置く |
| 進捗が見えない | 積み上げた時間を記録していない | 時間ではなく回数で記録する |
4つのうち上の2つは時間の問題で、下の2つは設計の問題です。
どれに当たっているかで、打つ手がまったく変わります。
英語学習を続けている人が持っているものを、数字の側から逆算する
「続いた人が何をやっていたか」を全国規模で調べた統計は見当たりませんでした。
そのため、以下に書くのは調査結果ではなく、前の節までの数字から論理的に必要になる条件です。
1つめは、目標レベルまでの累計時間を把握していることです。
把握していれば、3か月で変化がなくても計画どおりだと判断できます。
2つめは、週あたりの時間が固定されていることです。
固定されていれば、割り算で終わりの時期が出るので、進捗が可視化されます。
3つめは、期日のある指標を置いていることです。
社会生活基本調査で英語の目的が「教養」に寄っていた以上、期日は自分で用意しないと外からは来ません。
この3つは、どれも意志ではなく手続きで用意できるものです。
英語学習の記録は、時間ではなく回数で取ると崩れにくい
記録の取り方についても、数字の側から言えることがあります。
累計時間を目標にすると、1回あたりの時間が短い日に記録を付ける意味が薄くなります。
一方、回数で記録すると、短い日も1回として残ります。
前の表のとおり、週3時間なら1日あたり約26分です。
26分を1回として数えると、1年で約365回という単位になります。
この単位のほうが、残り時間の把握と、途切れたときの復帰のどちらにも使いやすくなります。
これも調査に基づく話ではなく、割り算から導ける運用上の整理です。
英語学習の目標を、期日のある外部の指標に置き換える
期日を外から用意する方法として、公的な指標に照らすやり方があります。
文部科学省の令和6年度「英語教育実施状況調査」では、CEFR A1レベル相当以上を達成した中学3年生の割合が52.4%と公表されています。
高校3年生でCEFR A2レベル相当以上を達成した割合は51.6%、B1レベル相当以上は21.2%です。
この数字は、自分の現在地を社会の分布の中に置いて見るときの目盛りとして使えます。
また、同じ調査は第4期教育振興基本計画の目標として、高校生のB1レベル相当以上を3割以上とする水準を挙げています。
自分の目標をこうした公表された区分に合わせておくと、達成したかどうかを他人の評価に頼らず判定できます。
出どころは文部科学省「令和6年度 英語教育実施状況調査」です。
英語学習にお金を払って続ける場合、先に確認しておく契約の条件
続ける仕組みを外から買うという選択もありますが、その場合は契約の条件を先に見ておく必要があります。
消費者庁の特定商取引法ガイドによると、語学教室は「特定継続的役務提供」の対象役務のひとつです。
対象になるのは、期間が2月を超え、かつ金額が5万円を超えるものと定められています。
この2つを満たす契約では、法定書面を受け取った日から数えて8日以内のクーリング・オフができます。
中途解約時に請求できる額の上限も定められており、語学教室では役務提供開始前が1万5000円です。
役務提供開始後は、5万円又は契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額が上限になります。
これらは法令上の区分の金額で、税込か税抜かの表記は置かれていないため、実際の精算は契約書で確認してください。
条文の記載は消費者庁「特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供」にあります。
続かなかったときに何が起きるかを先に知っておくと、始めるときの心理的な負担が下がります。
英語学習が続かない理由について、まだ分かっていないこと
このページで断定を避けた論点を、最後にまとめておきます。
第一に、英語学習をやめた理由を全国規模で集計した公的統計は見当たりませんでした。
したがって、続かない理由の順位や割合を示すことはできません。
第二に、年齢とともに学習の行動者率が下がる原因も、この調査からは分かりません。
時間の制約なのか、優先順位の変化なのか、別の要因なのかは特定できていません。
第四に、記録の取り方や目標設定の違いが継続率にどう影響するかを測った国内の公的調査も見当たりません。
つまり、このページで「やり方」として書いた部分は、公表された数字から導ける整理であって、効果を検証した結果ではありません。
まとめ:英語学習が続かない状態を、意志の問題から手続きの問題に置き換える
確認できた事実を、順に並べ直します。
英語を学ぶ人は男性で13.5%、女性で12.2%おり、少数派というほどではありません。
その目的は「自分の教養を高めるため」が最も多く、期日が外から与えられにくい構造になっています。
一方で必要な時間の桁は数百時間で、1段階上げるのにおよそ200時間という目安が示されています。
週3時間なら1年以上かかる計算なので、数か月で結果が出ないのは想定内の経過です。
この2つを並べると、続かないという現象の多くは、期日の不在と期間の見積もり違いで説明がつく形になります。
どちらも手続きで用意できるものなので、意志の話に戻す前に、そこを先に確認してみてください。
総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」結果の概要(https://www.stat.go.jp/data/shakai/2021/kekka.html)
Cambridge English「Guided learning hours」(https://support.cambridgeenglish.org/hc/en-gb/articles/202838506-Guided-learning-hours)
文部科学省「令和6年度 英語教育実施状況調査」(https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1415043_00013.htm)
消費者庁「特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供」(https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/)
本文の数値は2026年9月時点で各公表資料に記載されていたものです。最新の内容は各公式ページでご確認ください。

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