MENU

英語をやり直すのに必要な学習時間|レベル別の目安をデータで出した

英語をやり直すのに何時間かかるのか。この問いに、公的機関が数字で答えている資料は実はほとんどありません。世の中に出回る「1,000時間」「3,000時間」の多くは出どころが示されていない数字です。

この記事では、出どころが確認できる公表値だけを使います。米国務省FSI(外交官の語学研修機関)が公表する到達時間、総務省の社会生活基本調査が示す日本人の実際の学習時間、IIBCが公表するTOEICスコア分布。この3つを組み合わせて、「いまのペースなら何年かかるか」を計算しました。取得日は2026年9月6日です。

目次

英語のやり直しに必要な学習時間は、公表値がほぼ1つしかない

語学の到達時間を、実測にもとづいて公表している公的機関は多くありません。数少ない例が、アメリカ国務省の外交官養成機関FSI(Foreign Service Institute)です。

FSIは、外交官が実際に研修を受けて一定の運用能力(ILR尺度でスピーキングとリスニングの統合スコア3)に到達するまでにかかった週数と授業時間を、言語のグループごとに公表しています。実際の研修記録にもとづく数字なので、推計ではありません。

ただし1つ大きな前提があります。FSIの数字は「英語を母語とする人が外国語を学ぶ場合」の時間です。日本語話者が英語を学ぶ時間としてそのまま使えるものではありません。この記事では、その点を断ったうえで参考値として扱います。

米国務省FSIが公表する学習時間|日本語と英語は最も遠い組み合わせ

FSIは言語を4つのカテゴリーに分けています。英語からの距離が遠いほど、必要な時間が長くなります。

カテゴリー 説明(FSIの表現) 到達までの週数 授業時間 主な言語
カテゴリーI 英語に近い言語 24〜30週 552〜690時間 フランス語・スペイン語・イタリア語・オランダ語など
カテゴリーII ― 約36週 828時間 ドイツ語・インドネシア語・スワヒリ語など
カテゴリーIII 言語的・文化的に英語と大きく異なる「難しい言語」 約44週 1,012時間 ロシア語・ギリシャ語・ヒンディー語・タイ語など
カテゴリーIV 英語話者にとって例外的に難しい「超難言語」 88週 2,200時間 日本語・中国語・韓国語・アラビア語

日本語はカテゴリーIVに入っています。カテゴリーIの552時間と比べると、授業時間で約3.2〜4.0倍です。

言語間の距離は一方通行ではありません。英語話者にとって日本語が最も遠いなら、日本語話者にとっても英語は最も遠い部類にあたります。だから日本人の英語やり直しの目安として、カテゴリーIVの数字を出発点に置きます。

英語やり直しの学習時間を、自習込みで計算し直すと3,520時間

2,200時間は「授業時間」です。FSIは別に、標準的な1週間の内訳も公表しています。授業23時間+自習17時間=週40時間。つまり授業と同じくらい自習をしている前提の数字です。

2通りの計算と、その差について

計算A:88週×週40時間=3,520時間
計算B:2,200授業時間×(40÷23)=約3,826時間

300時間ほどずれます。FSIが「88週」と「2,200授業時間」の両方を公表しており、割ると週25時間となって「週23時間」と一致しないためです。この記事では少なく見積もるほうを採り、3,520時間を目安として使います。

ここから先の逆算はすべて、この3,520時間に対するものです。

日本人の実際の学習時間は1日13分|英語やり直しの前提が崩れる数字

では、日本人は実際に1日何分学んでいるのか。総務省統計局の令和3年社会生活基本調査に、その数字があります。

10歳以上の「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」の総平均時間は、週全体で1日13分。男性13分、女性12分。2016年の前回調査も13分で、5年間ほぼ動いていません。これは英語だけではなく、資格・パソコン・趣味の学習すべてを含んだ合計です。

同じ調査で、過去1年間に何らかの学習・自己啓発・訓練を行った人の割合(行動者率)は39.6%。2016年の36.9%から2.7ポイント上昇しています。学習の種類別に見ると、「英語」の行動者率は男性13.5%、女性12.2%でした。

学習の種類 男性の行動者率 女性の行動者率
パソコンなどの情報処理 20.1% 13.0%
家政・家事 ― 17.7%
英語 13.5% 12.2%
芸術・文化 ― 12.5%
人文・社会・自然科学 11.9% ―
商業実務・ビジネス関係 11.5% ―

英語は男性で2番目、女性で4番目に多い学習の種類です。やる人は多い。ただし全体の投下時間は1日13分にとどまっています。

英語やり直しの学習時間を「1日◯分×何年」に逆算した

3,520時間という総量を、1日の学習時間ごとに割り戻します。ここからは編集部の計算です。

1日の学習時間 年間の学習時間 3,520時間に届くまで 備考
13分 約79時間 約44.5年 日本の平均ペース(総務省・全学習の合計)
30分 約183時間 約19.3年 ―
1時間 365時間 約9.6年 ―
2時間 730時間 約4.8年 ―
3時間 1,095時間 約3.2年 ―
5時間 1,825時間 約1.9年 ―
週40時間(1日約5.7時間) 約2,080時間 約1.7年 FSIの標準ペース。公表値の88週=約1.7年と一致

一番下の行が検算になっています。週40時間で計算した1.7年が、FSIの公表値である88週(=約1.7年)とぴたり合います。計算の筋道が間違っていないことの確認です。

そして一番上の行が現実です。日本の平均ペースである1日13分では、3,520時間に届くのに44年半かかります。しかもこの13分は英語以外の学習も含んだ合計なので、英語だけならさらに長くなります。

英語やり直しの学習時間の目安を、TOEICスコア分布から現在地で読む

総量の話だけでは動けません。自分がいまどこにいるかが分かって初めて、残りの学習時間を見積もれます。

IIBCが公表する2025年度のTOEIC L&R公開テストのスコア分布(受験者755,473人)から、上位からの累積割合を計算しました。

スコア帯 人数 構成比(公表値) 上位からの累積(自作の計算)
895点以上 32,348人 4.3% 4.3%
845点以上 37,288人 4.9% 9.2%
795点以上 53,005人 7.0% 16.2%
745点以上 63,348人 8.4% 24.6%
695点以上 72,959人 9.7% 34.3%
645点以上 80,080人 10.6% 44.9%
595点以上 81,764人 10.8% 55.7%
545点以上 78,800人 10.4% 66.1%
495点以上 69,738人 9.2% 75.3%
445点以上 59,441人 7.9% 83.2%

2025年度の公開テスト全体の平均は616点(リスニング337点/リーディング279点)。社会人だけに絞ると649点、学生は592点です。700点は上位約34%、800点は上位約16%、900点は上位約4%にあたります。

ただしこの分布は「TOEICを受験した人」の中での位置です。日本人全体の分布ではありません。受験する時点で学習している層なので、実際の順位はもっと上になります。

英語やり直しの学習時間には、伸びが止まる区間がある

学習時間を積めば直線的に伸びる、という前提も疑う必要があります。IIBCが公表する「海外滞在経験・期間別」のIPテストデータが、その手がかりになります。

英語圏への滞在経験 受験者数 平均スコア 1つ前の区分との差(自作の計算)
滞在経験なし 240,450人 501点 ―
6カ月未満 96,400人 597点 +96点
6カ月以上1年以下 12,731人 715点 +118点
1年より多く2年以下 6,381人 712点 −3点
2年より多く 13,114人 750点 +38点

6カ月から1年の区間で118点上がったあと、1年から2年ではむしろ3点下がっています。時間を倍にしても、そのぶん伸びるわけではないことを示す数字です。

注意点として、これは同じ人を追いかけた記録ではなく、区分ごとに別の集団を集計したものです。因果関係を断定できる数字ではありません。それでも「投下時間と伸びは比例しない」という点は読み取れます。

社会人の英語やり直しは、学習時間より「いつ始めるか」で差がつく

もう1つ、社歴別のIPテストデータがあります。企業・団体で実施されたテストの結果です。

社歴 受験者数 平均スコア
内定者 18,502人 639点
新入社員 62,895人 540点
入社2〜5年目 82,566人 562点
入社6〜10年目 61,655人 561点
入社11年目以上 141,343人 522点

最も高いのは内定者の639点、最も低いのは入社11年目以上の522点。その差は117点です。社歴が長くなるほど平均スコアが下がる、という並びになっています。

これも別々の集団の集計であって、同じ人が下がったことを意味しません。ただし「英語をやり直すなら遅いほど不利」という直感を、数字としては裏づけています。総務省の調査でも、学習・自己啓発・訓練の行動者率は20〜24歳の56.5%から45〜49歳の38.1%まで下がっていきます。

英語やり直しの学習時間を、途中で測るためのコスト

3,520時間を1回で走り切る人はいません。途中で現在地を測ることになります。その受験料は各団体が公表しています(すべて税込)。

試験 受験料 備考
TOEIC L&R 公開テスト 7,810円 紙の公式認定証の発行を希望しない場合は7,700円
TOEIC L&R リピート受験割引 6,710円 2026年12月までの試験日。2027年以降は7,150円
TOEIC S&W 公開テスト 10,450円 話す・書く力を測る
英検 2級(本会場・2026年度) 9,000円 2026年度第1回から全級一律100円引き下げ
英検 準1級(本会場・2026年度) 10,400円 ―
IELTS(ペーパー版・コンピューター版) 27,500円 ―
TOEFL iBT(日本国内) US$195 2025年4月1日にUS$245から減額

半年に1回TOEIC L&Rを受けるなら、初回7,810円+リピート6,710円で年14,520円。学習時間を管理するための固定費と考えると、それほど大きな額ではありません。

英語やり直しの学習時間で、まず動かすべき変数はどれか

ここまでの数字を並べると、動かせる変数は限られていることが分かります。

  • 総量(3,520時間)は動かせない:FSIの実測にもとづく数字なので、意志では縮まない
  • 到達レベルは下げられる:FSIの2,200時間はILR尺度で3という高い水準。日常会話が目的なら、目標を下げることで総量は減る
  • 1日の投下時間だけが自由に動く:13分を60分にすれば、44.5年が9.6年になる

計算上、1日の学習時間を4.6倍にすると到達年数は4.6分の1になります。これが唯一の直接的なレバーです。

もう1つ、間接的なレバーが「始める時期」です。社歴別データでも年齢階級別の行動者率でも、遅くなるほど不利になる方向の数字が出ています。

英語やり直しの学習時間まとめ|総量ではなく週の枠で管理する

3,520時間という総量は、目にした瞬間にやる気を削ぐ数字です。しかしこの数字の使い道は、絶望することではなく、週の枠を決めることにあります。

1日1時間なら約9.6年、2時間なら約4.8年。この2つの差は「あと1時間どこから捻出するか」だけです。総量を眺めるより、1週間に何時間割り当てられるかを先に決めたほうが、計画は現実的になります。

この記事の数字の扱い方

FSIの数字は英語母語話者が外国語を学ぶ場合の実測値であり、日本語話者が英語を学ぶ場合の公表値ではありません。参考値として使っています。TOEICのスコア分布・平均スコアはIIBCの公表値、学習時間と行動者率は総務省統計局の令和3年社会生活基本調査の公表値です。「自作の計算」と書いた欄は、公表値から編集部が割り戻した結果です。

この記事で使った一次ソース

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次