社会人の英語学習時間の平均を、体感やアンケートではなく公的統計で確認します。総務省統計局の社会生活基本調査は、全国で無作為に選定した約9万1千世帯・10歳以上の世帯員約19万人を対象に、1日の行動を時間単位で記録してもらう調査です。「英語にどれだけ時間を使っているか」を、この国で最も正確に測っている数字がここにあります。
結論から書くと、社会人が学習に使っている時間は想像よりはるかに短く、しかも働き方によって2.5倍の差がついていました。以下の数字はすべて公表値と、そこから編集部が計算した値です。取得日は2026年9月6日です。
社会人の英語学習時間の平均は、公的調査では「1日13分」から始まる
総務省統計局の令和3年社会生活基本調査によると、10歳以上の「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」の総平均時間は、週全体で1日13分です。男性13分、女性12分。2016年の前回調査も13分で、5年間ほぼ動いていません。
この13分は、英語だけの時間ではありません。資格の勉強、パソコン、簿記、趣味の学びなど、学業以外のあらゆる学習を合計した数字です。英語だけを取り出せば、13分よりさらに短くなります。
同じ調査で、過去1年間に何らかの学習・自己啓発・訓練を行った人の割合(行動者率)は39.6%。そのうち「英語」を挙げた人は男性13.5%、女性12.2%でした。英語は男性で2番目、女性で4番目に多い学習の種類です。
社会人の英語学習時間を、平日・有業者に絞るとさらに短くなる
13分は10歳以上の全員の平均で、学生も退職者も含みます。働いている人だけ、しかも平日に絞ると数字は変わります。
同調査の有業者データでは、日常生活に支障がない人の学習・自己啓発・訓練は週全体で1日7分、支障がある(6か月以上継続)人は9分でした。働いている人の学習時間は、全体平均の半分程度です。
同じ有業者の生活時間を見ると、仕事は支障がない人で5時間44分、支障がある人で4時間55分。1日の可処分時間の大半が仕事で埋まっていることが、そのまま学習時間の短さにつながっています。
テレワークの社会人は、英語を含む学習時間が2.5倍だった
同じ調査で、社会人の学習時間を最も大きく分けていた要因が見つかります。テレワークです。
平日・有業者の生活時間を、テレワーク(在宅勤務)を実施した人としなかった人で比べると、学習・自己啓発・訓練の時間は次のようになっていました。
| 年齢 | テレワーク(在宅勤務) | テレワーク以外 | 差(自作の計算) | 倍率(自作の計算) |
|---|---|---|---|---|
| 有業者 総数 | 10分 | 4分 | +6分 | 2.5倍 |
| 25〜34歳 | 15分 | 4分 | +11分 | 3.75倍 |
| 35〜44歳 | 10分 | 3分 | +7分 | 約3.3倍 |
| 45〜54歳 | 6分 | 3分 | +3分 | 2.0倍 |
25〜34歳では1日15分と4分で、3.75倍の開きがあります。年齢が上がるほど差は縮まり、45〜54歳では2倍に収まります。
ただし注意が必要です。テレワークをしている人としていない人は、職種も業種も違います。この数字は「テレワークにすれば学習時間が増える」という因果を示すものではありません。
社会人の英語学習時間は、通勤1時間3分が消えても6分しか増えなかった
では、テレワークで浮いた時間はどこへ行ったのか。同じ表の全項目を差し引きすると、行き先が全部見えます。
まず通勤・通学は、テレワークで4分、テレワーク以外で1時間7分。差は1時間3分です。この63分がどこへ配られたかを計算しました。
| 行動 | テレワーク | テレワーク以外 | 差(自作の計算) |
|---|---|---|---|
| 通勤・通学 | 4分 | 1時間7分 | −1時間3分 |
| 睡眠 | 7時間32分 | 7時間14分 | +18分 |
| 趣味・娯楽 | 35分 | 19分 | +16分 |
| 仕事 | 8時間37分 | 8時間24分 | +13分 |
| 育児 | 17分 | 7分 | +10分 |
| 食事 | 1時間35分 | 1時間26分 | +9分 |
| 休養・くつろぎ | 1時間30分 | 1時間22分 | +8分 |
| 学習・自己啓発・訓練 | 10分 | 4分 | +6分 |
| スポーツ | 9分 | 4分 | +5分 |
| テレビ・ラジオ・新聞・雑誌 | 58分 | 1時間6分 | −8分 |
| 身の回りの用事 | 1時間9分 | 1時間19分 | −10分 |
通勤で浮いた63分のうち、学習に回ったのは6分。全体の1割にも届きません。最大の受け皿は睡眠の18分、次が趣味・娯楽の16分、そして仕事が13分増えています。
つまり「通勤時間がなくなれば勉強できる」という前提は、統計上は成立していません。時間ができても、学習は自動的には増えない。これが社会人の英語学習時間をめぐる、最も重要な事実です。
年齢が上がるほど、社会人の英語学習時間を確保する人は減る
学習・自己啓発・訓練を行った人の割合を年齢階級別に見ると、はっきりした下り坂になっています。
| 年齢階級 | 行動者率(2016年) | 行動者率(2021年) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 52.8% | 56.5% | +3.7ポイント |
| 25〜29歳 | 46.0% | 49.6% | +3.6ポイント |
| 30〜34歳 | 40.2% | 47.3% | +7.1ポイント |
| 35〜39歳 | 38.8% | 45.4% | +6.6ポイント |
| 40〜44歳 | 35.1% | 39.9% | +4.8ポイント |
| 45〜49歳 | 34.5% | 38.1% | +3.6ポイント |
| 50〜54歳 | 37.2% | 38.8% | +1.6ポイント |
| 55〜59歳 | 37.1% | 39.0% | +1.9ポイント |
20〜24歳の56.5%から45〜49歳の38.1%まで、18.4ポイント下がります。一方で伸び幅が最も大きいのは30〜34歳の+7.1ポイントと35〜39歳の+6.6ポイントで、30代の学習が5年間で明確に増えています。
社会人が英語学習時間を使う理由は「仕事に役立てるため」ではない
同じ調査には、学習の目的も集計されています。ここに意外な結果があります。
「英語」「芸術・文化」「人文・社会・自然科学」では、目的として最も多いのは「自分の教養を高めるため」でした。一方「パソコンなどの情報処理」「商業実務・ビジネス関係」では「現在の仕事に役立てるため」が最も多くなっています。
社会人の英語学習は、統計上は「仕事のため」より「自分のため」に寄っています。この性質は、学習時間が削られやすいことと表裏一体です。仕事に直結する学習は業務時間や研修の枠を取れますが、教養としての学習は可処分時間の奪い合いになります。
社会人の英語学習時間の結果は、TOEICの平均スコアに出ている
投下時間の結果は、テストのスコアに現れます。IIBCが公表した2025年度のTOEIC L&R公開テストのデータを見ます。
公開テスト全体の平均は616点(受験者755,473人)。社会人だけに絞ると649点(308,493人)、学生は592点(434,399人)で、社会人のほうが57点高くなっています。過去3年の推移は2023年度612点、2024年度615点、2025年度616点で、緩やかに上がっています。
ただしこれは「TOEICを受験した社会人」の平均です。受験する時点で英語に時間を割いている層なので、社会人全体の平均ではありません。
社歴が長い社会人ほど、平均スコアが低いという並び
企業・団体で実施されたIPテストのデータには、社歴別の集計があります。
| 社歴 | 受験者数 | 平均スコア | 内定者との差(自作の計算) |
|---|---|---|---|
| 内定者 | 18,502人 | 639点 | ― |
| 新入社員 | 62,895人 | 540点 | −99点 |
| 入社2〜5年目 | 82,566人 | 562点 | −77点 |
| 入社6〜10年目 | 61,655人 | 561点 | −78点 |
| 入社11年目以上 | 141,343人 | 522点 | −117点 |
最も高いのは入社前の内定者、最も低いのは入社11年目以上です。就職活動という締切がなくなったあと、社会人の英語学習時間は積み上がっていないことを示す並びになっています。
これは同じ人を追跡した記録ではなく、区分ごとに別の集団を集計したものです。世代差の影響も含まれます。それでも「社歴が長いほど高い」という結果にはなっていません。
職種で150点以上の差がある|社会人の英語学習時間の投下先
同じIPテストのデータには、職種別の平均スコアもあります。差は社歴よりさらに大きくなります。
| 職種 | 受験者数 | 平均スコア |
|---|---|---|
| 海外 | 7,820人 | 717点 |
| 教育 | 18,323人 | 711点 |
| 法務 | 5,627人 | 698点 |
| 財務 | 2,984人 | 694点 |
| 経営 | 9,715人 | 670点 |
| 企画 | 17,245人 | 669点 |
| 事務 | 31,728人 | 646点 |
| SE | 21,186人 | 636点 |
| 営業 | 45,007人 | 627点 |
| 技術 | 46,755人 | 599点 |
| 製造 | 8,866人 | 561点 |
最高の海外717点と最低の製造561点で、156点の差があります。英語を業務で使う職種ほどスコアが高い、というきわめて素直な並びです。
役職別でも同じ傾向が出ています。一般社員634点、係長633点、課長655点、部長670点、役員679点。役職が上がるほど高くなります。
社会人が英語学習時間を現実的に確保する順番
ここまでの数字から、優先順位が導けます。
- いま何分やっているかを1週間だけ記録する:平均は4〜13分。自分がそれより多いか少ないかを知らずに計画は立てられない
- 浮いた時間に期待しない:通勤63分が消えても学習に回ったのは6分。時間は空けるだけでは学習に流れない
- 削る先を先に決める:テレワーク実施者の増分で最大だったのは睡眠18分と趣味16分。睡眠を削るのは推奨しないので、現実的な原資は趣味・娯楽とテレビの時間になる
- 締切を外から入れる:内定者が最高スコアだった事実は、締切の効果を示している。試験の申込みは、締切を買う行為でもある
- 業務と接続する:職種別で156点の差がついている。英語を使う業務に少しでも寄せられるなら、それが最も強い学習時間の確保策になる
社会人の英語学習時間の平均まとめ
公的統計が示す社会人の学習時間は、平日の有業者で1日4〜10分、全体平均で13分。英語だけならさらに短くなります。テレワークで通勤が1時間3分減っても、学習に回ったのは6分だけでした。
この数字は暗い話ではなく、基準線です。1日30分を確保できれば、それだけで平均の2〜7倍にあたります。平均を知ることの意味は、そこにあります。
生活時間・行動者率は総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」の公表値です。表記が「時間.分」形式のため、本記事では分に直して掲載しています。テレワーク別の数値は平日・有業者の集計で、テレワークの有無以外の条件をそろえた比較ではありません。TOEICのスコアはIIBC「TOEIC Program DATA & ANALYSIS 2026」の公表値で、社歴別・職種別・役職別はIPテスト(企業・団体実施)のデータです。「自作の計算」と書いた欄は編集部が差や倍率を算出したものです。

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