英語の教員免許を取るのに必要な単位数は、法律の別表に数字で書かれています。中学校教諭一種免許状も高等学校教諭一種免許状も、大学で修得する最低単位数は59単位です。学士の学位を持っていることが前提で、この59単位を教職課程のある大学で積み上げる、という形になっています。
この記事は、教育職員免許法(昭和二十四年法律第百四十七号)と教育職員免許法施行規則の条文、および文部科学省が公表している令和5年度教員免許状授与件数等調査と令和5年度英語教育実施状況調査を、そのまま並べ直したものです。条文は2026年9月16日にe-Gov法令検索で取得したXMLを、統計は同日に文部科学省のサイトで公開されているPDFを読んで確認しました。
英語教員免許は中学校も高校も「一種で59単位」が出発点
教育職員免許法の別表第一は、免許状の種類ごとに「基礎資格」と「大学において修得することを必要とする最低単位数」を定めています。英語の免許状は中学校教諭・高等学校教諭の枠に入るので、そこだけを抜き出すと次のようになります。
| 免許状の種類 | 基礎資格 | 教科及び教職に関する科目の最低単位数 |
|---|---|---|
| 中学校教諭 専修免許状 | 修士の学位を有すること | 83単位 |
| 中学校教諭 一種免許状 | 学士の学位を有すること | 59単位 |
| 中学校教諭 二種免許状 | 短期大学士の学位を有すること | 35単位 |
| 高等学校教諭 専修免許状 | 修士の学位を有すること | 83単位 |
| 高等学校教諭 一種免許状 | 学士の学位を有すること | 59単位 |
高等学校教諭には二種免許状という区分そのものがありません。別表第一の高等学校教諭の欄には専修免許状と一種免許状の2行しか置かれていない、というのが条文の形です。中学校だけが三段構えになっています。
単位数を並べると、中学校と高校は一種・専修ともにまったく同じ59単位・83単位です。ここだけ見ると中高で差がないように見えますが、次のH2で見るとおり、59単位の内訳は中高で大きく違います。
英語教員免許の59単位は6つの箱に分かれている
単位の中身を決めているのは、法律ではなく教育職員免許法施行規則のほうです。中学校は第四条、高等学校は第五条の表に、欄ごとの最低単位数が並んでいます。中学校(第四条)の表を数字だけ取り出すと次のとおりです。
| 欄(科目のかたまり) | 中学校 専修 | 中学校 一種 | 中学校 二種 |
|---|---|---|---|
| 教科及び教科の指導法に関する科目 | 28 | 28 | 12 |
| 教育の基礎的理解に関する科目 | 10 | 10 | 6 |
| 道徳、総合的な学習の時間等の指導法及び生徒指導、教育相談等に関する科目 | 10 | 10 | 6 |
| 教育実習 | 5 | 5 | 5 |
| 教職実践演習 | 2 | 2 | 2 |
| 大学が独自に設定する科目 | 28 | 4 | 4 |
| 合計 | 83 | 59 | 35 |
専修免許状と一種免許状の違いは、最後の「大学が独自に設定する科目」が4単位か28単位かだけです。上の5つの箱の数字は専修と一種で1単位も変わりません。別表第一の備考第七号は、専修免許状の単位数から一種免許状の単位数を差し引いた分は大学院の課程または大学の専攻科で修得する、と定めています。つまり専修で増える24単位は大学院側で積む分だ、という構造です。
施行規則の表には「一〇(六)」のように括弧つきの数字が並んでいますが、この括弧は英語には関係しません。第四条の表の備考第九号が、括弧内の数字は音楽及び美術の各教科について、指導法などの単位の半数までを教科の専門科目で置き換える場合の下限だと定めているためです。上の表では、英語に当てはまる括弧の外の数字だけを載せています。
英語教員免許の「教科に関する専門的事項」は4つの区分に決まっている
「教科及び教科の指導法に関する科目」は、さらに教科に関する専門的事項と各教科の指導法の2つに分かれます。英語の専門的事項として何を学ぶかは、施行規則第四条の備考第一号のワ(高校は第五条のラ)に列挙されています。
- 英語学
- 英語文学
- 英語コミュニケーション
- 異文化理解
この4つは「それぞれ一単位以上修得するものとする」と書かれているので、どれかを丸ごと飛ばすことはできません。さらに備考第二号は、これらの専門的事項は「一般的包括的な内容を含むものでなければならない」と定めています。特定の狭い分野だけを深掘りした科目の寄せ集めでは要件を満たさない、という意味の条文です。
なお備考第三号は、英語以外の外国語の免許状を取る場合も「それぞれ英語の場合の例による」と定めています。ドイツ語やフランス語の免許状でも、区分の立て方は英語と同じ4本立てになります。
英語教員免許は中学校と高校で指導法の単位数が違う
中高で同じ59単位でも、箱の割り振りは違います。高等学校(施行規則第五条)の表と並べると差がはっきりします。
| 欄(科目のかたまり) | 中学校 一種 | 高等学校 一種 | 差 |
|---|---|---|---|
| 教科及び教科の指導法に関する科目 | 28 | 24 | 高校が4少ない |
| 教育の基礎的理解に関する科目 | 10 | 10 | 同じ |
| 道徳、総合的な学習の時間等の指導法及び生徒指導、教育相談等に関する科目 | 10 | 8 | 高校が2少ない |
| 教育実習 | 5 | 3 | 高校が2少ない |
| 教職実践演習 | 2 | 2 | 同じ |
| 大学が独自に設定する科目 | 4 | 12 | 高校が8多い |
| 合計 | 59 | 59 | 同じ |
教育実習は中学校5単位に対して高等学校3単位で、2単位ぶん中学校のほうが重くなっています。そのぶん高校は「大学が独自に設定する科目」が12単位と広く、内訳を大学側の裁量で決められる幅が大きい設計です。
各教科の指導法についても下限が別に定められています。施行規則第四条の備考第六号は、専修免許状または一種免許状なら8単位以上、二種免許状なら2単位以上と定め、続けて高等学校(第五条)の場合はこれを「四単位以上」と読み替えると書いています。整理すると次のとおりです。
| 免許状 | 各教科の指導法の下限 | 教科及び教科の指導法の合計 | 専門的事項に回せる上限 |
|---|---|---|---|
| 中学校 一種・専修 | 8単位以上 | 28単位 | 20単位 |
| 中学校 二種 | 2単位以上 | 12単位 | 10単位 |
| 高等学校 一種・専修 | 4単位以上 | 24単位 | 20単位 |
英語学・英語文学・英語コミュニケーション・異文化理解に充てられる上限は、中高の一種でどちらも20単位です。差が出ているのは指導法の側で、中学校は高校の倍の8単位以上が求められています。
英語教員免許にはどの課程でも共通で要る4科目がある
別表第一の備考第四号は「特に必要なものとして文部科学省令で定める科目の単位」を別途求めています。その中身を書いているのが施行規則第六十六条の六です。条文はこう書かれています。
| 科目 | 単位数 |
|---|---|
| 日本国憲法 | 2単位 |
| 体育 | 2単位 |
| 外国語コミュニケーション | 2単位 |
| 数理、データ活用及び人工知能に関する科目 または 情報機器の操作 | 2単位 |
合計8単位で、これは59単位とは別枠です。4つ目の欄は「数理、データ活用及び人工知能に関する科目二単位又は情報機器の操作二単位」と書かれており、どちらか一方で満たせる形になっています。英語教員免許を目指す場合でも、日本国憲法と体育は全員に共通で必要です。
英語教員免許の取得にはどんな順番で進むのか
条文から読み取れる手順を並べると次のようになります。順番そのものは法律に書かれていませんが、別表第一が「基礎資格」と「単位」の2つを授与の条件にしていることから、必要な要素は確定します。
- 教職課程の認定を受けている大学(別表第一備考第五号イの「認定課程」)に在学する
- 学士の学位を取る(一種免許状の基礎資格)
- 英語の教科及び教科の指導法に関する科目を28単位(高校は24単位)修得する
- 教育の基礎的理解、生徒指導・教育相談等の科目を修得する
- 教育実習を中学校5単位・高校3単位、最後に教職実践演習2単位を修得する
- 第六十六条の六の8単位(日本国憲法・体育・外国語コミュニケーション・情報系)を修得する
- 都道府県の教育委員会に申請して免許状の授与を受ける
別表第一備考第五号は、単位が「認定課程において修得したもの」であることを求めています。教職課程の認定を受けていない学部で英語の科目をいくら積んでも、そのままでは別表第一の単位にはなりません。同号のロには、認定課程以外で修得した単位を、在学する認定課程を持つ大学が適当と認めた場合に算入できる仕組みも書かれていますが、判断するのは大学側です。
英語教員免許の取得と、教員として採用されることは別の手続きです。免許状を出すのは教育委員会ですが、採用選考はまた別に行われます。免許状は「教壇に立つための資格」であって、職そのものではありません。
英語教員免許は年間どのくらい授与されているのか
文部科学省の令和5年度教員免許状授与件数等調査に、教科別の授与件数が載っています。英語の免許状は「外国語」の欄に集計されています。中学校の普通免許状の教科別内訳のうち、上位の教科を抜き出すと次のとおりです。
| 教科 | 中学校 普通免許状の授与件数(令和5年度) |
|---|---|
| 保健体育 | 9,125件 |
| 社会 | 7,535件 |
| 外国語 | 6,810件 |
| 国語 | 5,710件 |
| 数学 | 4,448件 |
| 理科 | 4,358件 |
| 中学校の全教科 合計 | 44,949件 |
中学校の外国語は6,810件で、全44,949件のうち約15%を占めています。内訳は一種免許状5,792件、二種免許状606件、専修免許状412件です。高等学校のほうは外国語が6,217件(大学等における直接養成分)で、全体の内訳は一種5,927件、専修436件となっています。
授与件数は「取得した人の数」ではなく「免許状の件数」です。1人が中学校と高校の両方を取れば2件に数えられます。中高の教職課程は重なる部分が多いため、この数字をそのまま人数として読むことはできません。
英語教員免許を後から足す2つの別表がある
すでに別の免許状を持っている現職の教員が、あとから英語を足す道も法律に用意されています。使う条文は2つです。
| 条文 | 何ができるか | 必要な単位数 |
|---|---|---|
| 別表第四 | 同じ学校種で、別の教科の免許状を足す | 中学校一種28単位/中学校二種13単位/高等学校一種24単位 |
| 別表第八 | 隣接する学校種の免許状を足す(3年の勤務が前提) | 中学校二種を小学校免許から14単位/高等学校一種を中学校免許から12単位 |
令和5年度に別表第四で他教科の免許状を取った件数のうち、中学校一種で最も多かった教科は外国語の97件でした。2位の国語40件、3位の社会31件を大きく引き離しています。中学校二種でも外国語26件が最多です。一方、高等学校一種では情報484件が突出して多く、公民163件、地理歴史138件と続きます。
別表第八のほうも同じ傾向です。令和5年度に隣接校種で中学校二種免許状を取った357件のうち、外国語が208件と過半を占めています。小学校の免許状を持つ教員が中学校の外国語を足す、という動きが数字に出ています。
英語教員免許がないまま英語を教えている枠も統計にある
普通免許状のほかに、臨時免許状と特別免許状という区分があります。どちらも件数が公表されています。
| 区分 | 令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 |
|---|---|---|---|
| 中学校 外国語の臨時免許状 | 308件 | 292件 | 266件 |
| 高等学校 外国語の臨時免許状 | 349件 | 392件 | 345件 |
| 特別免許状(全学校種・全教科の合計) | 334件 | 500件 | 611件 |
中学校の外国語の臨時免許状は3年連続で減り、308件から266件になっています。一方で特別免許状は全体で334件から611件へと3年でおよそ1.8倍に増えました。臨時免許状は中学校では技術322件、家庭270件、外国語266件の順で多く、高校では情報271件、家庭234件、外国語345件と、外国語が最多です。
英語教員免許を持たない人が教壇に立つ枠としては、このほかに免許外教科担任の許可と特別非常勤講師の届出があり、どちらも件数が同じ調査で公表されています。いずれも普通免許状とは別の制度で、期限や条件が異なります。
英語教員免許は2022年7月から更新が要らなくなった
かつては10年ごとに更新講習を受ける必要がありましたが、この仕組みは令和4年の改正教育職員免許法によってなくなりました。文部科学省はこの改正を「教員免許更新制の発展的解消」と呼び、免許更新制に関する規定の廃止として案内しています。
- 改正法の施行日は令和4年(2022年)7月1日
- 同日時点で失われていない教員免許状は、以後は期限のない免許状になる
- 7月1日以降に期限を迎える人も、講習の受講や更新の手続きは不要
2022年7月1日より前に期限切れとなっていた免許状は、この改正では自動的には戻りません。過去に期限が切れたまま放置した免許状の扱いは、授与を受けた都道府県の教育委員会の判断になります。英語教員免許を昔取ったまま使っていない人は、まずどの都道府県から授与されたかを確認する必要があります。
英語教員免許を持つ教員の英語力も公表されている
文部科学省の令和5年度英語教育実施状況調査は、外国語(英語)の免許状を持ち英語の授業を担当している教師について、外部試験のスコアを集計しています。ここでいう「英語担当教師」は、臨時的任用の者と非常勤講師を除いた人数です。
| 区分 | 中学校 | 高等学校 |
|---|---|---|
| 英語担当教師数 | 29,183人 | 20,380人 |
| CEFR B2レベル相当以上を取得している教師数 | 13,081人 | 16,456人 |
| うちCEFR C1レベル相当以上 | 調査項目なし | 4,452人 |
中学校は29,183人中13,081人で約44.8%、高等学校は20,380人中16,456人で約80.7%です。この割合は編集部が公表値から計算したものです。調査票にはCEFR B2レベル相当が「英検準1級など」、C1レベル相当が「英検1級など」と例示されています。
英語教員免許の取得要件そのものに、英検やTOEICのスコアは一切書かれていません。施行規則が求めているのは英語学・英語文学・英語コミュニケーション・異文化理解の単位であって、外部試験の級ではありません。上の数字は、免許の要件ではなく実際に取得している人の状況を示したものです。
英語教員免許で最後に確認しておくこと
ここまでに条文と統計から確認できた数字を、1つの表にまとめます。
| 確認したいこと | 数字 | 根拠 |
|---|---|---|
| 中学校・高校の一種免許状の最低単位数 | どちらも59単位 | 教育職員免許法 別表第一 |
| 英語の専門的事項の区分 | 4区分・各1単位以上 | 施行規則 第四条備考第一号ワ |
| 各教科の指導法の下限 | 中学一種8単位以上/高校一種4単位以上 | 施行規則 第四条備考第六号 |
| 教育実習 | 中学校5単位/高等学校3単位 | 施行規則 第四条・第五条 |
| 全課程共通の追加科目 | 8単位(憲法・体育・外国語コミュニケーション・情報系) | 施行規則 第六十六条の六 |
| 令和5年度の中学校外国語の授与件数 | 6,810件 | 教員免許状授与件数等調査 |
| 更新講習 | 2022年7月1日以降は不要 | 令和4年改正 教育職員免許法 |
英語教員免許でいちばん動かせないのは、教科の専門的事項が4区分に固定されていることと、教職課程の認定を受けた大学で単位を積む必要があることの2点です。単位数だけを見て中高で同じと判断すると、教育実習と指導法の差を見落とします。
①各大学の教職課程で実際に開講されている科目名と単位の割り振り(大学ごとに異なり、一次ソースが個別の大学のシラバスになるため)②都道府県ごとの免許状申請の手数料と必要書類(教育委員会ごとに様式が違うため)③教員採用選考の倍率と英語の受験者数(免許状授与件数等調査とは別の調査になるため)④2022年7月1日より前に期限切れとなった免許状の個別の取り扱い。いずれも各都道府県の教育委員会または大学の案内で確認してください。
条文の単位数は改正で動きます。この記事の数字は2026年9月16日時点でe-Gov法令検索に掲載されている教育職員免許法および同施行規則の本文に基づいています。統計は令和5年度分が最新の公表値です。

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