日本の公的統計に「海外赴任者は何人」という項目はありません。いちばん近いのは外務省の海外在留邦人数調査統計にある「長期滞在者」で、2025年10月1日現在で70万9684人。海外に住む日本人129万8170人のうち54.7%がこの区分に入ります。赴任者だけを切り出した数字は、2018年の刊行分を最後に公表が止まっています。
この記事は、外務省領事局政策課が公表している「海外在留邦人数調査統計」(令和7年=2025年10月1日現在、2026年2月20日公表)と「海外進出日系企業拠点数調査」(2025年10月1日現在)を並べ直したものです。数字は2026年9月16日に外務省のページから統計表そのものを取得して確認しました。推測で埋めた数字は1つもありません。
海外赴任を含む「長期滞在者」は70万9684人と公表されている
外務省の統計は、海外に住む日本人を「長期滞在者」と「永住者」の2つに分けています。最新版の数字です。
| 区分 | 2025年10月1日現在 | 前年からの増減 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 海外在留邦人の総数 | 1,298,170人 | +5,073人 | 100% |
| 長期滞在者 | 709,684人 | -3,029人(-0.4%) | 54.7% |
| 永住者 | 588,486人 | +8,102人(+1.4%) | 45.3% |
| うち成人数 | 1,052,403人 | ― | 81.1% |
総数はほぼ横ばいですが、中身は長期滞在者が減り永住者が増えるという逆方向の動きになっています。外務省は、ウクライナ、アフガニスタン、シリアについては在留邦人の安全上の理由から人数の公表を控えており、この統計には含まれていないと明記しています。
海外赴任の母数にあたる長期滞在者は2019年をピークに減り続けている
長期滞在者と永住者の推移は、同じ統計に1991年から掲載されています。直近の推移を抜き出します。
| 年(各年10月1日現在) | 長期滞在者 | 永住者 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 2015年 | 859,994人 | 457,084人 | 1,317,078人 |
| 2018年 | 876,620人 | 513,750人 | 1,390,370人 |
| 2019年 | 891,473人 | 518,883人 | 1,410,356人 |
| 2020年 | 827,916人 | 529,808人 | 1,357,724人 |
| 2021年 | 807,238人 | 537,662人 | 1,344,900人 |
| 2022年 | 751,481人 | 557,034人 | 1,308,515人 |
| 2023年 | 718,838人 | 574,727人 | 1,293,565人 |
| 2024年 | 712,713人 | 580,384人 | 1,293,097人 |
| 2025年 | 709,684人 | 588,486人 | 1,298,170人 |
長期滞在者は2019年の89万1473人がピークで、2025年までに18万1789人減りました。減少率にすると20.4%です。同じ期間に永住者は51万8883人から58万8486人へ6万9603人増えています。2つの線が交差しているわけではありませんが、差は縮まり続けています。
この引き算は公表された2つの数字を編集部が並べたもので、外務省が減少幅として発表している値ではありません。統計そのものに書かれているのは各年の実数と前年比です。
海外赴任の行き先を国別に見ると米国が全体の32.1%を占める
国(地域)別の在留邦人数は、上位50位まで公表されています。上位10か国です。
| 順位 | 国(地域) | 在留邦人数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 米国 | 416,380人 | 32.1% |
| 2 | オーストラリア | 105,566人 | 8.1% |
| 3 | 中国 | 92,928人 | 7.2% |
| 4 | カナダ | 75,316人 | 5.8% |
| 5 | タイ | 72,113人 | 5.6% |
| 6 | 英国 | 62,270人 | 4.8% |
| 7 | ブラジル | 49,037人 | 3.8% |
| 8 | ドイツ | 44,648人 | 3.4% |
| 9 | 韓国 | 44,471人 | 3.4% |
| 10 | フランス | 36,023人 | 2.8% |
上位3か国で全体の約47%、上位10か国で約77%を占めます。地域別では北米が37.9%(49万1701人)で、1985年以降一貫して首位です。次いでアジアが26.8%(34万7333人)、西欧が16.6%(21万5695人)で、この3地域だけで約81%になります。
海外赴任の比率は国によって10分の1から10倍近くまで開く
同じ「在留邦人が多い国」でも、長期滞在者の割合はまったく違います。ここが赴任の話をするうえで最も重要な数字です。
| 国(地域) | 在留邦人総数 | 長期滞在者 | 長期滞在者の割合 |
|---|---|---|---|
| タイ | 72,113人 | 69,380人 | 96.2% |
| 中国 | 92,928人 | 86,351人 | 92.9% |
| シンガポール | 33,397人 | 28,549人 | 85.5% |
| ドイツ | 44,648人 | 25,622人 | 57.4% |
| 英国 | 62,270人 | 32,315人 | 51.9% |
| 米国 | 416,380人 | 182,905人 | 43.9% |
| オーストラリア | 105,566人 | 40,481人 | 38.3% |
| カナダ | 75,316人 | 23,747人 | 31.5% |
| ブラジル | 49,037人 | 4,576人 | 9.3% |
タイの96.2%とブラジルの9.3%では、同じ在留邦人でも中身がほぼ入れ替わっています。ブラジルの在留邦人4万9037人のうち4万4461人は永住者です。米国は在留邦人数では1位ですが、長期滞在者は18万2905人で全体の43.9%にとどまり、23万3475人は永住者です。国別ランキングの順位だけを見て赴任先の多さを語ると、この違いが消えます。
海外赴任者が集まる都市はロサンゼルス・バンコク・ニューヨークの順
都市(圏)別の集計も上位50位まで公表されています。上位10都市です。
| 順位 | 都市(圏) | 在留邦人数 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 1 | ロサンゼルス都市圏 | 63,972人 | +0.7% |
| 2 | バンコク | 51,297人 | +2.3% |
| 3 | ニューヨーク都市圏 | 38,251人 | +2.4% |
| 4 | シンガポール | 33,397人 | +2.6% |
| 5 | 上海 | 31,733人 | -8.5% |
| 6 | シドニー都市圏 | 31,673人 | +1.5% |
| 7 | 大ロンドン市 | 30,515人 | -3.5% |
| 8 | バンクーバー都市圏 | 28,090人 | -2.7% |
| 9 | ホノルル | 23,254人 | +0.2% |
| 10 | 香港 | 23,228人 | +1.5% |
上位5都市(圏)で全体の約17%、上位10都市(圏)で約27%を占めます。前年から2桁近く減っているのは上海の-8.5%で、上位10都市の中では最大の減少幅です。前年は4位だった上海と5位だったシンガポールが、この1年で入れ替わっています。
海外赴任の内訳「民間企業関係者」は2017年の集計が最後の公表値
かつてこの統計には、長期滞在者を職業で分けた表が載っていました。実測すると、平成30年(2018年)刊行の詳細版(平成29年=2017年10月1日現在)が最後で、翌年の版からこの表は消えています。最後に公表された数字をそのまま写します。
| 職業区分 | 2017年10月1日現在の人数 | 長期滞在者に占める割合 |
|---|---|---|
| 民間企業関係者 | 463,700人 | 53.43% |
| 留学生・研究者・教師 | 180,406人 | 20.79% |
| 自由業関係者 | 48,785人 | 5.62% |
| 政府関係者 | 22,659人 | 2.61% |
| 報道関係者 | 3,619人 | 0.42% |
| その他 | 148,651人 | 17.13% |
| 長期滞在者の合計 | 867,820人 | 100% |
「海外赴任している日本人は何人か」という問いに最も近いのは、この民間企業関係者46万3700人という数字です。ただし2017年の値であり、その後は公表されていません。地域別の内訳も同じ表に載っており、アジアが25万7259人、北米が11万8096人、西欧が5万6224人でした。アジアに民間企業関係者の半分以上が集中していたことになります。
この職業構成の表は2017年10月1日現在のもので、同じ年の長期滞在者は86万7820人でした。2025年の長期滞在者は70万9684人まで減っています。2017年の割合をそのまま2025年の人数に掛けて「いまの赴任者数」を出すことはできません。職業ごとに増減の方向が違う可能性があり、外務省はその検証ができる数字を公表していないためです。
海外赴任の受け皿になる日系企業の拠点数は中国が最も多い
赴任先の器のほうも、外務省が別の調査で数えています。「海外進出日系企業拠点数調査」で、2025年10月1日現在の数字です。上位の国を並べます。
| 国(地域) | 日系企業の拠点数 |
|---|---|
| 中国 | 26,273 |
| 米国 | 9,584 |
| インド | 6,485 |
| タイ | 6,083 |
| シンガポール | 4,558 |
| インドネシア | 3,643 |
| 韓国 | 3,005 |
| ベトナム | 2,990 |
| マレーシア | 1,934 |
| ドイツ | 1,916 |
| フィリピン | 1,888 |
| メキシコ | 1,626 |
| 台湾 | 1,582 |
中国の2万6273拠点は2位の米国9584拠点の2.7倍で、突出しています。一方で在留邦人数は米国41万6380人に対し中国9万2928人と逆転しており、拠点数と人数は比例していません。外務省は注記で、タイの数値はジェトロ・バンコク事務所の調査によるもの、一部の国は拠点数ではなく法人数で計上していること、一部は前回と異なる手法で調査したことを明記しています。
この調査が対象にしているのは、本邦企業の海外支店等、本邦企業が100%出資した現地法人とその支店等、出資比率10%以上の合弁企業とその支店等、日本人が海外で興した企業(出資比率10%以上)の4つです。
海外赴任と永住の線引きは、在留届の定義で決まっている
2つの区分の定義は、統計そのものに書かれています。人数を読む前に押さえておく部分です。
| 用語 | 統計に書かれている定義 |
|---|---|
| 長期滞在者 | 現に在留する国(地域)に期限を定めて居住している邦人 |
| 永住者 | 現に在留する国(地域)に期限を定めずに居住している邦人 |
| 対象から外れる人 | 在留期間が3か月に満たない短期滞在者 |
| 基礎資料 | 旅券法第16条の規定により在外公館に提出されている在留届 |
| 対象 | 海外に在留している日本国民(重国籍者を含む) |
「期限を定めているかどうか」が唯一の分かれ目で、勤務先が日本企業かどうか、赴任か現地採用かは定義に入っていません。そのため長期滞在者には、企業からの赴任者だけでなく、留学生、研究者、駐在員の帯同家族、現地採用で働く人、任期付きの公務員などがすべて含まれます。
海外赴任している人数をこの統計で数えるときの限界
統計自体が、数え方の限界を明記しています。
- 在留届を提出・更新していない邦人が存在することが想定されると、外務省が本文に書いている
- 数字は在留届を基礎資料にした「推計」であって、全数の確定値ではない
- 3か月未満の滞在は対象外なので、短期出張はこの数字に入らない
- 安全上の理由で3か国(ウクライナ、アフガニスタン、シリア)が統計から除かれている
- 台湾は日本台湾交流協会、南極は文部科学省に調査を委嘱している
外務省は在外公館、日系企業、日本人会を通じて在留届の提出・更新を勧奨していると書いており、届出の精度そのものを改善の対象にしていることを認めています。したがって、年ごとの増減には実際の移動だけでなく届出の更新状況も混ざります。
海外赴任の数字で、公表されていないもの
よく探されるのに、公式に数字が出ていないものを、公表されている範囲と合わせて並べます。
| 数字 | 公表の状況 |
|---|---|
| 2025年時点の「民間企業関係者」の人数 | 職業別の内訳は、2018年刊行の詳細版(2017年10月1日現在)を最後に公表が止まっている。実際に2018年10月1日現在の版のファイルを開いて、該当シートが無いことを確認した |
| 日系企業拠点数の全世界合計 | 公表されている集計表に合計行が無い。国ごとの数字と在外公館ごとの数字が同じ表に混在しており、単純に足すと二重計上になる |
| 赴任者の年齢・性別・業種別の内訳 | 公表されている集計は国・地域・都市の単位までで、赴任者を切り出した属性別の表が無い |
| 赴任期間の平均年数 | 在留届に基づく統計で、滞在予定期間を集計した表が公表されていない |
| 帯同している家族の人数 | 就学年齢の子女数は過去の版に掲載があったが、最新版の統計表には含まれていない |
| 赴任先での給与・手当の水準 | この統計の対象外。外務省は人数だけを公表している |
| 現地採用と赴任の区別 | 長期滞在者の定義に雇用形態が入っていないため、統計上区別できない |
「海外赴任者は約◯万人」と1つの数字で書いている記事は、2017年の内訳を最新の総数に当てはめているか、別の推計を使っている可能性があります。公表されているのは、2025年の長期滞在者70万9684人と、2017年の民間企業関係者46万3700人という、年の違う2つの数字までです。
海外赴任の数字で最後に確認しておくこと
この統計を自分で引くときに、取り違えやすい点を並べます。
- 基準日は各年10月1日で、公表は翌年の初め(2025年分は2026年2月20日公表)
- 「在留邦人数」は長期滞在者と永住者の合計で、赴任者の数ではない
- 国別ランキングの順位と、長期滞在者の割合は別物(米国は1位だが長期滞在者は43.9%)
- 職業別の内訳を使うなら、2017年10月1日現在という年を必ず添える
- 日系企業拠点数の調査は在留邦人数の調査とは別の調査で、基準日は同じ10月1日
- 拠点数には法人数で計上している国が混ざっている(統計に注記あり)
- ウクライナ、アフガニスタン、シリアは総数に含まれていない
- 数字は在留届に基づく推計であり、全数調査の確定値ではない
2019年の89万1473人と2025年の70万9684人を並べれば、長期滞在者の減少は数字として確認できます。ただしその減少が赴任の減少なのか、留学の減少なのか、届出更新の変化なのかは、いまの公表内容では切り分けられません。
総数・長期滞在者・永住者・地域別・国別・都市別・長期滞在者の割合・推移は、外務省領事局政策課「海外在留邦人数調査統計」(令和7年=2025年10月1日現在、2026年2月20日公表)の統計表から取りました。職業構成は同統計の平成30年(2018年)詳細版(平成29年=2017年10月1日現在)の「長期滞在者の地域別職業構成」です。日系企業の拠点数は外務省「海外進出日系企業拠点数調査」2025年調査結果(2025年10月1日現在)です。いずれも2026年9月16日に外務省のページから統計表ファイルそのものを取得して確認しました。2019年と2025年の差、減少率20.4%は、公表された2つの実数から編集部が引き算・割り算した値です。
この記事で使った海外赴任に関する一次ソース
すべて2026年9月16日に開いて確認しました。リンクは張らず、URLをそのまま記載します。
外務省|海外在留邦人数調査統計(統計の目的・調査の方法・統計表一覧)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/tokei/hojin/index.html
外務省|海外在留邦人数調査統計 令和7年(2025年)10月1日現在(統計表Excel)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100957046.xlsx
外務省|海外在留邦人数調査統計 令和7年(2025年)10月1日現在(PDF)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100957047.pdf
外務省|海外在留邦人数調査統計 平成30年(2018年)詳細版(平成29年10月1日現在。長期滞在者の地域別職業構成を含む最後の版)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000394747.xlsx
外務省|海外進出日系企業拠点数調査(調査の目的・対象・年次一覧)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page22_003410.html
外務省|海外進出日系企業拠点数調査 2025年調査結果(令和7年10月1日現在、集計表Excel)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/101057652.xlsx

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