日本の語学ビジネスの市場規模は、2024年度が7,906億円(主要13分野合計・事業者売上高ベース)です。矢野経済研究所が2025年9月30日に公表した「語学ビジネス市場に関する調査(2025年)」の推計値で、前年度比は0.2%増。同じ調査で2025年度は7,901億円(前年度比99.9%)と予測されています。
この記事は、矢野経済研究所の公表プレスリリースと、各試験団体・業界団体が出している公式統計だけを並べ直したものです。数字は2026年9月16日に、矢野経済研究所のニュースリリースページ、日本英語検定協会、国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)、海外留学協議会(JAOS)の各公式サイトで確認しました。有料レポートの中身は参照していません。
語学ビジネスの市場規模はいくら?2024年度は7,906億円
最初に、公表されている数字をそのまま置きます。矢野経済研究所の調査は「事業者売上高ベース」で積み上げたもので、受講者が払った総額ではなく、事業を営む会社側の売上の合計です。調査期間は2025年4月〜7月と明記されています。
| 年度 | 市場規模(主要13分野合計) | 前年度比 | 公表日 |
|---|---|---|---|
| 2023年度 | 7,841億円 | 0.2%増 | 2024年9月4日 |
| 2024年度 | 7,906億円 | 0.2%増 | 2025年9月30日 |
| 2025年度(予測) | 7,901億円 | 99.9%(横ばい) | 2025年9月30日 |
3年ぶんを並べると、この市場は年0.2%前後の動きしかしていないことが分かります。2年連続で0.2%増、翌年度の予測は0.1%減。振れ幅が1%未満なので、成長市場とも縮小市場とも言いにくい形です。矢野経済研究所は2025年のリリースで「生成AIなどテクノロジーの進化が目覚ましく、市場間で顧客獲得競争が激化している」と書いています。
語学ビジネスの市場規模を構成する13分野の内訳
「主要13分野」の中身は、プレスリリースに分野名として公表されています。3つのグループに分かれます。
| グループ | 分野数 | 分野名 |
|---|---|---|
| 語学スクール/オンラインサービス | 4分野 | 成人向け外国語教室、幼児・子供英会話教室、プリスクール、オンライン語学学習 |
| 学習教材 | 5分野 | 書籍教材、語学独習用教材(ハードウェア&ソフトウェア)、電子辞書、幼児向け英会話教材、通信教育 |
| 関連ビジネス | 4分野 | 語学試験、留学斡旋、幼稚園・保育園向け英語講師派遣、通訳・翻訳ビジネス |
この13分野という切り方を見ると、「語学ビジネス」は英会話教室だけを指す言葉ではないことが分かります。電子辞書のメーカーも、通訳・翻訳の会社も、留学斡旋の会社も、この7,906億円の中に入っています。市場規模の数字を引用するときは、この範囲の広さごと引用することになります。
分野名は「成人向け外国語教室」「オンライン語学学習」で、英語限定ではありません。中国語・韓国語・フランス語などの教室や教材も含まれた合計値です。英語だけの内訳は、このプレスリリースには金額として出ていません。
語学ビジネスの分野別の金額が公表されていない理由と、その埋め方
分野の名前は13個とも公表されていますが、分野ごとの金額はプレスリリースには載っていません。金額の内訳は、同社が販売する調査資料「2025 語学ビジネスの実態と展望」(2025年7月29日発刊、A4判514ページ、税込198,000円)の中に収録されている形です。
プレスリリースで分野別に語られているのは、金額ではなく方向だけです。外国語教室市場(成人向け外国語教室市場、幼児・子供英会話教室市場、プリスクール市場の3分野)については、幼児・子供英会話教室市場がマイナス、成人向け外国語教室市場とプリスクール市場がプラスで、3分野合計では前年度を上回ったと記載されています。
そこでこの記事では、金額が非公表の分野について、別の一次ソースが出している「人数」の数字を当てて規模感を見ます。以下の3つの見出しがそれです。金額と人数は単位が違うので足し算はできませんが、分野の動きの向きは読めます。
語学ビジネスの「語学試験」分野を受験者数で見る
13分野のうち「語学試験」は、試験団体が志願者数・受験者数を毎年公表しているため、外から追える数少ない分野です。まず英検(実用英語技能検定・英検IBA・英検Jr.の志願者数合算)を、公益財団法人日本英語検定協会の公表値で並べます。
| 年度 | 志願者数(3試験の合算) | 前年度からの差 |
|---|---|---|
| 2021年度 | 4,102,668人 | — |
| 2022年度 | 4,205,920人 | 103,252人増 |
| 2023年度 | 4,503,698人 | 297,778人増 |
| 2024年度 | 4,489,999人 | 13,699人減 |
| 2025年度 | 4,543,122人 | 53,123人増 |
5年で410万人台から454万人台へ、約44万人増えています。ただし一本調子ではなく、2024年度は前年度から1万3,699人減っています。増減の差は、この表では編集部が公表値どうしを引き算したものです。
TOEICについては、IIBCが2025年11月7日に「TOEIC Program DATA & ANALYSIS 2025」を発表しています。同資料は2024年度(2024年4月〜2025年3月)を対象としており、日本国内のTOEIC Program全体の受験者数は約193万5千人と公表されています。平均スコアは次のとおりです。
| テスト | 受験制度 | 2024年度の平均スコア |
|---|---|---|
| TOEIC L&R | 公開テスト | 615点 |
| TOEIC L&R | 団体特別受験制度(IPテスト) | 495点 |
| TOEIC S&W | 公開テスト | Speaking 131.0点/Writing 142.6点 |
| TOEIC S&W | 団体特別受験制度(IPテスト) | Speaking 109.8点/Writing 121.5点 |
英検の志願者数454万人とTOEICの受験者数193万5千人を単純に足すことはできません。英検は1人が年に複数回申し込むと複数で数えられ、TOEICも同じ人が公開テストとIPテストの両方を受けることがあるためです。どちらも「延べ」の数字として読むのが正確です。
語学ビジネスの「留学斡旋」分野を留学生数で見る
「留学斡旋」も、業界団体が人数を出している分野です。一般社団法人海外留学協議会(JAOS)は、2025年4月にJAOS会員の留学事業者39社を対象に調査を行い、その結果を公表しています。
| 項目 | 2024年の数字 | 補足 |
|---|---|---|
| 日本人留学生数(39社合計) | 70,253人 | 前年から4,246人増(前年比106%) |
| 2019年比 | 90% | コロナ前の水準まで戻り切っていない |
| 海外教育旅行の参加者 | 15,345人 | 全体の21.8%。今回が初めての調査項目 |
| 留学先1位 | オーストラリア | 前年から約4,300人増で、アメリカを抜いて1位 |
| 留学先2位 | アメリカ | 前年から約2,000人減 |
JAOSはリリースの中で、この調査はJAOS加盟の留学事業者39社の数字であり、非加盟の事業者は含まれないと明記しています。つまり日本人留学生の全数ではありません。JAOS正会員である留学事業者は39団体、JAOS全体は留学事業者や海外政府機関等の63団体で構成されると記載されています。
矢野経済研究所の2024年のリリースでは、留学斡旋市場が「大きく回復」し、翻訳・通訳市場も「回復傾向」にあると述べられていました。JAOSの人数データが示す「2019年比90%」という水準は、この回復基調と向きが揃っています。
語学ビジネスの「オンライン語学学習」分野で公表されている数字
13分野のうち「オンライン語学学習」は、金額も、分野全体の利用者数も公表されていません。各社が節目に出すプレスリリースを拾うしかない分野です。以下は分野の規模ではなく、個別の会社が自分で出した数字です。
| サービス | 公表値 | 単位 | 公表日 |
|---|---|---|---|
| ネイティブキャンプ | 320万人 | 累計ユーザー | 2025年4月27日 |
| Santaアルク | 1,000万人 | 累計ユーザー | 2025年10月20日 |
| スピークバディ | 500万 | 日本国内の累計ダウンロード | 2025年8月5日 |
| abceed | 500万人 | 累計ユーザー(2024年11月末時点) | 2024年12月26日 |
単位がそろっていないので、この表を合計しても分野の利用者数にはなりません。同じ人が3つのアプリを入れていれば3回数えられます。矢野経済研究所が2025年のリリースで挙げた「英語コーチングサービス、AI英会話アプリが台頭」という記述と、これらの節目リリースの並びは時期が重なっています。
語学ビジネスの市場規模は教育産業全体の何割か
矢野経済研究所は、語学ビジネスとは別に「教育産業市場に関する調査」も毎年公表しています。こちらは主要15分野の合計で、範囲は学習塾・予備校から企業研修まで広がります。同じ調査機関が同じ年度について出している数字なので、比率を取る意味があります。
| 年度 | 教育産業市場(主要15分野計) | 前年度比 | 語学ビジネス市場 | 教育産業に占める割合(編集部の概算) |
|---|---|---|---|---|
| 2023年度 | 2兆8,331億7,000万円 | 0.7%減 | 7,841億円 | 約27.7% |
| 2024年度 | 2兆8,555億7,000万円 | 0.7%増 | 7,906億円 | 約27.7% |
| 2025年度(予測) | 2兆8,720億6,000万円 | 0.6%増 | 7,901億円(予測) | 約27.5% |
教育産業全体のうち、語学ビジネスは4分の1強を占めています。この割合は3年でほとんど動いていません。なお最右列は公表値どうしを編集部が割り算した概算で、矢野経済研究所が発表している比率ではありません。2つの調査は分野の定義が完全に排他というわけではないため、厳密な構成比としては扱わないでください。
教育産業市場の2024年度は15分野のうち7分野がプラス成長で、そのなかに「幼児向け英会話教材市場」「資格・検定試験市場」「語学スクール・教室市場」が入っていると公表されています。語学に関わる分野が、教育産業のプラス側に並んでいる形です。
語学ビジネスの市場規模を海外企業の売上と並べてみる
7,906億円という金額の感覚をつかむために、海外の上場企業の売上と並べます。Duolingoは2026年4〜6月期(3か月)の売上高を2億9,850万ドルと開示しています。これは同社1社の四半期の売上で、日本の語学ビジネス市場は年間の全事業者の合計なので、そもそも比べる単位が違います。
| 数字 | 金額 | 期間 | 範囲 |
|---|---|---|---|
| 日本の語学ビジネス市場(矢野経済研究所) | 7,906億円 | 2024年度(1年) | 日本国内・13分野・全事業者 |
| Duolingo 売上高 | 2億9,850万ドル | 2026年4〜6月期(3か月) | 1社・全世界・全言語 |
| Duolingo 予約高(Bookings) | 2億8,910万ドル | 2026年4〜6月期(3か月) | 1社・全世界・全言語 |
円換算はレートの取り方で数字が動くため、この記事では行っていません。通貨が違う数字を無理に一本の棒グラフに並べると、換算日の違いだけで結論が変わります。並べるなら、金額ではなく「1年か四半期か」「1社か市場全体か」を先にそろえるほうが読みやすくなります。
語学ビジネスの市場規模を引用するときの注意点
ここまでの内容を、実際に数字を使うときのチェック項目としてまとめます。
- 「事業者売上高ベース」を落とさない。受講者が払った総額ではなく、事業者側の売上の合計です。
- 「主要13分野合計」を落とさない。電子辞書・通訳翻訳・留学斡旋まで含んだ広い範囲の合計です。
- 「英語」ではなく「語学」。中国語・韓国語などの教室や教材も入っています。
- 年度と公表日を必ず添える。2024年度の数字は2025年9月30日の公表です。
- 予測値と実績値を混ぜない。7,901億円は2025年度の予測であって、確定した実績ではありません。
この5つを外すと、同じ7,906億円という数字がまったく違うものとして伝わります。とくに「英語市場は約8,000億円」という言い換えは、語学全体を英語に読み替えていて、公表内容とずれます。
語学ビジネスの市場規模で最後に確認しておくこと
この記事で並べた数字を、出どころごとにもう一度まとめます。金額は矢野経済研究所の推計、人数は各団体の公式統計です。両者は取り方が違うので、同じ表の同じ列には置けません。
| 知りたいこと | 見る数字 | 出どころ | 更新のペース |
|---|---|---|---|
| 市場全体の金額 | 7,906億円(2024年度) | 矢野経済研究所 プレスリリース | 年1回(例年9月ごろ) |
| 教育産業のなかでの位置 | 2兆8,555億7,000万円(2024年度) | 矢野経済研究所 プレスリリース | 年1回(例年10月ごろ) |
| 語学試験の規模 | 英検4,543,122人(2025年度)/TOEIC約193万5千人(2024年度) | 日本英語検定協会/IIBC | 年1回 |
| 留学斡旋の規模 | 70,253人(2024年・39社合計) | JAOS | 年1回(例年春) |
| オンライン語学学習 | 各社の節目リリースのみ | 各社プレスリリース | 不定期 |
語学ビジネスの市場規模は、金額としては3年連続でほぼ横ばい(7,841億円→7,906億円→7,901億円の予測)です。一方で、英検の志願者数は5年で約44万人増え、留学生数は2019年比90%まで戻り、AI英会話アプリは節目リリースを出し続けています。金額が動いていない中で、分野ごとの中身は入れ替わっている、というのが公表データから読める形です。
なお、この記事の数字はすべて2026年9月16日に各公表元の公式サイトで確認したものです。矢野経済研究所の調査は毎年更新され、過去年度の推計値が改定されることもあります。引用する際は、その時点の最新リリースで数字を取り直してください。

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