CEFR-Jは、CEFRの6レベル(A1〜C2)を12段階に刻み直した、日本の英語教育向けの到達度指標です。作っているのは東京外国語大学の投野由紀夫研究室で、CEFR-Jのサイトには「科学研究費基盤研究(A)を5回計20年間継続して構築した本格的な CEFR 準拠の枠組」と書かれています。
この記事は、CEFR-Jプロジェクト(東京外国語大学 投野由紀夫研究室)が公開している記述と配布資料、および文部科学省が公表している会議資料・調査結果を並べ直したものです。数字はすべて2026年9月17日に各サイトで確認しました。編集部が独自に推定した数字は入れていません。数え直したものは「編集部が数えた」と明記しています。
CEFR-Jとは何か:CEFRを細分化した12段階の到達度指標
CEFR-Jプロジェクトのサイトは、CEFR-Jを「欧州共通言語参照枠(CEFR)をベースに、日本の英語教育での利用を目的に構築された、新しい英語能力の到達度指標」と説明しています(2026年9月17日に確認)。CEFRそのものを翻訳したものではなく、CEFRの枠組みに準拠したうえで、レベルの刻み方を日本の学習者に合わせて細かくした点が中心です。
CEFR-Jの中身は「can do」と呼ばれる能力記述子(descriptor:デスクリプタ)で書かれています。サイトの記述では「『言葉を使って何ができるか』ということを文章で明示する」形式で、「すべての項目をさまざまな調査結果を用いて検証したデスクリプタで構成されています」とされています。点数やスコアではなく、文章で到達点を示すのがCEFR-Jの形式です。
作成主体=東京外国語大学 投野由紀夫研究室/レベル数=12段階/本体の版=Version 1.1(2012年8月29日アップ、Version 1.0は2012年5月27日)/英語版=Version 1.0のみ(英語はVersion 1.1はありません、との記載)。
CEFR-Jの12段階レベル一覧と、CEFRとの対応
CEFR-Jのレベル名は、2012年8月28日に文部科学省の検討会議(外国語教育における「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標設定に関する検討会議 第1回会合)へ投野由紀夫氏が提出した資料「CEFR-J とは」に図示されています。その図に並んでいるのが次のレベルです。
| CEFRの区分 | CEFR-Jのレベル | 刻み方 |
|---|---|---|
| (A1の下) | Pre-A1 | CEFRには無い段階を下に足した |
| A1 | A1.1/A1.2/A1.3 | 3つに分ける |
| A2 | A2.1/A2.2 | 2つに分ける |
| B1 | B1.1/B1.2 | 2つに分ける |
| B2 | B2.1/B2.2 | 2つに分ける |
| C1 | C1 | 分けない |
| C2 | C2 | 分けない |
合計すると 1+3+2+2+2+1+1=12段階になります。CEFR-Jのトップページにある「CEFR を細分化した12段階のレベル」という記述と一致します。刻みが厚いのはAとBの範囲で、CとPre-A1は1段階ずつという配分です。
CEFR-JとCEFRの違いを4点で整理する
CEFR-JとCEFRは別物ではなく、CEFR-JはCEFRに準拠した枠組みです。2026年9月17日時点で確認できた記述の範囲で、違いを表にしました。
| 観点 | CEFR | CEFR-J |
|---|---|---|
| レベルの数 | A1・A2・B1・B2・C1・C2の6レベル(文部科学省の会議資料の図で確認) | Pre-A1を含む12段階 |
| 作った主体 | 欧州評議会 | 東京外国語大学 投野由紀夫研究室(科学研究費基盤研究(A)) |
| 想定している使い道 | ヨーロッパの言語教育全般 | 日本の英語教育での利用 |
| 技能の立て方 | — | 5技能(聞くこと・読むこと・話すこと[やり取り]・話すこと[発表]・書くこと) |
欧州評議会のCEFR原典(Companion Volume)の本文は、2026年9月17日のアクセスではサイト側の制限で取得できませんでした。そのためこの記事では、CEFR側の記述を文部科学省の会議資料とCEFR-Jプロジェクトの記述の範囲にとどめ、原典から引いた数字は書いていません。
CEFR-Jのcan doディスクリプタは何本あるのか
CEFR-Jのリソースページには、本体について「5 技能 × 12レベル × 2つ(Cレベルは1つ)のcan doから成っています」と書かれています(2026年9月17日確認)。この記述どおりに数えると、5技能×10レベル×2+5技能×2レベル×1で110本になります(編集部の計算)。
一方、2012年8月28日の文部科学省の会議資料には「各レベル(×5技能)2個ずつの can do descriptor を作成 → 計120個」と書かれています。110本と120本という2つの数字が並存しているので、本数を引用するときは、どちらの資料のどの時点の記述かを添えるのが安全です。差はC1・C2を2本ずつ数えるか1本ずつ数えるかに当たります。
CEFR-Jプロジェクトはこのほかに、ELP(European Language Portfolio)のcan do記述子データベースも整備しています。2012年の同資料によると、元になった記述子は2,800件で、そこから選ばれたのは647件でした。内訳は次のとおりです。
- Listening(聞くこと)=124件
- Reading(読むこと)=146件
- Writing(書くこと)=171件
- Spoken Production(話すこと・発表)=69件
- Spoken Interaction(話すこと・やり取り)=137件
CEFR-Jが12段階まで刻まれた理由
刻みを増やした理由は、資料にはっきり書かれています。2012年8月28日の文部科学省の会議資料のレベル設定の図には、「80% の日本人は A-level に属する(根岸)」という注記が付いています。CEFRの6レベルのままだと、日本の学習者の大半がA1とA2の2区画に収まってしまい、伸びが段階として見えにくい、という前提です。
この偏りは、現在の公的な調査でも形を変えて確認できます。文部科学省の令和6年度「英語教育実施状況調査」では、CEFR B1レベル相当以上を達成した高校生の割合は21.2%です。つまり8割近くはA1〜A2の範囲に位置づけられていることになり、細かい刻みが求められる状況は続いています。
CEFR-Jの科研プロジェクトの説明にも、2008年の段階で「CEFRのレベルの細分化を科学的に行う、という目標をたてる」と明記されています。細分化は後から思いついたものではなく、最初期からの設計方針です。
CEFR-Jができるまでの20年間:5期の科研
CEFR-Jのサイトには研究プロセスが年表で公開されています。基盤研究(A)が5回続いた形で、課題番号と研究代表者まで書かれています。
| 期間 | 課題番号 | 研究代表者 | 主な中身 |
|---|---|---|---|
| 2004年4月〜2008年3月 | 16202010 | 小池生夫 | 到達すべき英語力指標の実態調査。後半2年でCEFR日本版の研究へ移行 |
| 2008年4月〜2012年3月 | 20242011 | 投野由紀夫 | プロジェクトを「CEFR-J」と命名。細分化と検証、Version 1の一般公開 |
| 2012年4月〜2016年3月 | 24242017 | 投野由紀夫 | 活用リソースの整備。Wordlist、Grammar/Text/Error Profileの整備 |
| 2016年4月〜2020年3月 | 16H01935 | 根岸雅史 | CAN-DO指導タスクとテストの開発・公開 |
| 2020年4月〜2025年3月 | 20H00095 | 根岸雅史 | CAN-DOタスク中心の教授と評価に関する総合的研究 |
報告書のボリュームも記載があります。最初の科研の中間報告書(平成18年6月)は618ページ、研究成果報告書(平成20年3月)は508ページ、2008年からの科研の中間報告書(2010年12月)は345ページです。CEFR-Jは、2004年から積み上がった調査の上に乗っている枠組みだと読み取れます。
CEFR-Jの妥当性検証に使われた調査の規模
CEFR-Jのcan doは、書いて終わりではなく検証を通しています。サイトに書かれている2010年4月〜2012年3月の検証フェーズの規模は次のとおりです。
- 小中高大の英語教員150名規模へのデスクリプタ並べ替え調査と、レベル間相関分析
- 中高大5,468名(中学1,685名、高校2,538名、大学1,245名)への「can do調査」と、項目応答理論による分析
- 「できる」と思っていることと「実際にできるのか」の関係を見る実証研究を5技能別に実施
- 小中高大の現場で使ってもらう学校パイロット
その前段の科研(2006年〜2008年)では、7,354名のビジネスパーソンへの英語力調査、100校のSEL-Hi調査、354校の小学校アンケートといった大規模調査が実施されたと記載されています。ベータ版はこの検証結果を踏まえてVersion 1に改訂され、2012年3月のシンポジウムで一般公開されました。
CEFR-J Wordlistが示すレベル別の語彙数
CEFR-Jには語彙表が付いています。最新はVersion 1.6(2020年3月24日更新版)で、レベル別の項目数と、日本の学校教育での相当レベルが表になっています。
| レベル | 項目数(品詞別語) | 見出し語(参考) | 日本の学校教育での相当レベル |
|---|---|---|---|
| A1 | 1,166 | 1,068 | 小学校〜中学1年程度 |
| A2 | 1,411 | 1,352 | 中学2年〜高校1年程度 |
| B1 | 2,445 | 2,353 | 高校2年〜大学受験レベル |
| B2 | 2,779 | 2,692 | 大学受験〜大学教養レベル |
| 合計 | 7,801 | 6,868 | — |
注意点も明記されています。同じ単語でも品詞が違えば別項目として数え、異なるCEFRレベルが付くことがあるため、項目数と見出し語数は一致しません。また「日本の学校教育での相当レベル」は2019年3月4日に新学習指導要領へあわせて改訂されたものです。
語数が増えた理由も書かれています。当初は6,000語に集約する予定でしたが、English Vocabulary Profileとの整合表を作り、その差分を取り込んだために項目数が増えたとされています。位置づけは「B2レベルの認識語彙を含めた基礎語彙力の指標」です。
CEFR-J Grammar Profileの文法項目数と、使うときの注意
CEFR-J Grammar Profileは、CEFR-Jのレベルにひもづく文法特性の一覧です。サイトの説明では成城大学の石井康毅氏が中心となり「500項目以上の文法抽出パターン式」を作成したとされています。公開されている文法項目リスト(version 20200220)のPDFを編集部が数えたところ、見出し番号は263、枝番を含む行は501行でした(2026年9月17日に取得したPDFで計算)。
同じPDFには、使う側が押さえておくべき但し書きも書かれています。抽出は正規表現によるため精度の限界があり、たとえば179番「関係代名詞[目的格]の省略」は、他のパターンも当てはまってしまうために実際より高頻度に出る、という具体例まで示されています。また、EFLコースブックコーパス version 4.0(20180205)で該当する生起例が無い項目は93項目ありました。
更新も続いています。2020年2月に文法項目リストと正規表現リスト、頻度リスト、教員版、Perlスクリプト一式が公開され、2025年2月には2022〜24年度使用開始の中学・高校検定教科書の頻度リストと、全データのExcelファイルが追加されています。
CEFR-J Text Profileと、レベルを判定する2つのツール
テキストの側からCEFR-Jレベルを見るための道具も公開されています。代表がCVLA(CEFR-based Vocabulary Level Analyzer)で、九州大学の内田諭氏を中心に作られ、入力したテキストのCEFR-Jレベルを推定します。科研費(JP24242017、JP16H01935)の補助を受けて作成された教科書コーパスの統計値をもとに、回帰式で算出する仕組みです。
リーディングとリスニングの2モードがある/ダイアログ形式のテキストは正しく分析できない/結果は推定値で、正確さを保証するものではない/およそ300語程度以上あれば結果は比較的安定する/短いテキストでは推定値が大きくずれることがある。
もう1つがEnglish Level Checkerです。東京工業大学の奥村研究室でGrammar Profileのデータを中心にCEFRレベルを判定するツールとして開発され、2020年12月1日より一般公開されています。なお、Text Profile関連の資料そのものは、2026年9月17日時点でリソースページに「後日アップします」と記載された状態でした。
CEFR-J CAN-DOテストが公開している範囲
CEFR-JのCAN-DOに対応したテストのサンプルも公開されています。科学研究費基盤研究(A)「英語到達度指標 CEFR-J 準拠の CAN-DO 指導タスクおよびテスト開発と公開」(2016〜2019年度、課題番号16H01935、研究代表者:根岸雅史)の研究成果で、版はサンプル版 Version 1.0です。
公開範囲は、聞くこと・読むこと・やりとり・発表・書くことの5技能それぞれで Pre-A1 から B2.2 までです。たとえば「聞くこと」のPre-A1には「英語の文字が発音されるのを聞いて、どの文字かわかる」、B2.2には「非母語話者への配慮としての言語的な調整がなされていなくても、母語話者同士の多様な会話の流れ (テレビ、映画など) についていくことができる」というcan doが置かれています。難易度の幅がそのまま見える形です。
利用条件も書かれています。教育・研究用に無償公開で、目的に応じてそのまま、または適宜改変しての利用が許可されています。ただし教育・研究・商用を問わず引用が求められ、損害や批判に対して科研チーム・投野研究室は責任を負わないと明記されています。音源は2026年9月17日時点で「後日公開します」の記載でした。
CEFR-Jのレベルと、文部科学省が公表している到達率の関係
ここは混同されやすい点です。文部科学省の「英語教育実施状況調査」が使っているのはCEFRの6レベルであって、CEFR-Jの12段階ではありません。それでも、CEFR-Jが刻もうとしている範囲がどこかを見るには役立つ数字です。令和6年度調査(調査実施基準日=令和6年12月1日)の結果は次のとおりです。
| 区分 | 令和6年度 | 令和5年度 | 第4期教育振興基本計画の目標 |
|---|---|---|---|
| 中学生でCEFR A1相当以上(英検3級相当) | 52.4% | 50.0% | 6割以上 |
| 高校生でCEFR A2相当以上(英検準2級相当) | 51.6% | 50.6% | 6割以上 |
| 高校生でCEFR B1相当以上(英検2級相当) | 21.2% | 19.8% | 3割以上 |
中学生の52.4%の内訳は、実際に資格・検定を取得している生徒が27.8%、それに相当する英語力を有すると英語担当教師が判断した生徒が24.5%です。調査対象は公立中学校9,130校、高等学校3,241校(合計3,968学科)でした。
注目したいのは判断根拠です。「A1レベル相当以上を有するかどうかを判断する際に活用した根拠(複数回答可)」は、CAN-DOリストに基づく自校でのパフォーマンステストの結果が52.2%で最多、2技能または3技能を測る試験のスコアが51.3%、公式な記録としては認定されない試験のスコアが41.1%、MEXCBTのCBT問題の解答状況が1.9%、AIツール等による判定結果が1.8%、その他が13.5%でした。CAN-DOという考え方そのものは、すでに学校現場の判断材料になっています。なお、政府目標であるCEFR A1相当以上の中学生の割合50%を達成した自治体は、全67自治体中37自治体です。
CEFR-Jで最後に確認しておくこと
CEFR-Jの数字を扱うときに、事故が起きやすいのは「版」と「出所」です。CEFR-Jは本体・語彙表・文法リストで版の日付がバラバラなので、引用するときは必ず版と取得日をセットにするのが安全です。
| 資料 | 版 | 日付 |
|---|---|---|
| CEFR-J本体(日本語版) | Version 1.1 | 2012年8月29日アップ |
| CEFR-J本体(英語版) | Version 1.0 | 2012年5月27日アップ |
| CEFR-J Wordlist | Version 1.6 | 2020年3月24日更新版 |
| CEFR-J Grammar Profile 文法項目リスト | version 20200220 | 2020年2月公開/2025年2月に追加公開 |
| CEFR-J CAN-DOテスト | サンプル版 Version 1.0 | 2016〜2019年度科研の成果 |
利用条件も押さえておきます。Wordlistは「著作権は東京外国語大学投野研究室に帰属するが、適切な引用を行っていただければ研究教育および商用においても無償で利用できる」とされ、引用形式は『CEFR-J Wordlist Version 1.6』東京外国語大学投野由紀夫研究室(URLと取得年月)と示されています。本体のダウンロードには使用許諾への同意が求められます。いずれの資料にも免責事項が付いており、内容に誤りがある可能性は否定できないので随時改訂版を利用するように、と書かれています。
最後に、CEFR-Jは止まったプロジェクトではありません。トップページには2026年3月11日付で「CEFR-J 2026 Symposiumを開催します」という告知が出ています(2026年9月17日に確認)。本記事の数字も同日時点のものなので、実務で使うときは版と更新情報を都度ご確認ください。

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