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海外赴任に必要な英語力の目安|企業が求めるスコアのデータ

海外赴任者の選抜でTOEICスコアを要件または参考にしている企業が、そのスコアとして挙げた平均はTOEIC L&R 645点だった。これはIIBC(一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会)の「英語活用実態調査【企業・団体/ビジネスパーソン】2022」の数字で、同じ調査で海外出張者の選抜に使われている平均は610点、海外部門の社員に期待するスコアは平均705点・幅は605〜805点と公表されている。

この記事は、IIBCと日本経済団体連合会が公表している調査結果を並べ直したものである。数字は2026年9月21日に各団体の公式サイトおよび公表PDFで確認した。確認が取れなかったものは載せていない。金額や順位の評価はせず、公表されている値と、その値が何を数えたものかだけを書く。

目次

海外赴任者に企業が期待するTOEICスコアの平均は645〜715点

IIBCは同じテーマを年をまたいで調査している。海外赴任者の選抜にTOEICスコアを使っている企業が答えた「要件・参考とするスコア」の平均は、2011年調査が715点、2013年調査が695点、2022年調査が645点である。海外出張者向けはそれより低い値が並ぶ。

調査年 海外赴任者に期待するTOEIC L&R(平均) 海外出張者に期待するTOEIC L&R(平均)
2011年 715点 615点
2013年 695点 675点
2022年 645点 610点

2011年と2013年の値はIIBC「上場企業における英語活用実態調査」2013年報告書に、2022年の値はIIBC「英語活用実態調査【企業・団体/ビジネスパーソン】2022」に載っている。いずれも「利用している」「参考にしている」と答えた企業だけを集計した平均で、全企業の平均ではない。

この3つの値を「下がってきた」と読まない理由

2011年・2013年の調査は上場企業の人事部門が対象で、2022年の調査はTOEIC Programを実施している企業・団体が対象である。母集団も設問文も同じではないため、715点→695点→645点という並びを時系列の推移として扱うことはできない。ここでは「どの調査でも600点台後半から700点台前半が中心にある」という点だけを読む。

海外赴任者の選抜でTOEICを使っている企業の割合

2022年調査では、海外赴任者の選抜にTOEIC Programのスコアを利用しているかを5択で聞いている。「要件としている」は7.6%、「参考としている」は36.1%で、合計43.7%が実際に選抜へ組み込んでいる。

回答 海外赴任者の選抜 海外出張者の選抜
要件としている 7.6% 2.1%
参考としている 36.1% 22.9%
新たに要件・参考とする可能性がある 31.3% 36.8%
利用していない 19.4% 31.3%
無回答 5.6% 6.9%
要件・参考とするスコアの平均 645点 610点

同じ質問は2013年報告書にもある。当時は海外赴任者の選抜にTOEICを利用している企業が30.3%(「利用している」7.5%+「利用することもある」22.8%)で、「利用していないが、将来は利用したい」29.8%を足すと60.1%だった。海外出張者の選抜では28.5%が利用していた(回答企業数228社)。

海外赴任の母体になる海外部門に期待されるスコアの幅

海外赴任の候補になるのは多くの場合、海外部門に所属する社員である。2022年調査では、部署・階層ごとに企業が期待するTOEIC Programの平均スコアが公表されている。海外部門はL&R 705点で、他の区分より120点以上高い。

区分 TOEIC L&R(平均) 期待スコアの幅 Speaking(平均) Writing(平均)
海外部門 705点 605〜805点 140点 150点
中途社員 580点 480〜685点 120点 120点
営業部門 580点 475〜680点 120点 130点
技術部門 560点 470〜650点 110点 120点
新入社員 550点 460〜640点 100点 110点

2013年報告書でも同じ方向の値が出ている。国際部門での業務遂行に必要なスコアは平均750点で、68.6%の企業が700点以上を期待すると答えた。一方、全社員に求めるスコアの平均は600点で、部門による差が150点あった。全社員向けの分布は「500〜595点」24.7%、「600〜695点」20.9%が上位を占めている。

海外赴任で求められる話す力・書く力の目安

TOEIC L&Rは聞く・読むの2技能を測る。海外赴任の場面では話す・書くも問われるため、IIBCはTOEIC Speaking Test/Writing Testの期待スコアも公表している。

調査 対象 Speaking Writing
2011年調査(2013年報告書に掲載) 海外部門・海外赴任 170点 180点
2022年調査 営業部門 120点 130点
2022年調査 海外部門 140点 150点
2022年調査 新入社員 100点 110点

Speakingは200点満点、Writingも200点満点である。IIBCのスピーキング能力レベル別評価では、スピーキング170〜180点が「海外赴任レベル」として位置づけられ、「一般的な職場にふさわしい継続的な会話ができる」と説明されている。ライティングでは180点以上が同じ帯に当たる。

IIBCが公表している別の設問では、日常的に業務で英語を使う部署に所属する人事・採用担当者122人のうち92.7%が「聞く・読むだけでなく、話す・書く英語力も求める」と回答している。これは部署を限定した設問で、全社員に対する数字ではない。

海外赴任に近い職種の人が実際に取っているスコア

企業が期待する値とは別に、実際のスコアも公表されている。IIBC「TOEIC Program DATA & ANALYSIS 2025」は2024年度(2024年4月〜2025年3月)の実受験者データで、企業・団体で実施されたIPテストを職種別に集計している。職種「海外」の平均は696点(7,611人)で、全職種のなかで最も高い。

職種 受験者数 平均スコア
海外 7,611人 696点
法務 3,183人 658点
経営 4,532人 647点
広報 1,445人 635点
企画 15,899人 608点
営業 49,041人 564点
技術 109,385人 506点
製造 25,589人 430点

同じ報告書には、英語を主言語とする国への滞在経験と期間で区切った平均スコアも載っている。滞在経験なしと、滞在6カ月以上との間に200点以上の差がある。

英語圏への滞在経験 受験者数 平均スコア
滞在経験なし 243,631人 498点
6カ月未満 97,278人 592点
6カ月以上1年以下 12,850人 707点
1年より多く2年以下 6,318人 710点
2年より多く 13,028人 746点

なお2013年報告書には、2012年度IPテスト受験者の部門別平均として海外部門683点、営業部門480点、技術部門450点という値が載っている。12年を隔てた2つの報告書で、海外に関わる部門・職種だけが680〜700点の帯にあるという点は共通している。

海外赴任と地続きの、昇進・昇格の要件スコア

海外赴任の要件は、社内の昇進・昇格の要件と連動していることが多い。2013年報告書では、TOEICスコアを異動・昇進・昇格の要件にしている企業は15.8%で、要件にしている企業の平均スコアは役職ごとに次のとおりだった。

役職 2011年の要件スコア(平均) 2013年の要件スコア(平均)
役員 公表なし 525点
部長 520点 580点
課長 525点 550点
係長 530点 545点
主任 470点 520点

2022年調査では、スコアを昇進・昇格の「要件としている」「参考としている」「要件・参考とする可能性がある」と答えた企業の比率がいずれの役職でも4割前後とされている。IIBCは要件を設けている企業の実例も業種のみを添えて公表しており、係長・主任クラスで500〜650点、課長クラスで600〜700点、部長以上で700〜800点という水準が並ぶ。

IIBCが公表している要件の実例(社名は非公表)
  • 建設・土木のA社=係長・主任への昇進・昇格に650点
  • 化学・薬品のB社=昇進・昇格に600点
  • 電機・精密機器のD社=係長・主任650点、課長以上700点
  • 情報通信のE社=係長・主任500点、課長600点、部長以上720点
  • 商社のF社=昇進・昇格に700点
  • 情報通信のB社(S&W併用)=部長でL&R 800点+Speaking・Writing各150点

経団連の調査でみる、海外赴任の語学要件の設定状況

そもそも客観的な基準を設けている企業は多数派ではない。日本経済団体連合会が2011年1月18日に公表した「産業界の求める人材像と大学教育への期待に関するアンケート結果【概要版】」では、海外赴任者に求める外国語能力について「客観的基準は設けていない」が501社、設けているのは54社だった。

項目 内容
調査主体 社団法人日本経済団体連合会(当時)
調査対象 日本経団連会員企業1,283社、地方別経済団体加盟企業
実施期間 2010年9月15日〜11月1日
回答数 596社(経団連会員310社・非会員286社)
海外赴任の基準を設けていない 501社
海外赴任の基準を設けている 54社

基準を設けている企業が挙げたTOEICの水準は、総合基準が500点以上〜800点以上、海外派遣のうち研修が450点以上〜650点以上、駐在が600点以上〜730点以上、留学が700点以上〜800点以上(TOEFL iBTでは100点以上)と報告されている。中国語検定3級・4級以上を挙げる回答も多かった。

海外赴任のスコア目安を読み違えないための4点

ここまでの数字は出どころも母集団も違う。並べて比べる前に、次の4点を確認しておきたい。

注意点 内容
母集団が違う 2013年報告書は上場企業の人事部門(回答304社、英語を使う企業228社)、2022年調査はTOEIC Programを実施している企業・団体。回答企業数は公表資料に記載がない
公開テストとIPテストは別 2024年度の平均は公開テスト615点(735,425人)、IPテスト495点(1,041,495人)。企業・団体で実施されたIPテストに限ると540点(417,594人)
職種「海外」=赴任者ではない 696点は職種を「海外」と申告した受験者の平均であり、赴任が決まった人だけを数えた値ではない
幅は平均から作った仮定値 2013年報告書は「中心値を期待スコアの平均値とし、プラス・マイナス1標準偏差に相当するゾーンを期待値の幅と仮定」と注記している

また、2013年報告書の海外赴任者・海外出張者の期待スコアは「利用している」「利用することもある」と答えた企業だけの平均である。海外赴任業務そのものがない企業(11.8%)や、利用していない企業(24.6%)は平均に入っていない。

海外赴任の英語力について、最後に確認しておくこと

公表データで確認できた要点
  • 海外赴任者の選抜で使われるTOEIC L&Rスコアの平均は、2022年調査で645点、2013年報告書で695点、2011年調査で715点
  • 海外部門の社員に期待するスコアは平均705点、幅は605〜805点(2022年調査)
  • 海外赴任者の選抜にスコアを要件としている企業は7.6%、参考としている企業は36.1%(2022年調査)
  • 2024年度のIPテストで職種「海外」の平均は696点(7,611人)で、全職種中で最も高い
  • 英語圏への滞在が6カ月以上1年以下の層の平均は707点、滞在経験なしの層は498点
  • 経団連の2011年公表資料では、海外赴任者の語学に客観的基準を設けていない企業が501社、設けている企業が54社
  • 基準を設けている企業のTOEICの水準は、海外派遣(駐在)で600点以上〜730点以上
【この記事の数字の出どころ】

一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)「2013年 上場企業における英語活用実態調査 報告書」(2013年1月実施、上場企業3,254社の人事部門が対象、回答304社、うち英語を使う企業228社)/確認日2026年9月21日

一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)「英語活用実態調査【企業・団体/ビジネスパーソン】2022」(IIBC公式サイト「企業・団体の主なTOEIC Program活用目的」に掲載の図表)/確認日2026年9月21日

一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)「TOEIC Program DATA & ANALYSIS 2025」(2024年度=2024年4月〜2025年3月の実受験者データ)/確認日2026年9月21日

社団法人日本経済団体連合会「産業界の求める人材像と大学教育への期待に関するアンケート結果【概要版】」2011年1月18日公表(2010年9月15日〜11月1日実施、回答596社)/確認日2026年9月21日

「要件としている7.6%+参考としている36.1%=43.7%」の合計は編集部が計算したもの。それ以外の数値は各資料に記載された値をそのまま転記している。

海外赴任に必要な英語力として公表されている数字は、TOEIC L&Rで600点台後半から700点台前半に集まっている。ただし基準そのものを設けていない企業のほうが多く、設けている企業でも役職や派遣の種類で水準が分かれる。自社の要件は社内規程が一次情報であり、ここに並べた数字はあくまで公表調査の平均値と分布である。最新の値は各団体の公式サイトで確認してほしい。

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