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英語の資格手当はいくら?公表されている金額を並べた

英語の資格手当について、国が集めた数字のなかで最もはっきりしているのはこれです。一定のTOEIC L&Rスコアに到達したときに「資格手当(到達後、毎月支払う)」を出していると答えた企業は5.9%、「報奨金(到達時に一時払い)」は27.5%、どちらも出していないが67.2%(IIBC「英語活用実態調査2019【企業・団体】」回答528社、複数回答)。つまり毎月の手当が付く会社は20社に1社ほどで、多数派はどちらも出していません。

この記事は、中央労働委員会・厚生労働省・人事院・一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)、および金額を自社サイトで公表している企業のプレスリリースや採用ページが公表している数字を並べ直したものです。数字は2026年9月16日に各公式サイトで確認しました。金額の推定や相場の言い切りはしていません。出どころが

金額の表記について

本文に出てくる金額は、いずれも賃金・手当として公表されている額です。賃金や手当は消費税の課税対象ではないため、税込・税抜の区別はありません。統計の金額も公表元の表記のまま(税込/税抜の別なし)で載せています。

目次

英語の資格手当はいくらか、まず公表されている金額を並べる

「英語の資格手当」だけを取り出して全国規模で集計した公的統計は、確認できた範囲では存在しません。存在するのは、英語を含む資格全般をまとめた統計と、自社の金額を公表している個別企業の記載の2つです。まずは後者、つまり金額そのものが書かれている例から見ます。

公表元 対象 金額の決め方 公表日・出典
株式会社ノジマ TOEIC750点以上の全従業員(アルバイトを含む/1年以内のテスト結果が対象) 毎月「TOEIC点数×10円」 2025年5月30日発表のプレスリリース、2025年6月1日開始
キャロットソフトウェア株式会社 情報処理技術者の区分1取得者でTOEIC750点以上 月額「TOEICスコア×30円」 同社採用サイト「資格取得支援制度」
キャロットソフトウェア株式会社 同 区分2・3取得者でTOEIC750点以上 月額「TOEICスコア×20円」 同上
キャロットソフトウェア株式会社 同 区分1〜4取得者でTOEIC600点以上 月額「TOEICスコア×10円」 同上

式に当てはめると金額が出ます。ノジマの計算式でTOEIC750点なら月7,500円、900点なら月9,000円。キャロットソフトウェアの「スコア×30円」でTOEIC800点なら月24,000円です。どちらも会社が式を公表しているので、読み手が自分で計算して確かめられます。

ここで押さえておきたいのは、両社とも「点数に比例して毎月増える」設計だという点です。確認できないものは書きません。

資格手当の制度そのものを持つ企業は何割か

英語に限らず「資格に対して手当を出す制度」があるかどうかは、中央労働委員会の「賃金事情等総合調査」で分かります。この調査は、原則として資本金5億円以上かつ労働者1,000人以上の企業から選ばれた380社を対象にしたもので、令和4年調査では220社が回答しました(回収率57.9%)。

令和4年調査で「技能手当、技術(資格)手当制度」を採用している企業は、調査産業計の集計170社のうち68社、40.0%。前回の平成29年調査では集計213社のうち73社でした。大企業に限っても、制度を持つ会社は半数に届いていません。

統計を読むときの注意

賃金事情等総合調査は固定された対象企業に毎年たずねる方式で、通常の標本調査とは性格が異なります。調査票にも「結果は回答が得られた企業の回答を単純に集計したものであり、必ずしも我が国の企業全体を表すものではない」と明記されています。中小企業を含めた全国平均ではない点に注意してください。

資格手当の平均支給額を資格の系統別に見る

同じ調査は、手当の対象になる資格を4つの系統に分けて平均支給額を出しています。金額は千円単位で、「定額」と「支給額に幅がある場合の最高額」の2本立てです。

資格の系統 定額(調査産業計) 幅がある場合の最高額 製造業の定額 製造業の最高額
情報処理系 13.5千円 20.5千円 5.0千円 31.0千円
事務・法律系 11.3千円 18.0千円 6.4千円 23.0千円
技能労働系 9.5千円 14.4千円 9.6千円 14.7千円
その他の資格 28.0千円 151.3千円 2.6千円 43.8千円

この4区分に「語学」「英語」という枠はありません。英語の資格手当がこの表のどこに入っているのかは、公表されている区分からは特定できません。事務・法律系に含めている会社もあれば、その他の資格に入れている会社もあり得ますが、調査は内訳を公表していないので、ここは「分からない」と書いておきます。

前回の平成29年調査と比べると、情報処理系の定額は9.9千円から13.5千円へ、技能労働系は6.9千円から9.5千円へ動いています。5年で上がった区分がある一方、事務・法律系は11.9千円から11.3千円へわずかに下がりました。資格手当は毎年自動で増えるものではない、ということが数字に出ています。

資格手当より「報奨金」で払う会社のほうが多い

冒頭の数字をもう一度置きます。IIBCの調査で、一定のTOEIC L&Rスコアに到達した場合の扱いは次のとおりでした。

支払い方 支給していると答えた企業の割合
報奨金を支給している(到達時に一時払い) 27.5%
資格手当を支給している(到達後、毎月支払う) 5.9%
これらは支給していない 67.2%

回答528社、複数回答です。毎月の資格手当より、一度きりの報奨金のほうがおよそ4.7倍多いという形になっています。会社から見ると、一時金は固定費が増えないという違いがあります。

同じ報告書には、報奨金を出している企業が回答した「対象スコアと金額」の実例一覧が載っています。掲載されている金額は最も低いもので2,000円、最も高いもので1,000,000円、対象スコアは400点から990点まで開いています。ひとつの相場に収まる話ではなく、会社ごとにまったく違う設計だと読むのが正確です。

資格手当の対象になるスコアはどのあたりに置かれているか

手当や報奨金の線引きに使われるスコアは、会社が社員に期待する水準と連動しています。IIBCの同じ調査から、企業・団体が社員に期待するTOEIC Programの平均スコアを引きます。

対象 TOEIC L&R TOEIC Speaking TOEIC Writing
新入社員 535点 110点 110点
中途社員 560点 110点 110点
技術部門 560点 120点 130点
営業部門 575点 120点 120点
海外部門 690点 140点 140点

期待値の中心は500点台後半で、海外部門だけが690点と一段高くなっています。金額を公表している2社が線を引いているのは600点と750点で、期待値より上に手当のラインが置かれていることが読み取れます。資格手当は「平均に届いた人」ではなく「平均より上に出た人」に向けた設計だということです。

医療・介護の資格手当はいくら払われているか(英語と比べる材料)

英語の資格手当の実額は個別企業の公表に頼るしかありませんが、資格手当が1円単位で公表されている職種があります。中央労働委員会が医療施設・介護事業所を別集計しているためです。金額感を比べる材料になります。

職種(医療従事者) うち資格手当(月額・令和7年調査) 参考:令和4年調査
医師 43,142円 58,002円
看護師 3,032円 1,857円
准看護師 6,682円 10,181円
理学療法士 2,905円 3,452円
作業療法士 2,167円 4,480円
診療放射線技師 1,507円 1,663円
臨床検査技師 1,378円 1,367円

介護の側も見ておきます。令和3年調査の介護従事者では、介護職員初任者研修修了者が3,221円、実務者研修修了者が5,618円、介護福祉士が9,482円、生活相談員・支援相談員が9,391円、介護支援専門員が14,198円でした。国家資格が業務の前提になっている職種でも、資格手当そのものは月1,000円台から1万円台に収まっているのが実測値です。

ノジマの式でTOEIC800点なら月8,000円。この数字は、介護福祉士の資格手当9,482円とほぼ同じ高さに並びます。英語の資格手当が特別に低いわけでも高いわけでもない、という位置関係が見えます。

国の制度に英語の資格手当はあるのか

国家公務員には語学に対する手当の制度が存在します。ただし中身を読むと、英語は入っていません。

「在外公館に勤務する外務公務員の特殊語学手当に関する政令」(昭和27年政令第428号)は、手当の対象を「在勤地において必要な英語、フランス語及びドイツ語以外の語学で外務省令で定めるもの」の研修を命じられた職員と定めています。金額は「現に研修に要した授業料その他の経費に相当する額」で、その額が16,000円を超えるときは16,000円が上限です(月額)。

条文から読める線引き

英語・フランス語・ドイツ語が名指しで外されているのは、この3言語が在外公館の職務で前提とみなされているためと条文からは読めますが、理由そのものは政令に書かれていません。書かれているのは「対象外」という事実だけです。

つまり国の制度としては、英語は「手当で報いる特殊技能」ではなく「できている前提」の側に置かれています。民間で英語の資格手当が5.9%にとどまるという数字とも、方向としては同じ向きです。

資格手当が付かなくても英語力が金額に反映される場面

毎月の資格手当が付く会社は少数ですが、スコアが選抜の基準として使われる場面はもっと広く公表されています。IIBCの調査から、要件・参考にしているTOEIC L&Rスコアの平均値を引きます。

場面 要件・参考とするTOEIC L&Rスコア(平均) 回答社数
新卒採用 545点 128社
英語を使用する部署の中途採用 620点 139社
係長・主任への昇進・昇格 515点 75社
課長への昇進・昇格 530点 108社
部長への昇進・昇格 565点 59社
役員への昇進・昇格 600点 50社
海外出張者の選抜 620点 81社
海外赴任者の選抜 635点 122社

同じ調査では、TOEICの結果の使い道として「昇進、昇格の基準」が52.0%、「海外赴任者、海外出張者の選抜の基準」が45.9%、「新卒採用、中途採用の基準」が41.4%と回答されています(回答512社、複数回答)。手当という形で毎月配る会社は少なくても、役職と赴任の入口でスコアが見られている会社は半数前後ある、という構図です。

受験費用の扱いも公表されています。「全額を勤務先が負担」が64.6%、「全額を個人が負担」が9.2%(回答512社)。手当は出さないが受験料は会社が持つ、という形が多数派です。

資格手当ではなく加算点で扱う例(国家公務員試験)

英語力を金額ではなく点数で扱う公表制度もあります。人事院は国家公務員採用総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)の全ての試験区分で、外部英語試験のスコアに応じて最終合格者決定の際に総得点へ加算しています。平成27年度の試験から実施されている仕組みです。

加算点 TOEFL iBT TOEIC L&R IELTS 実用英語技能検定
15点加算 65以上 600以上 5.5以上 ―
25点加算 80以上 730以上 6.5以上 準1級以上

対象になるのは、試験年度の4月1日から遡って5年前の日以後に受験したスコア等で、第2次試験(人物試験)の際に証明書類を提出する必要があります。加算を求められる英語試験は1つに限られます。資格手当のように毎月お金が入る形ではありませんが、英語のスコアが評価に置き換わる公表された基準としては最も条件がはっきりしている例です。

資格手当の額を月の給与と比べるとどれくらいか

金額の大小は、比べる相手を置かないと判断できません。厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、一般労働者の所定内給与額は男女計330.4千円、男性363.1千円、女性275.3千円(2024年)です。

手当の額(月) 男女計330.4千円に対する割合 年額に直すと
3,000円 約0.9% 36,000円
7,500円(ノジマの式でTOEIC750点) 約2.3% 90,000円
13,500円(情報処理系の定額平均) 約4.1% 162,000円
24,000円(スコア×30円でTOEIC800点) 約7.3% 288,000円

割合と年額は、上の公表値どうしを編集部が割り算・掛け算しただけのものです。月数千円の資格手当は月給の1%前後にとどまり、月2万円台になって初めて7%台に届くという関係になります。なお資格手当は原則として賃金なので、割増賃金の算定基礎に含まれるかどうかは会社の規程によります。この点は公表統計では分かりません。

資格手当は非正規の働き方にも出るのか

中央労働委員会の令和4年調査は、常用労働者以外(短時間労働者・有期契約労働者)への適用も調べています。常用労働者に技能手当、技術(資格)手当制度がある企業のうち、常用労働者以外にも適用される制度があるのは58社中28社、48.3%。そのうち常用労働者と「同一額」を支給するのが28社中23社、82.1%でした。

制度がある会社の約半数は非正規にも広げていて、広げた場合は同額が多数派、という読み方になります。前掲のノジマの制度が「アルバイトを含む全従業員」を対象にしていると明記しているのも、この流れの中にある例です。

数字の範囲

この48.3%は「制度がある企業だけを分母にした割合」です。制度を持たない企業を含めた全体の割合ではありません。統計の分母は毎回変わるので、引用するときは分母ごと写すのが安全です。

英語の資格手当で最後に確認しておくこと

ここまでの数字を、確認できた出どころごとにまとめます。

  • 毎月の資格手当を出す企業は5.9%、一時金の報奨金は27.5%、どちらも出していないが67.2%(IIBC 2019年調査・回答528社・複数回答)
  • 資格手当の制度そのものを持つ大企業は40.0%(中央労働委員会 令和4年調査・集計170社中68社)
  • 系統別の定額平均は情報処理系13.5千円、事務・法律系11.3千円、技能労働系9.5千円(同)
  • 金額の式を公表している企業の例は「TOEIC点数×10円」「スコア×30円」など(ノジマ、キャロットソフトウェア)
  • 国の特殊語学手当は英語を対象外とし、上限は月16,000円(昭和27年政令第428号)
  • 国家公務員採用総合職試験はTOEIC600以上で15点、730以上で25点を加算(人事院)

求人票や社内規程で資格手当を確認するときに、見るべき点を3つに絞ると次のようになります。①毎月なのか一時金なのか、②スコアの有期限があるか(ノジマは1年以内のテスト結果が対象と明記)、③他の資格の取得が前提条件になっていないか(キャロットソフトウェアのTOEIC手当は情報処理技術者資格の保有が前提で、その支給期間が終わるとTOEIC手当も終わると明記されています)。

この3点は、いずれも金額そのものより総額を左右します。月5,000円の差より、「毎月か一度きりか」「3年で切れるか続くか」の差のほうが大きく反映されるためです。数字を比べる前に、支払いの条件を先に読むほうが判断を間違えにくくなります。

最後に、この記事で使わなかったものにも触れておきます。「TOEIC600点で月3,000円が相場」といった段階表は広く見かけますが、公的統計にも企業の公式ページにも出どころが見当たりません。それらしく見えても、出どころの無い数字は相場として使えません。自分の勤務先の条件は、社内の賃金規程か求人票の「諸手当」欄で確認するのが唯一確実な方法です。

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