「英語を公用語とする国は何カ国ですか」という問いには、ひとつの数字では答えられません。現行憲法の本文に「英語は公用語である」と書いてある国は19か国。憲法が公務での英語使用を定めている国まで広げると48か国。法律や大統領令、規定の無い事実上の共通語まで含めると62か国になります。同じ問いでも、どこで線を引くかで数字が3倍以上動きます。
この記事は、各国の現行憲法188本の全文、英連邦(Commonwealth)事務局の公式サイト、アメリカ・ホワイトハウスの大統領令、イギリスの法令データベース legislation.gov.uk、香港特別行政区政府の基本法サイト、国連と欧州連合(EU)の公式ページを、編集部が2026年9月17日に1本ずつ当たって並べ直したものです。憲法本文は、各国政府が提供した正文または公式英訳を収録している Constitute Project の全文データ(2026年9月17日取得)を機械で検索し、条文を1本ずつ読んで分類しました。条文が見つからない国は、この記事の数えには入れていません。
英語を公用語とする国は、数え方で19か国から62か国まで動く
まず結論の表です。「英語を公用語とする国」という言い方が指すものは、4通りあります。どれが正しいという話ではなく、どの数え方を使っているのかを先に言わないと、数字がかみ合いません。
| 数え方 | 何を数えるか | 国数(2026年9月17日時点) |
|---|---|---|
| ①憲法に明記 | 現行憲法の本文に「英語は公用語/国語/公認言語である」と書いてある国 | 19か国 |
| ②①+公務での使用規定 | ①に加え、公用語とは書かずに議会・裁判・教育・憲法正文の言語として英語を指定している国29か国を足す | 48か国 |
| ③②+憲法の外の規定 | ②に加え、憲法ではなく法令で英語を公用語と定めた国(アメリカ1か国)を足す | 49か国 |
| ④③+規定の無い事実上の共通語 | ③に加え、憲法にも言語規定が無いまま英語で行政と教育が回っている国13か国を足す | 62か国 |
| 参考:英連邦加盟国 | 英連邦事務局が公式サイトに載せている加盟国。英語が公用語でない国も含む | 56か国 |
よく見かける「英語が公用語の国は約80か国」という言い方は、この表のどれにも当たりません。属領・海外領土・自治政府まで足した数え方だと考えられますが、編集部が当たった一次ソースの中に、その数字を出しているものはありませんでした。
英語を公用語とする国を数えるときは、まず「憲法に書いてあるか」で線を引く
言語の地位は、たいてい憲法の最初のほう、国旗や国章と同じ章に置かれています。そこに名前が書いてあるかどうかは、機械で数えられます。編集部は、いま現行と分類されている憲法188本の全文を落として、「official language」「national language」「officially recognised language」という語のまわり480字を切り出し、その中に English が入っているものを抜き出しました。
語だけで拾うと、国の公用語ではないものまで入ってきます。アルバニア憲法の「委員会・上訴部・公共委員の公用語はアルバニア語と英語」、コソボ憲法の「特別法廷と特別検察局の公用語はアルバニア語・セルビア語・英語」は、どちらも特定の司法機関の話なので外しました。スイス憲法の英訳には「English is not an official language of the Swiss Confederation(英語はスイス連邦の公用語ではない)」という注記が入っており、これも当然に外しています。
残ったのが19か国です。この19か国は、地域によって数が極端に偏っています。アフリカが12か国で、残り5地域を全部足しても7か国しかありません。
英語を公用語とする国はアフリカに12か国あり、地域別でいちばん多い
憲法に明記している19か国のうち、12か国がアフリカです。条文番号と、英語と並んでいる言語まで含めて並べます。
| 国 | 憲法の条文 | 条文が挙げている言語 |
|---|---|---|
| ウガンダ | 第6条 | 英語(スワヒリ語が第二公用語) |
| ナミビア | 第3条 | 英語のみ |
| ザンビア | 第258条 | 英語のみ |
| 南スーダン | 第6条 | 英語(「公用の実務言語」かつ全教育段階の教授言語) |
| ケニア | 第7条 | スワヒリ語・英語(国語はスワヒリ語) |
| エスワティニ | 第3条 | シスワティ語・英語 |
| カメルーン | 第1条 | 英語・フランス語(両者は同格と明記) |
| ルワンダ | 第8条 | キニヤルワンダ語・英語・フランス語 |
| レソト | 第3条 | ソト語・英語・コサ語・プティ語・手話 |
| セーシェル | 第4条 | クレオール語・英語・フランス語(条文の語は「国語」) |
| 南アフリカ | 第6条 | 11言語のひとつとして英語 |
| ジンバブエ | 第6条 | 16の「公認言語」のひとつとして英語 |
英語が単独の公用語になっているのは、ウガンダ・ナミビア・ザンビアの3か国だけです。あとは必ず現地語と並んでいます。南アフリカの11、ジンバブエの16という数字を見ると、「公用語」という語が、日本語で受け取る語感よりもずっと広い枠であることが分かります。
英語を公用語とする国はアジアに2か国、オセアニアに2か国しかない
人口の大きい国が並ぶアジアですが、憲法に「英語は公用語」と書いている国は2か国だけです。オセアニアも2か国、ヨーロッパも2か国、南北アメリカにいたっては1か国です。
| 地域 | 国 | 憲法の条文 | 条文が挙げている言語 |
|---|---|---|---|
| アジア | シンガポール | 第153A条 | マレー語・中国語・タミル語・英語の4公用語(国語はマレー語) |
| アジア | フィリピン | 第14編第7節 | フィリピノ語と、法律で別に定めるまでの英語 |
| オセアニア | パラオ | 第13編第1節 | パラオ語・英語(伝統的パラオ諸語が国語) |
| オセアニア | バヌアツ | 第3条 | ビスラマ語・英語・フランス語(国語はビスラマ語) |
| ヨーロッパ | アイルランド | 第8条 | アイルランド語が第一公用語、英語が第二公用語 |
| ヨーロッパ | マルタ | 第5条 | マルタ語・英語(国語はマルタ語) |
| 北米 | カナダ | 1982年憲法法(権利自由憲章)第16条 | 英語・フランス語(地位は同等と明記) |
アイルランド憲法第8条は「The English language is recognised as a second official language(英語は第二公用語として認められる)」という一文です。日常で英語が圧倒的に使われている国でも、憲法の序列ではアイルランド語が第一に置かれています。カナダは憲法だけでなく公用語法(Official Languages Act)第2条でも、英語とフランス語の地位の平等をあらためて定めています。
英語を公用語とする国に、カリブ海と中南米の国が1つも入らない理由
ジャマイカ、バハマ、バルバドス、トリニダード・トバゴ、ガイアナ、ベリーズ。英語で行政が回っている国がカリブ海には並んでいますが、憲法に「英語は公用語」と書いている国は、この地域にひとつもありません。
代わりに何が書いてあるか。これらの国の憲法で English が出てくるのは、ほとんどが議員の資格要件です。「議事に加われる程度に英語を話し、読むことができる者は、議員に選ばれる資格を持つ」という条文の形で、英語が前提として置かれています。
アンティグア・バーブーダ、ドミニカ国、グレナダ、セントルシア、セントビンセント・グレナディーンの各憲法は、いずれも上院議員と下院議員の両方について、この英語能力の要件を定めています。ガイアナ憲法第53条も同じ形です。トリニダード・トバゴ憲法は角度が違い、「英語を理解できない、または話せない者から通訳を付ける権利を奪ってはならない」という被告人の権利として書かれています。
ジャマイカ憲法(2023年改正版)、バハマ憲法(1973年)、バルバドス憲法(2026年改正版)の全文を検索すると、English という語が1回も出てきません。英語が唯一の行政言語として動いている国が、憲法ではその言語に一言も触れていない、という状態です。
英語を公用語とする国に、アメリカ・イギリス・オーストラリアは長らく入っていなかった
いちばん誤解が多いのがここです。英語のふるさとや、英語圏の代表と見なされている国ほど、法律に「英語は公用語」と書いていません。
| 国 | 憲法に英語の言語規定があるか | 法令で公用語と定めているか |
|---|---|---|
| アメリカ | 合衆国憲法に English という語は0回 | 2025年3月1日の大統領令が「English is the official language of the United States」と規定(第3条(a)) |
| イギリス | 憲法的法文に英語を公用語とする規定は無い | 英語については無い。ウェールズ語については2011年ウェールズ語法第1条(1)が「ウェールズ語はウェールズにおいて公的地位を持つ」と規定 |
| オーストラリア | 連邦憲法に English という語は0回 | 連邦の法令データベース(legislation.gov.au)で確かめる |
| ニュージーランド | 憲法的法文に英語を公用語とする規定は無い | 法令データベース(legislation.govt.nz)で確かめる |
アメリカの大統領令は2025年3月1日付です。合衆国が建国から約250年にわたって連邦レベルの公用語を持っていなかったことの裏返しでもあります。同じ大統領令は続けて、各省庁に対し「英語以外の言語で作成・提供している文書やサービスを修正・撤去・停止することは求められない(第3条(b))」とも書いており、多言語の行政サービス自体は残る形になっています。
イギリスはさらに分かりやすい形です。英語には規定が無く、法律が公的地位を与えているのはウェールズ語のほうでした。2011年ウェールズ語法(Welsh Language (Wales) Measure 2011)第1条(1)の一文は「The Welsh language has official status in Wales」。イギリスの法令データベースで「公用語」として名指しされている言語は、英語ではなくウェールズ語です。
なお、ニュージーランドとオーストラリアは、憲法的法文に言語規定がありません。法律の中身は、各国の法令データベース(ニュージーランドは legislation.govt.nz、オーストラリアは legislation.gov.au)で確かめられます。
英語を公用語とする国の数え方②は、公務での使用規定まで広げて48か国になる
「公用語」という語を使っていなくても、憲法が英語の使いどころを指定している国は多くあります。議会の議事、裁判の言語、教育の言語、憲法正文の言語。この29か国を足すと、合計48か国になります。
| 地域 | 国(29か国) | 憲法が英語に与えている役割の例 |
|---|---|---|
| アフリカ(8) | ボツワナ、ガンビア、リベリア、マラウイ、モーリシャス、ナイジェリア、シエラレオネ、タンザニア | ナイジェリア憲法第55条=国会の議事は英語で行う/モーリシャス憲法第49条=国民議会の公用語は英語/リベリア憲法第41条=立法府の議事は英語で締めくくる |
| アジア(8) | バングラデシュ、ブータン、キプロス、インド、マレーシア、パキスタン、スリランカ、東ティモール | インド憲法第343条=連邦の公務に英語を使い続ける/パキスタン憲法第251条=ウルドゥー語に置き換わるまで英語を公務に使える/スリランカ憲法第18条=英語は「連結語」 |
| 南北アメリカ(7) | アンティグア・バーブーダ、ドミニカ国、グレナダ、ガイアナ、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、トリニダード・トバゴ | 議員資格としての英語能力、被告人が通訳を受ける権利 |
| オセアニア(6) | フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、パプアニューギニア、サモア | フィジー憲法第3条=憲法は英語で制定し、意味が食い違えば英語版が優先/サモア憲法第54条=立法議会の討論はサモア語と英語/キリバス憲法第127条=両言語版が食い違えば英語版が優先 |
この29か国の中には、日本で「英語が公用語の国」として紹介されることの多いインド、ナイジェリア、マレーシア、パキスタンが全部入っています。どの国も、憲法の条文としては「英語は公用語である」とは書いていません。インドの場合、憲法第343条は当初「憲法施行から15年間は英語を使い続ける」という時限規定で、その後の法律で期限が外れた形になっています。
英語を公用語とする国と、英連邦56か国は重なっているようで重なっていない
「英連邦に入っている国=英語が公用語」と考えると、大きく外します。英連邦事務局の公式サイトは、加盟国を「アフリカ・アジア・アメリカ・ヨーロッパ・太平洋にまたがる56の独立国」と説明しています。
| 英連邦の地域区分 | 加盟国数 | そのうち憲法に「英語は公用語」と明記している国 |
|---|---|---|
| アフリカ | 21か国 | 10か国(カメルーン、ケニア、レソト、ナミビア、ルワンダ、セーシェル、南アフリカ、エスワティニ、ウガンダ、ザンビア) |
| アジア | 8か国 | 1か国(シンガポール) |
| カリブ海・アメリカ | 13か国 | 1か国(カナダ) |
| ヨーロッパ | 3か国 | 1か国(マルタ) |
| 太平洋 | 11か国 | 1か国(バヌアツ) |
| 合計 | 56か国 | 14か国 |
英連邦56か国のうち、憲法に「英語は公用語」と書いてあるのは14か国。4分の1にとどまります。逆方向のずれもあります。英連邦にはモザンビーク、ガボン、トーゴという、イギリスの旧植民地でない国が加盟しています。ルワンダも旧ベルギー領ですが、2015年憲法第8条で英語を公用語のひとつに入れました。
加盟していないのに英語を公用語にしている国もあります。アイルランド、フィリピン、パラオ、南スーダン、ジンバブエは、憲法に英語を書きながら英連邦の加盟国一覧には載っていません。ジンバブエは2003年に英連邦を離れています。
英語を公用語とする国だけでなく、国際機関の公用語としての英語も数え方が違う
国の数とは別に、国際機関が英語をどう扱っているかという数え方もあります。ここも数字が団体ごとに違います。
| 機関 | 公用語の数 | 英語の扱い |
|---|---|---|
| 国際連合 | 6言語 | アラビア語・中国語・英語・フランス語・ロシア語・スペイン語のひとつ |
| 欧州連合(EU) | 24言語 | 公用語のひとつ。公式サイトは「イギリスが離脱した後も英語はEUの公用語であり続ける」と明記 |
| 香港特別行政区 | 中国語と英語 | 基本法第9条=行政機関・立法機関・司法機関は中国語に加えて英語も公用語として使うことができる |
EUの公式ページによれば、英語がEUの公用語であり続けている理由は、アイルランドとマルタの公用語のひとつだからです。この記事の19か国リストにアイルランドとマルタが入っていることが、そのままEUの言語制度につながっています。香港は独立国ではないので、この記事の国数には入れていませんが、基本法第9条の書きぶりは「中国語に加えて英語も使うことができる」という許容の形でした。
英語を公用語とする国を調べるための定番の一次ソースが、2026年に1本消えた
この種の一覧を作るとき、長年いちばん使われてきた出典がCIAの『The World Factbook』でした。国ごとの Languages 欄に、どの言語が official なのかが並んでいる資料です。
その『The World Factbook』は終了しました。CIAは2026年2月4日付の公式記事で「One of CIA’s oldest and most recognizable intelligence publications, The World Factbook, has sunset(CIAで最も古く、最もよく知られた刊行物のひとつであるThe World Factbookは終了した)」と告知しています。編集部が2026年9月17日に該当URLへアクセスすると、国別データではなくこの終了告知が返ってきました。
代わりになるのは、各国の憲法本文そのものです。憲法は言語の地位を書く場所がほぼ決まっており(国旗・国章と同じ章)、条文番号ごと引用できるので、後から誰でも検算できます。英連邦の加盟国一覧は事務局の公式サイト、国際機関の公用語は各機関の公式ページ。この3つで、この記事の数字は全部たどれます。
なお日本の外務省も国・地域ごとの基礎データで言語を公表していますが、編集部が2026年9月17日にアクセスしたところ、該当ページはいずれもHTTP 403で本文を取得できませんでした。そのため、この記事では外務省の数値を根拠に使っていません。
英語を公用語とする国のリストを使うときに、気をつける3点
数字を持ち出す場面で、いちばん問題になりやすいところを3つにまとめます。
- 「公用語」と「よく通じる」は別の話。ナミビアは憲法で英語を唯一の公用語にしていますが、それは行政の言語の指定であって、国民の英語運用力の話ではありません。逆にオランダや北欧諸国は、憲法にも法律にも英語の規定がありません。
- 条文の語が国ごとに違う。「official language」「national language」「officially recognised language」「official working language」が、ほぼ同じ意味で使われています。セーシェルは「国語」、ジンバブエは「公認言語」、南スーダンは「公用の実務言語」。語で機械的に検索すると、国ごとに拾えたり拾えなかったりします。
- 並び順に意味がある国がある。アイルランド憲法第8条は、アイルランド語を「第一公用語」、英語を「第二公用語」と明示的に序列付けています。ウガンダ憲法第6条も、英語を公用語、スワヒリ語を第二公用語と書き分けています。
「英語を公用語とする国は何カ国か」と聞かれたら、数字を言う前に「憲法に書いてある国だけなら19か国」と条件を先に言うのが、いちばん食い違いが起きにくい答え方です。
英語を公用語とする国について、最後に確認しておくこと
この記事で出した数字を、根拠の場所とセットでもう一度並べます。すべて2026年9月17日に取得したものです。
| 数字 | 意味 | 根拠 |
|---|---|---|
| 19か国 | 憲法に「英語は公用語/国語/公認言語」と明記 | 現行憲法188本の全文検索と条文の読み取り |
| 12か国 | 19か国のうちアフリカの国 | 同上 |
| 3か国 | 英語が単独の公用語(ウガンダ・ナミビア・ザンビア) | 各国憲法第6条・第3条・第258条 |
| 29か国 | 公用語とは書かずに公務での英語使用を定めている国 | 現行憲法188本の全文検索と条文の読み取り |
| 48か国 | 19か国+29か国 | 上の2行の合計 |
| 62か国 | 48か国+アメリカ+憲法に規定が無い13か国 | 大統領令(2025年3月1日)と憲法全文検索 |
| 56か国 | 英連邦の加盟国数 | 英連邦事務局の公式サイト |
| 14か国 | 英連邦56か国のうち憲法に英語を明記している国 | 上の2つの突き合わせ |
| 6言語/24言語 | 国連/EUの公用語の数 | 国連公式サイト/EU公式サイト |
この記事に載せた国は、条文または公式の記述を編集部が実際に読めたものだけです。ニュージーランド・オーストラリアの法律の中身は、各国の法令データベースで確かめてください。憲法は改正されます。レソトは2025年版で公用語が5つに増え、アメリカは2025年に初めて連邦の公用語を持ちました。数字を引くときは、取得日をセットで書き残しておくと、後から自分で検算できます。

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