企業の英語研修費用は、厚生労働省の令和7年度「能力開発基本調査」でOFF-JTに支出した費用の労働者一人当たり平均額が2.0万円、産労総合研究所の2025年度調査で従業員1人あたりの教育研修費用が36,036円と公表されている。
ただし、この2つはどちらも研修費の総額であって、英語研修だけを切り出した金額ではない。
語学研修だけの平均単価を出している公的な統計はない(2026年9月21日時点)。
この記事は、厚生労働省・産労総合研究所・IIBC(一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会)が公表している調査結果を並べ直したものである。
数字はすべて2026年9月21日に各公式サイトで確認したもので、
企業の英語研修費用は、まず教育訓練費の全体像から見る
英語研修の予算を考えるときに最初に置く数字は、1人あたりいくら研修に使われているかである。
厚生労働省と産労総合研究所が、それぞれ別の方法で毎年この金額を公表している。
| 何の費用か | 1人あたり平均額 | いつの実績か | 出どころ |
|---|---|---|---|
| OFF-JT(通常の仕事を離れて行う教育訓練)に支出した費用 | 2.0万円 | 令和6年度 | 厚生労働省 令和7年度 能力開発基本調査 |
| 自己啓発支援に支出した費用 | 0.4万円 | 令和6年度 | 厚生労働省 令和7年度 能力開発基本調査 |
| 教育研修費用(従業員1人あたり) | 36,036円 | 2024年度 | 産労総合研究所 2025年度(第49回)教育研修費用の実態調査 |
同じ「1人あたりの研修費」でも、厚生労働省の2.0万円と産労総合研究所の36,036円では1.8倍ほど開く(編集部が割り算した概算)。
これは調査の対象がそもそも違うためである。
厚生労働省の能力開発基本調査は、常用労働者30人以上を雇用する企業が対象で、令和7年度は7,452企業を調べ、52.6%から回答があった。
産労総合研究所の調査は、上場企業および同社の会員企業から任意抽出した約3,000社が対象で、回答企業は159社だった(調査期間は2025年6〜7月)。
後者は上場企業の比率が高いため、金額が大きく出やすい。
企業の「英語研修だけの平均額」が公表されていない理由
日本の主要な研修費調査は、費目を「OFF-JT」「自己啓発支援」「教育研修費用」でくくっている。
このため、そこから語学分だけを抜き出す欄が、そもそも調査票に存在しない。
代わりに公表されているのは、語学研修を「実施したかどうか」の割合のほうである。
| 知りたいこと | 公表の有無(2026年9月21日時点) | 代わりに確認できる数字 |
|---|---|---|
| 英語研修1人あたりの平均費用 | 確認できず | 研修費全体の1人あたり平均額 |
| 英語研修の年間予算総額 | 確認できず | 企業規模別の1人あたり教育研修費用 |
| 語学研修を行った事業所の割合 | 公表あり | 厚生労働省 能力開発基本調査 |
| 英語教育施策の形態別の実施率 | 公表あり | IIBC 英語活用実態調査 |
| 英語試験の受験料 | 公表あり | IIBC 公式サイトの価格表 |
つまり英語研修費用は、「研修費全体の相場」と「語学が占める位置」を掛け合わせて読むしかない。
企業規模別に見た1人あたりの教育研修費用
産労総合研究所の2025年度調査は、規模別の金額も公表している。
同社の区分で、大企業・中堅企業・中小企業の3つに分けた数字である。
| 企業規模の区分 | 2024年度実績 | 前回調査 | 差(編集部が計算) |
|---|---|---|---|
| 大企業 | 39,553円 | 41,050円 | −1,497円 |
| 中堅企業 | 36,195円 | 32,268円 | +3,927円 |
| 中小企業 | 31,788円 | 31,087円 | +701円 |
| 調査計 | 36,036円 | 34,606円 | +1,430円 |
この調査での規模の差は、大企業と中小企業で7,765円だった(編集部が引き算した値)。
なお前回との差では、大企業だけが1,497円のマイナスで、中堅企業が最も伸びている。
回答159社の従業員規模の内訳は、1,000人以上が49社、300〜999人が50社、299人以下が60社である。
業種では製造業36.5%、非製造業36.5%と公表されている。
「大企業」「中堅企業」「中小企業」という区分名は、この調査の公表資料の表記をそのまま使った。
企業が支出したOFF-JT費用は、この5年でどう動いたか
厚生労働省の能力開発基本調査は2001年度から毎年行われており、時系列で追える。
直近5回分の、労働者一人当たりOFF-JT費用の平均額と、費用を支出した企業の割合を並べる。
| 調査年度 | OFF-JT費用の一人当たり平均額 | OFF-JTに費用を支出した企業の割合 |
|---|---|---|
| 令和7年度 | 2.0万円 | 50.1% |
| 令和6年度 | 1.5万円 | 49.4% |
| 令和5年度 | 1.5万円 | 49.2% |
| 令和4年度 | 1.3万円 | 46.3% |
| 令和3年度 | 1.2万円 | 45.9% |
令和7年度の2.0万円は、前回の1.5万円から0.5万円の上昇である。
一方で、OFF-JTか自己啓発支援のどちらかに費用を支出した企業は54.4%で、前回より0.5ポイント下がった。
払う企業は増えていないが、払う企業の1人あたり単価は上がった、という形になっている。
なお正社員向けのOFF-JT費用について、過去3年間で「増加した」と答えた企業は24.6%、「減少した」は6.9%だった。
今後3年間では「増加させる予定」が34.3%、「減少させる予定」が1.7%である。
企業のうち語学研修を実施しているのはどれくらいか
厚生労働省の事業所調査は、実施したOFF-JTの内容を20項目で聞いている。
この中に「語学・国際化対応能力」という項目がある。
| OFF-JTの内容 | 実施した事業所 | 今後実施したい事業所 |
|---|---|---|
| 新規採用者など初任層を対象とする研修 | 75.7% | 30.9% |
| マネジメント(管理・監督能力を高める内容など) | 46.9% | 35.5% |
| 法務・コンプライアンス | 39.9% | 24.2% |
| 業務を遂行するうえで有益なITリテラシー | 15.7% | 20.8% |
| プレゼンテーション・ディベート | 9.9% | 14.1% |
| 語学・国際化対応能力 | 5.1% | 12.9% |
語学は、20項目のうち実施率5.1%で下から3番目という位置にある。
ただし「今後実施したい」は12.9%で、実施率の2.5倍に広がる(編集部が割り算した概算)。
企業側が最も重要と考える能力・スキルを3つまで選ぶ設問でも、「語学(外国語)力」は正社員(50歳未満)で2.7%、正社員(50歳以上)で1.4%、正社員以外で2.4%にとどまっている。
企業はどんな形で英語研修をやっているのか
形態別の数字は、IIBCの「英語活用実態調査【企業・団体/ビジネスパーソン】2019」にある。
この調査は、TOEIC Programの公開テスト団体一括受験申込または団体特別受験制度(IPテスト)を利用した企業・団体を対象に、2017年1月から2018年8月にかけて行われた。
| 英語教育施策 | 実施している企業・団体 | 成果があったと答えた割合 |
|---|---|---|
| 研修機関からの講師派遣による社内研修 | 51.9% | 74.8% |
| 通信教育 | 44.9% | 約30% |
| eラーニング | 43.6% | 約30% |
| 海外への研修派遣 | 35.0% | 81.6% |
| 語学レベルに応じた配属 | 公表なし | 61.4% |
最も多いのは講師派遣による社内研修の51.9%で、つまり外部の研修機関に委託する形が主流である。
通信教育とeラーニングは実施率こそ4割を超えるが、成果があったという回答は「大きな成果があった」と「一定の成果があった」を合わせて30%程度にとどまる。
海外への研修派遣は、海外売上高比率によって実施率が大きく変わる。
海外売上高比率が0%の企業・団体では13.9%だが、20%以上の企業・団体では46.3%に達する。
企業が研修を委託している先の内訳
語学に限らず、企業が実施したOFF-JTをどこに頼んでいるかも、厚生労働省の事業所調査に出ている。
費用がどこへ流れているかを見る材料になる。
| 教育訓練機関の種類 | 正社員向け | 正社員以外向け |
|---|---|---|
| 自社 | 76.4% | 83.3% |
| 民間教育訓練機関(民間教育研修会社、民間企業主催のセミナー等) | 41.4% | 18.7% |
| 親会社、グループ会社 | 25.7% | 20.0% |
| 職業能力開発協会、労働基準協会、公益法人、その他業界団体 | 18.6% | 10.1% |
| 商工会、商工会議所、協同組合等の経営者団体 | 10.7% | 3.5% |
| 公共職業訓練機関 | 6.4% | 1.9% |
| 高等専門学校、大学、大学院 | 1.4% | 0.4% |
| 専修学校、各種学校 | 0.9% | 0.4% |
語学学校が含まれるのは「専修学校、各種学校」または「民間教育訓練機関」だが、この調査は語学と他分野を分けていないため、英語だけの委託先比率は読み取れない。
読み取れるのは、正社員向けOFF-JTの41.4%が民間の教育訓練機関を使っているという点である。
企業が負担する英語試験の受験料は公表されている
研修費本体と違い、試験の受験料は運営団体が価格表を公開している。
TOEIC Programを運営するIIBCの公表価格は次のとおりである。
| テストと申込方法 | 通常価格(税込) | 賛助会員価格(税込) |
|---|---|---|
| TOEIC L&R 公開テスト(紙の公式認定証あり) | 7,810円 | — |
| TOEIC L&R 公開テスト(紙の公式認定証なし) | 7,700円 | — |
| TOEIC L&R IPテスト | 4,230円 | 3,130円 |
| TOEIC L&R 公開テスト団体一括受験申込 | 7,810円 | 6,710円 |
| TOEIC S&W IPテスト(両方受験) | 9,215円 | 8,115円 |
| TOEIC S&W IPテスト(いずれか一方) | 6,285円 | 5,185円 |
| TOEIC S&W 公開テスト団体一括受験申込 | 10,450円 | 9,350円 |
社内で一斉受験するIPテストは、公開テストの7,810円に対して4,230円と、税込で3,580円低い。
個人が受ける場合のリピート割引は、2026年12月までの試験に使うと6,710円、2027年1月以降の試験に使うと7,150円になる(いずれも税込・紙の公式認定証ありの場合)。
企業が費用を負担している割合はどのくらいか
受講料を会社が出しているかどうかは、厚生労働省の事業所調査と個人調査の両方から読める。
自己啓発を支援している事業所が、何を支援しているかの内訳である。
| 労働者の自己啓発に対する支援の内容 | 正社員向け | 正社員以外向け |
|---|---|---|
| 受講料などの金銭的援助 | 74.7% | 57.6% |
| 自己啓発を通して取得した資格等に対する報酬 | 40.5% | 29.6% |
| 就業時間の配慮 | 39.2% | 37.8% |
| 教育訓練機関、通信教育等に関する情報提供 | 36.7% | 32.2% |
| 社内での自主的な勉強会等に対する援助 | 36.5% | 31.7% |
| 教育訓練休暇(有給・無給の両方を含む)の付与 | 16.5% | 13.5% |
支援をしている事業所のうち、受講料などの金銭的援助を出しているのは正社員向けで74.7%である。
ただしこれは「支援をしている事業所の中での割合」であって、全事業所に対する比率ではない。
働く側の希望も同じ方向を向いている。
自己啓発を行う上で会社から受けたい支援があるとした人は労働者全体で76.5%、正社員で82.5%、正社員以外で61.2%だった。
その内訳の1位は、正社員69.1%・正社員以外70.2%で「受講料などの金銭的援助」である。
逆に自己啓発を行う上での問題点としては、「費用がかかりすぎる」が正社員26.2%、正社員以外25.3%で挙がっている。
正社員の男女別では、男性25.8%に対して女性36.2%と開きがある。
企業の人材投資をGDP比で国際比較するとどうなるか
日本企業が研修にかける金額の水準は、厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析」で国際比較されている。
GDPに占める企業の能力開発費(OFF-JTにあたる費用)の割合である。
| 国 | 1995〜1999年 | 2000〜2004年 | 2005〜2009年 | 2010〜2014年 |
|---|---|---|---|---|
| 米国 | 1.94% | 2.13% | 2.03% | 2.08% |
| フランス | 1.45% | 1.51% | 2.00% | 1.78% |
| ドイツ | 1.34% | 1.34% | 1.29% | 1.20% |
| イタリア | 1.03% | 0.95% | 1.08% | 1.09% |
| 英国 | 2.23% | 2.01% | 1.11% | 1.06% |
| 日本 | 0.41% | 0.33% | 0.15% | 0.10% |
2010〜2014年で見ると、日本は0.10%で、米国の2.08%の約20分の1である(編集部が割り算した概算)。
日本の値は1995〜1999年の0.41%から一貫して下がっている。
この表の数値は平成30年版(2018年)の白書に掲載されたもので、最新期でも2010〜2014年の平均である。
表の数値は、厚生労働省が公表しているバックデータを編集部が小数第3位で四捨五入した。
企業が英語に求めている水準と、費用が向かう先
いくら払うかを決めるのは、どこまでの英語力を求めるかである。
IIBCの2019年調査では、企業・団体の82.6%が英語は重要なスキルだと答え、67.0%が今後強化が必要だと考えていた。
| 設問 | 回答 | 割合 |
|---|---|---|
| 社員・職員に求める英語の目標水準 | 英語で行われる会議(テレカンを含む)で議論できる | 19.9% |
| 同上 | 取引先/海外支店とメールでやり取りができる | 15.5% |
| 同上 | 取引先/海外支店と電話でやり取りができる | 15.5% |
| 現在の英語の使われ方 | 海外との取引がある部署だけで使われる | 61.0% |
| 3年後の見通し | 海外との取引がある部署だけで使われる | 38.8% |
英語が使われる範囲は、3年後には61.0%から38.8%へ狭まると予測されている、つまり取引のない部署にも広がるという見立てである。
一方で、英語教育の課題も同じ調査で聞かれている。
最も多かったのは「対象者のやる気や積極性を引き出せない、維持できない」で66.3%だった。
次いで「レベルにばらつきがあり、初級者のボトムアップができていない」が41.5%、「社員・職員の業務過多のため、研修時間がとれない」が40.2%と続く。
働く側の課題では「仕事で英語を使う機会が少ない」が50.4%で最多である。
企業の英語研修費用で最後に確認しておくこと
ここまでの数字を、判断に使える形でまとめておく。
- 英語研修だけの1人あたり平均費用を示した公的統計はない(2026年9月21日時点)
- 研修費全体では、OFF-JT費用の労働者一人当たり平均額が2.0万円(厚生労働省・令和6年度実績)
- 別調査では、従業員1人あたりの教育研修費用が36,036円(産労総合研究所・2024年度実績)
- 規模別では大企業39,553円・中堅企業36,195円・中小企業31,788円(産労総合研究所)
- OFF-JTで「語学・国際化対応能力」を実施した事業所は5.1%、今後実施したいは12.9%(厚生労働省)
- 英語教育施策で最も多いのは講師派遣による社内研修の51.9%(IIBC・2019年)
- TOEIC L&RのIPテストは1人4,230円(税込)、賛助会員価格は3,130円(税込)
- 自己啓発を支援している事業所のうち、受講料などの金銭的援助を出しているのは正社員向けで74.7%
なお、ここに並べた研修費の数字はいずれも語学以外の研修も全部含んだ総額である。
英語研修の見積もりを取るときは、この金額をそのまま英語分として当てはめないほうがよい。
- 厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」(令和8年7月31日公表/令和7年10月1日時点の状況を調査/企業調査7,452企業・事業所調査7,194事業所・個人調査20,127人)── 確認日2026年9月21日
- 厚生労働省「令和4年度 能力開発基本調査」(令和5年6月30日公表)── 過去の一人当たり平均額の確認に使用。確認日2026年9月21日
- 厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析」第2-(1)-13図 GDPに占める企業の能力開発費の割合の国際比較(バックデータ)── 確認日2026年9月21日
- 産労総合研究所「2025年度(第49回)教育研修費用の実態調査」(2025年10月8日発表/調査期間2025年6〜7月/回答159社)── 確認日2026年9月21日
- IIBC(一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会)「英語活用実態調査【企業・団体/ビジネスパーソン】2019」(調査期間2017年1月〜2018年8月)およびIIBC NEWSLETTER 2020年3月号の調査結果解説 ── 確認日2026年9月21日
- IIBC「TOEIC Listening & Reading Test 受験料・支払方法」および「団体で受験する際の受験料について」── 確認日2026年9月21日
「編集部が計算した」と書いた差額・倍率は、上記の公表値どうしを引き算・割り算しただけのもので、各機関が公表した数値ではない。
英語研修の費用は、語学単独の平均額が公表されていない以上、研修費全体の相場と語学の実施率を突き合わせて見積もるしかないのが現状である。

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