
留学エージェントの費用は、各社が公表している金額を並べると「手続きの代行料」と「学校や滞在先へ渡る実費」の二階建てになっている。代行料として公表されている金額は、短期語学留学の申し込み金30,000円(非課税)から、長期や大学出願の88,000円(税込)までが実際にウェブ上に出ている。いっぽう実費側は語学留学12週間で98万円〜217万円(授業料+滞在費+食費、国による)と公表されており、桁がひとつ違う。
この記事は、留学事業者が自社サイトで公表している料金表、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の海外留学情報サイト、消費者庁のニュースリリース、一般社団法人留学サービス審査機構(J-CROSS)の認証基準、一般社団法人海外留学協議会(JAOS)の調査、および米国AIRCの調査を並べ直したもの。数字は2026年9月21日に各公式サイトで確認した。確認が取れなかったものは載せていない。税込か税抜かは出典の表記どおりに書き、こちらで換算し直してはいない。
留学エージェントの費用は「代行料」と「実費」に分かれる
JASSOの海外留学情報サイト「留学あっせん業者(留学エージェント)の利用について」は、契約時に確かめる項目のひとつとして「支払経費に含まれるものと含まれないものの明細」と「手数料」を別々に挙げている。つまり公的な案内の側でも、代行料と実費は別の行として見積書に並ぶものとして扱われている。
| 区分 | 中身 | 誰に渡るか |
|---|---|---|
| 代行料(手数料) | 申し込み金、プログラム費、手続代行手数料、ビザ申請サポート料、翻訳料 | 留学エージェント |
| 実費(学費等) | 授業料、登録料、教材費、設備利用費 | 海外の学校 |
| 実費(滞在) | ホームステイ費、寮費、食費、滞在手配費 | 滞在先・手配先 |
| 実費(渡航) | 航空運賃、海外留学保険料、ビザ申請料、パスポート申請料、健康診断受診料 | 航空会社・保険会社・各国政府ほか |
JASSOが挙げている確認項目には、このほか「代行業務の範囲と責任範囲」「金額の変更、追加の可能性(追加経費や為替変動による支払い金額の変更)」「費用の支払い方法(支払い時期、支払い先)」も並ぶ。金額そのものよりも、どの行が誰への支払いなのかを分けて読むことが求められている。
留学エージェントが公表している代行料の実額
代行料を金額まで書いている事業者は多くない。2026年9月21日に確認できた範囲で、自社サイトに金額を掲示していたものを下に並べた。順位づけではなく、公表されている数字をそのまま写したものである。
| 公表元(出典ページ) | 項目 | 公表額 |
|---|---|---|
| 留学ジャーナル「語学留学プログラムサポート内容」 | 短期語学留学(8週間以内)お申し込み金 | 30,000円(留学費用の一部金・非課税) |
| 同上 | 長期語学留学(9週間以上)プログラム費 | 88,000円(税込) |
| 留学サイトドットコム「サービス内容と料金」 | 提携外の語学学校の留学手続代行手数料 | 33,000円(税込) |
| 同上 | 提携外の大学・カレッジ・専門学校等の手続代行手数料 | 88,000円(税込) |
| 同上 | 同行家族のビザ申請サポート(1名) | 11,000円(税込) |
| 同上 | ビザ申請用日英翻訳(1通) | 4,400円(税込) |
留学サイトドットコムは、提携校への申し込みであればカウンセリング、見積り、学校への申込み手続き、滞在先・空港出迎えの手配、学生ビザ申請サポートを無料と明記している。同じ会社でも「提携校なら0円、提携外なら33,000円または88,000円(いずれも税込)」と二段階になっている点が、料金表を読むときの分かれ目になる。
金額はいずれも各社が自社サイトに掲示していた2026年9月21日時点の表記で、税込・非課税の別も公表どおりに写した。留学ジャーナルでは、学生ビザ代行手数料・学生ビザ申請料・航空運賃・海外留学生保険などの実費が別途かかる。上の代行料に実費は含まれていない。
留学エージェントが無料で成り立つ仕組みは学校側の手数料
代行料を0円としている事業者があるのは、学校側がエージェントへ手数料を支払う商習慣があるため。この手数料の実態を数字で出している調査として、米国のAIRC(The Association of International Enrollment Management)が2026年3月から4月に実施し、国際教育の業界メディアICEF Monitorが2026年7月に紹介した調査がある。回答したのは米国の61機関(中等学校・大学・短期大学・集中英語プログラム)。
| 手数料の決め方 | 回答機関の割合 | 最も多かった水準 |
|---|---|---|
| 在籍後に支払う固定額 | 48% | 1人あたりUS$2,000〜US$3,500 |
| 純授業料に対する割合 | 39% | 10%〜15% |
| 総授業料に対する割合 | 6% | 15% |
同じ調査では、手数料の対象となる期間を「最初の2学期分まで」とした機関が51%、「1学期のみ」が18%。また授業料を全額受け取ってからエージェントへ手数料を支払う機関が67%だった。いずれも米国の機関を対象にした調査であり、日本や他国の学校に同じ比率が当てはまるかどうかは、この資料からは言えない。
留学エージェントを通しても通さなくてもかかる実費の公表額
代行料が数万円なのに対し、実費は百万円単位になる。留学ジャーナルが自社サイトの「留学の費用」で公表している語学留学の目安は下のとおりで、いずれも「授業料+滞在費+食費」の合計。航空運賃と保険料は含まれていない。
| 国 | 12週間 | 24週間 | 48週間 |
|---|---|---|---|
| アメリカ | 144万〜217万円 | 274万〜349万円 | 528万〜838万円 |
| カナダ | 98万〜125万円 | 186万〜248万円 | 355万〜494万円 |
| オーストラリア | 112万〜135万円 | 217万〜267万円 | 411万〜530万円 |
| ニュージーランド | 97万〜112万円 | 190万〜217万円 | 371万〜426万円 |
| イギリス | 113万〜188万円 | 208万〜358万円 | 413万〜712万円 |
| アイルランド | 96万〜148万円 | 186万〜282万円 | 362万〜517万円 |
| マルタ | 102万〜144万円 | 198万〜277万円 | 380万〜550万円 |
同じページは大学留学(公立大学の9ヵ月)の目安も出しており、アメリカの大学で760万円、イギリスで934万円、カナダで743万円。高校留学(公立校のアカデミックイヤー)はカナダ386万円、オーストラリア395万円、ニュージーランド326万円。ワーキングホリデーは1年間の総費用として124万〜154万円と書かれており、こちらにはビザ手続き費用・航空運賃・留学保険・滞在費・食費が含まれると明記されている。
代行料88,000円(税込)を語学留学48週間の下限355万円(カナダ)と並べると、代行料は総額のおよそ2.4%にあたる。これは公表された2つの数字を編集部が割って出した概算で、出典に書かれている数字ではない。
留学エージェントの見積書では為替レートが金額を動かす
見積書の円建て金額は、事業者が使う為替レートで変わる。留学ジャーナルは費用例に使ったレートを明記しており、カナダの例はCA$1=115円、アメリカの例はUS$1=158円だった。
| 公表されている費用例 | 現地通貨 | 公表レート | 公表されている円額 |
|---|---|---|---|
| ILSC Vancouver(3ヵ月・週24レッスン)授業料 | CA$5,320 | CA$1=115円 | — |
| 同・滞在費+食費(ホームステイ1日2食付き) | CA$4,150 | CA$1=115円 | — |
| 同・合計 | CA$9,470 | CA$1=115円 | 約109万円 |
| Wichita State University(9ヵ月)授業料・本代ほか | US$24,010 | US$1=158円 | — |
| 同・滞在費+食費 | US$13,840 | US$1=158円 | — |
| 同・合計 | US$37,850 | US$1=158円 | 約598万円 |
同じCA$9,470でも、レートがCA$1=100円なら947,000円、CA$1=130円なら1,231,100円になる。差は284,100円で、公表されている代行料88,000円(税込)の3倍を超える。この3つの円額は、公表されている現地通貨額に編集部が仮のレートを掛けて計算したもので、出典に載っている数字ではない。
消費者庁は2010年7月15日のニュースリリースで、為替について「海外の受入先に入学金等を外貨で支払う場合には、為替変動のリスクがあるため、為替レートに一定のパーセントを上乗せして請求されることがありますが、そのパーセントは事業者によって様々です」と書いている。
留学エージェントとの契約前に公的機関が確認を求めている9項目
JASSOの海外留学情報サイトは、契約内容・料金体系・責任の範囲・免責事項として確認する項目を9つ挙げている。金額の話ではないが、見積書の金額が後から動く余地はここに書かれている。
- 代行業務の範囲と責任範囲(どこまでを業者が代行し、どこからが本人か。複数業者が関与するときはその分担)
- 支払経費に含まれるものと含まれないものの明細
- 申し込みの取り消し、中途解約、サービス内容の変更、不可抗力による中断などに関する規約(解約期限・解約料を含む)
- 金額の変更、追加の可能性(追加経費や為替変動による支払い金額の変更)
- 費用の支払い方法(支払い時期、支払い先)
- 手数料
- 奨学金制度・割引制度がある場合は、その合否決定時期と契約時期、合格者と不合格者それぞれが支払うべき金額
- 事故などの問題が発生した場合の責任の所在、問題解決方法
- 以上の契約内容を明記した契約書の作成と利用者への交付
留学エージェントをめぐる相談件数として公表されている数字
消費者庁は2010年7月15日のニュースリリース「留学等あっせんサービスをめぐるトラブルと消費者へのアドバイス」で、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)に登録された留学等あっせんサービスの相談件数を公表している。金額そのものではないが、代金の払い方と返し方が相談の中心にある点が読み取れる。
| 年度 | 相談件数 | 注記 |
|---|---|---|
| 2005年度 | 532件 | 参考扱い |
| 2006年度 | 509件 | 参考扱い |
| 2007年度 | 612件 | 参考扱い |
| 2008年度 | 1,021件 | 参考扱い。破産手続廃止が決定した事業者に係る相談を含む |
| 2009年度 | 443件 | 「留学あっせんサービス」「外国留学」での検索 |
| 2010年度 | 129件 | 2010年7月11日までの登録分 |
同リリースは2008年度以前について「検索条件が変更されており、2008年度以前のデータとの接続ができないことから、参考扱いとしている」と明記しているため、6年分をそのまま増減として読むことはできない。2009年度の主な相談内容として挙がっているのは、解約に伴う相談(解約料の説明を受けていない、解約料が高額である、申込金は返金しないと言われた等)、業者の信用性、契約が履行されないという相談、契約内容の相談、契約の申込みに関する相談の5つである。
解約料については、同リリースに「キャンセル料として契約金額の全額や90%など高額な請求をされている事例が見られます」という記述がある。あわせて、キャンセル料が法外な場合は消費者契約法により合理的な金額を超える部分が認められないこと、クーリング・オフは事業者の自主的な取組みとして契約書に規定を設けている場合等に限られることも書かれている。
留学エージェントの前払金と解約に関する業界基準の数字
J-CROSS(一般社団法人留学サービス審査機構)は2011年11月に設立された第三者認証の団体で、JAOS・CIELという事業者団体とNPO法人留学協会という消費者団体が関わっている。その留学サービス認証基準は大項目Ⅰ〜Ⅳの4つで構成され、認証基準の本体にあたるⅢの下に7つの細目が置かれている。お金に関する条文は次のとおり。
| 条文の中身(J-CROSS認証基準より) | 数字 |
|---|---|
| 消費者に学費等の支払いを請求しないと定めた期間(ビザ発行等の対価を除く) | 出発日の90日前まで |
| 保全措置を講じる場合に必要な保全額 | 学費等の総額の半分以上 |
| 契約を解除できる期間(渡航日の30日前、ピーク時は40日前以降の日を除く) | 契約締結日から起算して8日を経過する日まで |
| 契約書の交付時期 | 契約の締結後、速やかに |
この90日前ルールを満たす方法として基準が挙げているのは、一定の健全な財務状況であること、学費等を海外機関に送金するまで代金を請求しない取引形態であること、学費等の送金を代理しない取引形態であること、供託・信託・保証金制度等により学費等の総額の半分以上の額を保全する措置を講じていること、のいずれか。認証事業者一覧に社名が載っていたのは18件で、これは2026年9月21日に一覧ページを編集部が数えたもの。ページ上に社数の明記はない。
留学エージェント経由も含めた日本人留学の規模
費用の相場を考えるとき、母数がどれくらいかも公表されている。JAOS(一般社団法人海外留学協議会)が2026年5月25日に発表した「日本人留学生数調査2025」は、加盟する留学事業者41社の回答をもとにした数字である。
| 区分 | 2025年の人数 |
|---|---|
| 中学・高校・自治体主催の海外教育旅行 | 117,156人 |
| 大学・専門学校主催の海外教育旅行 | 21,265人 |
| 海外教育旅行 合計 | 138,421人 |
| 個人留学(語学留学・ワーキングホリデー・正規留学など) | 30,510人 |
| 総計 | 168,931人 |
発表では海外教育旅行が全体の約82%を占めるとされ、渡航先はオーストラリアが32,727人、台湾が28,618人で上位。上の表の内訳を足すと138,421人と30,510人で総計168,931人になり、発表値と一致する(この突き合わせは編集部が計算したもの)。この調査は加盟41社の回答に基づくため、日本全体の留学者数そのものではない。
留学エージェントの費用と並べて見る公的な支援額
支払う側の金額だけでなく、公的に支給される側の金額も公表されている。JASSOの海外留学支援制度(協定派遣)は、2026年9月21日に確認した時点で次の月額を掲示している。
| 地域区分 | 奨学金の月額 |
|---|---|
| A地区 | 12万円 |
| B地区 | 11万円 |
| C地区 | 9万円 |
| D地区 | 8万円 |
あわせて渡航支援金として、一定の家計基準を満たす者に16万円、一定の派遣期間を満たす者に1万円が示されている。A地区の月額12万円を3ヵ月受け取ると36万円で、これは語学留学12週間の目安の下限(ニュージーランド97万円)のおよそ3分の1にあたる。この対比は公表されている2つの数字を編集部が並べたもので、協定派遣は大学等の交流協定に基づく派遣が対象のため、個人で留学エージェントに申し込む場合とは制度が別である。
留学エージェントの費用で最後に確認しておくこと
- 公表されている代行料は、短期語学留学の申し込み金30,000円(非課税)、長期語学留学のプログラム費88,000円(税込)、提携外校の手続代行手数料33,000円/88,000円(いずれも税込)、同行家族のビザ申請サポート11,000円(税込)、ビザ申請用日英翻訳4,400円(税込)
- 実費側は語学留学12週間で98万〜217万円、48週間で355万〜838万円(授業料+滞在費+食費、国による)
- 学校側が払う手数料は、米国61機関の調査で固定額US$2,000〜US$3,500が48%、純授業料の10〜15%が39%
- 為替レートは事業者が明記している(公表例はCA$1=115円、US$1=158円)
- J-CROSS認証基準は出発日の90日前まで学費等を請求しないこと、保全するなら総額の半分以上と定めている
- 消費者庁はキャンセル料として契約金額の全額や90%を請求された事例があると公表している
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)海外留学情報サイト「留学あっせん業者(留学エージェント)の利用について」(2026年9月21日確認)/独立行政法人日本学生支援機構「海外留学支援制度(協定派遣)」奨学金月額・渡航支援金(2026年9月21日確認)/消費者庁ニュースリリース「留学等あっせんサービスをめぐるトラブルと消費者へのアドバイス」平成22年7月15日(PIO-NET相談件数2005〜2010年度、2026年9月21日確認)/一般社団法人留学サービス審査機構(J-CROSS)「留学サービス認証基準(ガイドライン)」および「認証事業者一覧」(2026年9月21日確認)/一般社団法人海外留学協議会(JAOS)「日本人留学生数調査2025」2026年5月25日発表(2026年9月21日確認)/株式会社留学ジャーナル「語学留学プログラムサポート内容」「留学の費用」(2026年9月21日確認)/留学サイトドットコム「サービス内容と料金」(2026年9月21日確認)/AIRC(The Association of International Enrollment Management)が2026年3〜4月に実施した米国61機関への調査、ICEF Monitor 2026年7月掲載記事(2026年9月21日確認)。金額の税込・税抜・非課税の別は出典の表記どおりに記載し、換算し直していない。編集部が計算した箇所はその旨を本文に明記した。
留学エージェントの費用は、代行料だけを見ると0円から88,000円(税込)という狭い幅に収まる一方、同じ見積書に載る実費は百万円単位で動く。公表されている数字を並べる限り、金額の大きさを決めているのは代行料ではなく、渡航先・期間・為替レート・支払い時期の4つだった。見積書を受け取ったときは、どの行が誰への支払いなのか、どのレートで円に直されているのか、いつ請求が来るのかを分けて読むと、公表されている数字との突き合わせができる。
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