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シャドーイングの効果が出るまでの期間|研究データで分かっていること

シャドーイングの効果が出るまでの期間は、研究では「何を測ったか」で答えが変わります。先に動くのは復唱力(聞いた音をそのまま言い直す力)で、リスニングの得点はそのあとに、しかも人によって差の出る形で動きます。

この記事は、日本国内で公表されているシャドーイングの実証研究を、期間・回数・参加人数・測った指標・結果の順に並べたものです。数字はすべて査読誌・大学の研究紀要・日本英語検定協会の研究助成報告書の原文から、2026年9月7日に取得しました。

目次

シャドーイングの効果が出るまでの期間は、指標ごとに違う

研究を横に並べると、同じ訓練でも指標によって動き出す時期がはっきり違います。復唱力は数日の集中訓練でも差が出ますが、リスニングテストの得点は数か月かけても有意にならない検証があります。

測っているもの 動きが出た最短の記録 出典
復唱力(再生率) 6日間の集中授業(午前2時間)の1回目→2回目で大きく伸長 玉井(2002)
構音速度(読み上げの速さ) 同じ6日間の集中授業で有意差あり(差は大きくない) 玉井(2002)
リスニング得点 5日間連続90分の講座で有意(ただし5名の群) 鈴木(第19回研究助成)
リスニング得点 週1回・13回の授業で30点満点中2.00点の伸び 大縄(2018)
語彙力 6日間では群間に有意差なし 玉井(2002)
英語の数字記憶スパン 6日間では差が見られなかった 玉井(2002)

「シャドーイングの効果が出るまで◯か月」という単一の答えは、研究側からは出ていません。出ているのは「この期間・この回数で、この指標がここまで動いた」という個別の記録です。

シャドーイングの効果を測った主な研究と、その期間の一覧

この記事で扱う研究を先に一覧にします。期間の書き方が研究ごとに違う点にも注目してください。

研究 対象 期間・回数 測ったもの 結果
玉井健(2002)講演 学生 6日間・午前2時間の集中授業 リスニング/語彙/復唱力/構音速度/数字記憶スパン 復唱力が最も大きく変化。リスニングは「かろうじて有意」
玉井健(1992年の指導実験・2002年講演で報告) 学習者2群 3か月 SLEP TESTのリスニング シャドーイング群の中位・下位群に有意な伸長
鈴木久実(第19回研究助成・実証授業1) 高校生27名 5日間連続90分 GTECのリスニング 未知教材のシャドーイング群とリスニング群で有意
鈴木久実(同・実証授業2) 高校3年112名 1学期間・16〜18回 GTECのリスニング リスニングのみの群だけが有意
鈴木久実(同・実証授業3) 高校3年114名 9月〜12月中旬・13〜15回 英検2級のリスニング 3群とも有意な向上なし
濱田陽(2009) 学習者 13回の訓練 リスニングとメタ認知ストラテジー 易しい教材の群で有意な伸長
大縄道子(2018) 大学生19名 週1回・13回・毎回約40分 英検リスニング30問/再生率 どちらも有意に向上

期間は「日」「回」「学期」「か月」が入り混じっています。比べるときは日数ではなく回数で見るほうが、研究のあいだで揃います。

シャドーイングを6日間集中でやった実験では、復唱力が先に動いた

玉井健(神戸市外国語大学)が2002年9月23日の日本通訳学会第3回年次大会で行った基調講演の書き起こしに、集中訓練の結果が5つの指標つきで載っています。

設計は、午前中2時間のシャドーイングを6日間。1日目に説明と事前データ、4日目に2回目、6日目に3回目のデータを取り、シャドーイングの説明だけを受けた統制群と比べる形です。

指標 6日間での変化(原文の記述)
復唱力 「一番劇的に変化」。1回目から2回目でぐんと伸び、2回目から3回目は伸びが見られなかった
構音速度 有意差が出た。ただし「大きくはありません」
リスニング力 「かろうじてですが有意な変化」
語彙力 両群とも平行。群間の有意差なし
英語数字記憶スパン 思ったような差は見られなかった

同じ6日間で、伸びる指標と動かない指標がはっきり分かれています。短期間で手応えとして感じられるのは、リスニングの理解ではなく「口が回るようになった」側だと読めます。

ここが分かれ目

同じ講演で、シャドーイングの再生率とリスニングテストの得点の相関は0.285と低かったと報告されています。シャドーイングがうまくなったことと、テストの点が上がったことは、同じ物差しではありません。

シャドーイングを3か月続けた指導実験では、伸びた層が限られていた

同じ講演で、1992年に行った3か月の指導実験も報告されています。シャドーイングを教える群とディクテーションを教える群に分け、同じ教材で授業をして3か月後にSLEP TESTを実施した設計です。

結果は、シャドーイング群では下位群だけが突出して伸び、統計的には中位群と下位群で有意な伸長が確認されました。ディクテーション群は上位・中位・下位が似た動きでした。

玉井はこの結果を、シャドーイングが語彙や文法といった知識面ではなく、リスニングの技術や方略の側に働きかけているためではないかと説明しています。もともとの得点が高い層ほど、3か月では差が出にくいということになります。

シャドーイングを週1回・13回続けた大学の授業では、30点満点で2.00点動いた

大縄道子「外国語教授法としてのシャドーイング活動の効果」(石巻専修大学研究紀要 第29号 73〜82ページ、2018年3月)は、期間と伸び幅の両方が数字で出ている、数少ない報告です。

対象は授業を受講した19名(3年生1名・2年生18名、男子13名・女子6名)。週1回パソコン教室で行い、初回と最終回を除く13回の授業の前半約40分をシャドーイング活動に充てています。

測ったもの 事前 事後 差 有意水準
リスニングテスト(実用英語技能検定の30問・30点満点) 14.47点 16.47点 +2.00点 p = .044(5%水準で有意)
シャドーイング再生率 57.50% 75.02% +17.52ポイント p < .01(1%水準で有意)

再生率は17.52ポイント動いたのに対し、リスニングは30点満点で2.00点です。同じ13回の訓練でも、伸び幅の大きさは指標によって桁が違います。

シャドーイングを1学期間やっても有意な伸びが出なかった検証もある

日本英語検定協会の第19回研究助成に採択された鈴木久実(東京都立高校教諭)の報告書は、3回の実証授業を行い、うまくいかなかった回もそのまま載せています。中立に読むなら、この報告は外せません。

実証授業 設計 群と人数 群内のt検定
1回目(短期間) 5日間連続90分・LL教室 ①導入時にシャドーイング5名
②復習時にシャドーイング6名
③リスニングのみ16名
① t = -5.303, df = 4, p = .006(有意)
② p = .313(有意差なし)
③ t = -2.321, df = 15, p = .035(有意)
2回目(長期間) 1学期間・普通教室・処置16〜18回 ①未知教材40名
②既知教材35名
③リスニングのみ37名
① p = .145(有意差なし)
② t = -0.742, df = 34, p = .463
③ t = -3.809, df = 36, p = .001(有意)
3回目 9月〜12月中旬・処置13〜15回 ①read and look-up 36名
②シャドーイング38名
③repetition 40名
① p = .432
② p = .338
③ p = .741
いずれも有意な向上なし

2回目では、シャドーイングをした2群ではなく、リスニングだけをした群が有意に伸びています。3回目は3群とも動きませんでした。教室で1学期間続けても、テストの得点が有意に動かない結果は現実に出ています。

報告書には、1回目・2回目とも分散分析では全群でテスト成績が統計上向上した一方、処置による違い(交互作用)は有意ではなかったと書かれています(1回目 F(2, 24) = .726, p = .494/2回目 F(2, 109) = 1.374, p = .257)。

シャドーイングは教材の難しさで結果が変わる(13回の訓練で検証)

濱田陽の研究(Second Language 第8巻・2009年、J-STAGE公開)は、訓練用テキストの難易度が結果を左右するかを調べたものです。難易度の異なる2種類・計26のauthentic materialと15項目の質問紙を使っています。

13回の訓練後に有意な伸長が確認されたのは、易しい教材を使った集団でした。リスニングのメタ認知ストラテジーにも訓練後の変化が見られたと報告されています。

期間より先に決まるもの

同じ13回でも、教材が難しすぎる側では有意な伸長が出ていません。「何か月やるか」より前に「その音源についていけているか」が結果を分けたことになります。

シャドーイングの伸びは、途中から鈍化すると報告されている

玉井は講演のまとめで、シャドーイングの効果について5点を挙げています。期間の話に直接関わるのは第3と第4です。

まとめ 内容(要旨)
第1 入力音声を同時に、より正確に復唱する技術が向上する
第2 語彙・文法という知識面だけでなく、音韻ループの活性化を狙った技術的なアプローチが可能
第3 一定のレベルまでは比較的早い伸長が期待できるが、それ以降は鈍化する傾向がある
第4 構音速度の訓練効果は早い段階で見られるが長続きしない可能性があり、維持には継続的な訓練が要るかもしれない
第5 リスニング能力は、知識だけでなく作動記憶の機能にかかわる能力でもある

第4について、玉井は「短期的集中的な実験では伸長が見られたが、週1回の長期的な指導では構音速度の有意な伸長は見られなかった」とも述べています。同じ総時間でも、まとめてやるか薄く伸ばすかで結果が変わった実測です。

シャドーイングの期間は「週」ではなく「回」で数えられている

研究側の期間表記を並べると、日数より処置回数が主役です。ここは、目安を作るときに実務上いちばん役に立つところです。

研究 回数の書き方 1回あたりの長さ
玉井(2002)集中授業 6日間 午前2時間
鈴木(実証授業1) 5日間連続 90分
鈴木(実証授業2) 16回・17回・18回 授業内の活動(明記なし)
鈴木(実証授業3) 13回・15回・15回 授業内の活動(明記なし)
濱田(2009) 13回 明記なし
大縄(2018) 13回(週1回) 授業前半 約40分

有意な伸びが出た報告に共通しているのは、13回前後という回数です。ただし同じ13〜15回でも有意にならなかった検証(鈴木の実証授業3)があるため、回数だけで結果が決まるとは言えません。

シャドーイングについて、研究が答えていないこと

ここは正直に書きます。今回読んだ範囲の一次資料では、次の3つに答えは書かれていませんでした。

  • 独学で1日15分やった場合に何か月で何点上がるか。取り上げた研究はいずれも授業や集中講座の枠内で行われており、独学の条件で期間と伸び幅を測ったものは見つかりませんでした
  • TOEICやTOEFLのスコアが何点上がるか。使われているのはSLEP TEST・GTEC・英検のリスニング問題で、TOEICやTOEFLのスコアで前後を比べた報告は今回の範囲にありません
  • 効果が消えるまでの期間。構音速度について「長続きしない可能性」に触れた記述はありますが、中止後に何か月で戻るかを測った数字はありません

世の中で見かける「シャドーイングは3か月で効果が出る」という数字に、今回たどれた一次資料はありませんでした。研究が出しているのは、上の表にある個別の条件と結果だけです。

シャドーイングの効果を自分で測るなら、再生率と回数を記録する

研究がリスニング得点より先に動かした指標は、いずれも自分で測れるものでした。大縄(2018)は自分の音声を録音して提出させ、再生率を採点する形をとっています。

記録するもの 研究での測り方 個人で代用するなら
再生率 録音した音声を原スピーチと突き合わせて再生できた割合を採点 同じ音源を月1回録音し、言えなかった語を数える
構音速度 40語の単語を並べて読み終わりまでの秒数を計測(順番を入れ替えて記憶の影響を除く) 同じ長さの文章の音読タイムを測る
処置回数 研究では16回・13回のように回数で管理 日数ではなく「やった回数」で数える

研究の設計をそのまま真似する必要はありませんが、測る対象を最初にひとつ決めておくと、伸びていないのか、測っていないだけなのかが切り分けられます。

シャドーイングの効果と期間のまとめ

今回並べた一次資料から言えるのは、次の3つです。

1つ目は、復唱力と構音速度は数日〜13回程度の訓練で有意に動いた記録があること。2つ目は、リスニングテストの得点は13回前後で30点満点中2.00点という報告がある一方、1学期間かけても有意にならなかった検証があること。3つ目は、伸びる層が中位・下位に偏った報告があり、出発点の得点で結果が変わることです。

この記事の数字の扱い方

数値はすべて2026年9月7日に、各論文・報告書のPDF原文から取得したものです。p値・人数・点数は原文のまま写しており、編集部による換算や丸めは行っていません。研究ごとに参加人数・教材・テストが違うため、表の数字を横に足したり平均したりはできません。

この記事で使ったシャドーイングの一次ソース

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