英語のリーディング速度について、いま学術的にいちばん広く参照されている数字は毎分238語(ノンフィクションの黙読・英語母語話者の成人)です。190件の研究・18,573人分のデータをまとめたメタ分析が出した値で、長く語られてきた「毎分300語」よりはっきり低い水準に着地しています。
この記事は、査読論文(Brysbaert 2019, Journal of Memory and Language 109, 104047)と、TOEIC=IIBC・TOEFL=ETS・英検=日本英語検定協会・文部科学省が公表している設問数/試験時間/語数を並べ直したものです。数字はすべて2026年9月17日に各団体のサイトと論文本文で確認しました。編集部が独自に測った値は1つもありません。
英語のリーディング速度の平均は毎分238語(研究の結論)
Brysbaert(2019)は、1901年から2019年までに発表された英語のリーディング速度の研究を集め、条件を揃えたうえでメタ分析にかけました。対象は190件の研究、参加者は合計18,573人です。ここから出た平均がノンフィクションの黙読で毎分238語、フィクションの黙読で毎分260語でした。
論文の要旨は、この差の理由を「語の長さ」で説明できると述べています。ノンフィクションのほうがフィクションより1語あたりの文字数が長く、同じ時間でも通過できる語数が減る、という読み方です。つまり英語のリーディング速度は、読み手の能力だけでなく、読んでいる文章の語の長さでも動きます。
| 項目 | 値 | データの規模 |
|---|---|---|
| 黙読・ノンフィクション | 238 wpm(標準偏差51.2/95%信頼区間 230〜246/中央値235) | 190研究・18,573人 |
| 黙読・フィクション | 260 wpm | 同上 |
| 音読 | 183 wpm(標準偏差25.9/95%信頼区間 177〜189/中央値181) | 77研究・5,965人 |
| 大半の成人が収まる幅(ノンフィクション黙読) | 175〜300 wpm | 同上 |
| 大半の成人が収まる幅(フィクション黙読) | 200〜320 wpm | 同上 |
注意しておきたいのは、238という数字が「全人類の平均」ではないことです。論文はこの値が当てはまるのは18〜60歳の、読字に困難のない英語母語話者だと明記しています。子ども・高齢者・第二言語として英語を読む人では、いずれも数字が下がります。
また、研究ごとの重みづけを参加者数で行うと平均は242 wpmに上がります。論文は「参加者数の多い研究のほうが測定が安定している」という前提を置くかどうかで、238と242のどちらを採るかが変わると説明しています。いずれにせよ300には届きません。
英語のリーディング速度が「毎分300語」と言われてきた理由
英語のリーディング速度の目安として「毎分300語」という数字は、教材でも解説記事でも繰り返し使われてきました。Brysbaert(2019)は、この数字がどこから来たかを論文の前半まるごと使って追っています。
論文によれば、科学雑誌で読書速度に触れた最初の著者はQuantz(1898)で、非常に遅い読み手を毎秒3.9語(=234 wpm)、非常に速い読み手を毎秒7.3語(=438 wpm)としていました。ただし測り方の説明がなく、後続の研究者が測り直すきっかけになっています。
その後、Buswell(1959)が「小学校卒業時点で毎分約250語、大学生は平均約300語」と書き、Carver(1977年以降の一連の研究)が「通常の黙読は毎分300語」と位置づけたことで、300という数字が定着しました。Rayner ら(2016)も「大学教育を受けた成人でおよそ200〜400 wpm」と書いており、例示された熟練読者10人の平均は308 wpmでした。
Brysbaert(2019)は、過大評価が起きた要因として、特定の熟練読者グループを代表値として扱ったこと、読解の確認が甘い条件で測っていたこと、易しい文章を使っていたことなどを挙げています。同論文は、読書速度の標準テストであるNelson-Denny系の規準では平均がおおむね250 wpm前後であり、300ではないとも指摘しています。
なお論文は、実生活での読書も測っています。48冊の本(平均385ページ・平均約107,000語)を読んだ記録から出た読書速度は毎分260語(標準偏差87/95%信頼区間 235〜285)でした。統計的な検定では、この値は238とは矛盾せず、300とははっきり異なるという結果になっています。
英語のリーディング速度は読み方(黙読・音読・暗記)でどう変わるか
英語のリーディング速度は、同じ人でも「何のために読んでいるか」で変わります。Carver(1992)は、これを自転車の変速機になぞらえて5段階に整理しました。Brysbaert(2019)は、その5段階が実データで支持されるかを検証しています。
| Carver(1992)の5段階 | 提案されていた速度 | Brysbaert 2019 の判定 |
|---|---|---|
| 思い出すために読む(recall) | 140 wpm | 時間はかかる(毎分100語程度が妥当な推定)。ただし別種の読み方ではなく、再読と戻り読みが増えた結果と説明 |
| 見分けるために読む(recognition) | 200 wpm | 次の段階とはっきり区別できなかった |
| 興味で読む(rauding) | 300 wpm | 語長を考慮すると上の段階とほぼ同じ速度になり、分布も二山にならなかった |
| 飛ばし読み(skimming) | 450 wpm | 次の段階との切り分けは明確でないとした |
| 探し読み(scanning) | 650 wpm | 唯一、通常の読みとの違いが裏づけられた段階 |
論文の結論は「読みと探し読み(scanning)の間以外に、明確な段階の切り替わりは見つからなかった」というものです。探し読みのときは前向きのサッケード(跳躍的な眼球運動)が長くなり、停留時間が短くなり、語の出現頻度の影響を受けにくくなる——つまり意味ではなく形だけを照合している状態になります。
音読については、77研究・5,965人から毎分183語という値が出ています。黙読238 wpmに対して音読183 wpmですから、声に出すと2割以上ペースが落ちる計算です。論文は、この水準が「聞き取れる話速の上限」と整合的だと述べています。
言い換えると、英語のリーディング速度の上限は、視覚処理の速さだけでなく、言語そのものを処理できる速さで決まっている、というのが論文の立場です。だから「読むためだけの特別な処理」を仮定しなくても説明がつく、と結んでいます。
英語のリーディング速度は学年でどう上がるか(12,143人のデータ)
子どもの英語のリーディング速度を大規模に測った古典が、Taylor(1965)です。小学1年生から大学生まで、各学年1,000人以上、合計12,143人を対象にしています。読解の確認として、各学年に合った文章を使い、正誤問題で70%以上正答した人だけを集計に入れています。
| 学年 | 読解を伴う速度(wpm) | 学年 | 読解を伴う速度(wpm) |
|---|---|---|---|
| 1年 | 80 | 8年 | 204 |
| 2年 | 115 | 9年 | 214 |
| 3年 | 138 | 10年 | 224 |
| 4年 | 158 | 11年 | 237 |
| 5年 | 173 | 12年 | 250 |
| 6年 | 185 | 大学生 | 280 |
| 7年 | 195 | — | — |
この表の読みどころは、伸び方が一定ではないことです。1年から4年までの3年間で80→158 wpmとほぼ倍増しているのに対し、8年から12年までの4年間では204→250 wpmで、伸び幅は46 wpmにとどまります。英語のリーディング速度は、初期にいちばん大きく動きます。
なお12年生の250 wpmと大学生の280 wpmの間に差があることについて、論文は「大学生という集団自体が選抜を受けている」ことを理由として挙げています。同じ年齢層を追跡した値ではないので、そのまま「高校卒業後に30 wpm伸びる」とは読めません。
高齢期については、論文は視覚の変化(細部の感度の低下、視覚的混雑の影響の増大)と停留時間の延長を挙げ、文脈から次の語を推測する読み方に寄っていくと整理しています。238 wpmという数字は18〜60歳の範囲の値であり、そこから外れる年齢層にそのまま当てはめられません。
第二言語としての英語のリーディング速度はどれくらいか
日本語話者にとっていちばん近い話がここです。Brysbaert(2019)は「第二言語(L2)話者の読書速度は母語話者よりかなり遅く、毎分100語を下回ることも珍しくない」と明記しています。
具体例として引かれているのがHirai(1999)です。対象は日本の大学生で、全員が中学・高校で6年間の英語教育を受け、多くが大学でも週2回90分の英語授業を受けていました。英語専攻の一部は週5〜8コマの英語科目を履修しています。教材は易しい散文で、読後に4択8問の理解確認が付きました。
| グループ | 英語のリーディング速度 | 母語話者の黙読238 wpmとの比 |
|---|---|---|
| 理解確認で75%超を正答した学生 | 139 wpm | 約58% |
| それ以外の学生 | 61 wpm | 約26% |
| 参考:英語母語話者・ノンフィクション黙読 | 238 wpm | 100% |
同じ研究は、参加者の英語リスニングも測っています。論文によれば、推定された最適な聴解速度は、観測された読書速度とよく対応していました。読む速さと聞ける速さが別々に決まっているのではなく、同じ処理能力の表れとして動いている、という見立てになります。
もう1つ引かれているのがCop, Drieghe, & Duyck(2015)です。オランダ語と英語のバイリンガルに小説の半分を母語で、半分を第二言語で読ませたところ、第二言語での読書速度は母語より17%遅くなりました。この研究の参加者は「そこそこ熟達した」層です。
眼球運動のパターンも興味深く、第二言語で読む成人は母語で読む子どもによく似ていたと報告されています。1文あたりの停留回数が増え、停留時間が長くなり、前向きのサッケードが短くなり、飛ばして読む語が減る。戻り読みの回数だけは差がありませんでした。
英語のリーディング速度を他の言語と比べるとどうなるか
英語のリーディング速度が毎分238語だとして、それは他の言語と比べて速いのか遅いのか。Brysbaert(2019)は、黙読と音読の両方で2件以上の研究がある言語について、表にまとめています。
| 言語 | 黙読(wpm) | 黙読の研究数/人数 | 音読(wpm) | 膨張指数 |
|---|---|---|---|---|
| 英語 | 236 | 144件/15,409人 | 190 | 1,000 |
| アラビア語 | 181 | 10件/673人 | 142 | 822 |
| 中国語 | 260 | 18件/786人 | 152 | 980 |
| オランダ語 | 228 | 7件/403人 | 171 | 1,005 |
| フィンランド語 | 195 | 4件/96人 | 162 | 764 |
| フランス語 | 214 | 6件/215人 | 180 | 1,062 |
| ドイツ語 | 260 | 13件/853人 | 169 | 975 |
| ヘブライ語 | 224 | 5件/168人 | 147 | 782 |
| イタリア語 | 285 | 3件/253人 | 182 | 1,006 |
| 韓国語 | 226 | 5件/186人 | 133 | 692 |
| スペイン語 | 278 | 6件/213人 | 191 | 1,025 |
| スウェーデン語 | 218 | 5件/129人 | 163 | 897 |
この表の英語の黙読が236 wpmで、要旨の238とわずかに違うのは、表5がラテン文字系の言語と比べるための集計であり、フィクションとノンフィクションを分けていないためです。論文の代表値として引くなら238(ノンフィクション)と260(フィクション)を使うのが正確です。
論文は、言語間の差の大半を「膨張指数」で説明できるとしています。同じ内容を伝えるのに多くの語を必要とする言語ほど、毎分語数で表した速度は高く出ます。黙読では膨張指数と速度の相関がr=0.55、音読ではr=0.82、両者の平均を使うとr=0.75でした。
だから「イタリア語は285 wpmだから英語より速い」とは読めません。イタリア語の膨張指数は1,006で英語とほぼ同じですが、韓国語の692のように少ない語数で同じ内容を運ぶ言語では、毎分語数は小さく出ます。運ばれている情報量で見ると差は縮まる、というのが論文の整理です。
TOEIC L&Rの設問数から見る英語のリーディング速度
ここからは、日本で受けられる試験が公表している時間と設問数を並べます。まずTOEIC Listening & Reading Testです。IIBCが公表しているテスト形式は次のとおりでした(2026年9月17日確認)。
| セクション | Part | 内容 | 設問数 | 時間 |
|---|---|---|---|---|
| リスニング | 1〜4 | 写真描写・応答・会話・説明文 | 100問(6/25/39/30) | 約45分 |
| リーディング | 5 | 短文穴埋め | 30問 | 75分 |
| リーディング | 6 | 長文穴埋め(1つの文書に4問) | 16問 | |
| リーディング | 7 | 1つの文書を読む問題 | 29問 | |
| リーディング | 7 | 複数の文書を読む問題 | 25問 |
リーディングは75分で100問、うちPart 7だけで54問を占めます。単純に割ると1問あたり45秒です。Part 5の短文穴埋めを早く片づけて、Part 7に時間を残す設計が語られるのは、この配分から来ています。
ただし、IIBCは本番の文書の総語数を数字として公表していません。したがって「TOEICのリーディングを解き切るには毎分◯語が必要」という換算は、公表値からは出せません。編集部として確認できたのは、上の時間と設問数までです。市販の解説に出てくる総語数は、各社が独自に数えた推定値であり、運営団体の公表値ではありません。
なおIIBCは、Part 7の速読を扱った公式教材を案内しており、その実践テストは全54問構成だと説明しています。本番と同じ設問数で時間配分を試す形です。ここでも、語数そのものの公表はありませんでした。
TOEFL iBTの語数から見る英語のリーディング速度
TOEFL iBTは、ETSがリーディングの文章の長さを語数で公表してきた数少ない試験です。ただし2026年1月21日を境に形式が変わっており、新旧で見え方が違います。
| 時期 | リーディングの内容 | 設問数 | 時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月21日より前 | 各700語の文章が2本 | 1本あたり10問(計20問) | 35分 |
| 2026年1月21日以降 | 3種のタスク(Complete the Words/Read in Daily Life/Read an Academic Passage) | 50項目 | 約30分 |
旧形式のほうは語数が公表されているので、そこから逆算ができます。700語×2本=1,400語を35分で処理する設計ですから、読む作業と20問を解く作業を合わせた通過ペースは毎分40語です。
仮に35分のうち半分を本文を読む時間に充てたとすると、1,400語÷17.5分=毎分80語になります。この毎分40語・80語は、公表された語数と時間から編集部が計算した概算であり、ETSが目標値として示している数字ではありません。
ここで前の章の数字を思い出すと、Hirai(1999)で理解確認を7割5分以上通過した日本の大学生が139 wpmでした。旧TOEFLの毎分80語という概算は、その水準の読み手にとっては「読むだけなら余裕があるが、設問を解く時間が残らない」配分だと分かります。速度の問題なのか、設問処理の問題なのかを切り分ける材料になります。
新形式については、ETSは「テキストは簡潔で焦点が絞られている」と説明する一方、1本あたりの語数は公表していません。項目数50・約30分という枠だけが公表値です。新形式で語数換算をしたい場合は、公表され次第の更新を待つことになります。
英検の試験時間から見る英語のリーディング速度
日本英語検定協会は、英検の各級について一次試験の時間を公表しています。ただしリーディング単独ではなく「リーディング・ライティング」の合計時間としての公表です。
| 級 | リーディング・ライティング | リスニング | 目安とされる水準 |
|---|---|---|---|
| 1級 | 100分 | 約35分 | 大学上級程度 |
| 準1級 | 90分 | 約30分 | 大学中級程度 |
| 2級 | 85分 | 約25分 | 高校卒業程度 |
| 準2級 | 80分 | 約25分 | 高校中級程度 |
| 3級 | 65分 | 約25分 | 中学卒業程度 |
3級の65分から1級の100分まで、級が上がるにつれて35分ぶん時間が伸びます。ただしライティングの分量も級ごとに変わるため、この差をそのまま「読む量の差」と読むことはできません。
協会は各級の本文語数を数値として公表していないため、英検の試験時間から英語のリーディング速度を直接換算することはできません。過去問のPDFは配布されているので、必要な語数を自分で数えるという手はありますが、それは公表値ではなく各自の実測になります。
TOEICと英検については、運営団体が本文の総語数を公表していません。公表されていない語数を推定値で埋めて「毎分◯語必要」と書くことはできるものの、その数字は運営団体の値ではなくなります。この記事では、公表されている語数があるTOEFL iBTの旧形式だけ換算し、それも編集部の概算だと明記する形にしました。
学習指導要領の語数と英語のリーディング速度の関係
英語のリーディング速度は、知っている語がどれだけあるかに左右されます。読み手が語を見た瞬間に意味へ結びつけられなければ、停留時間が延び、戻り読みが増えるからです。前の章で触れた「第二言語の読みは母語の子どもの読みに似る」という所見も、露出量の少なさで説明されています。
では日本の学校教育では何語を扱うことになっているか。文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編」に、中央教育審議会の整理として次の数字が記載されています(2026年9月17日にPDF本文で確認)。
| 学校段階 | 指導する語数 | 改訂前 |
|---|---|---|
| 小学校 | 600〜700語程度 | —(外国語科は新設) |
| 中学校 | 小学校で学習した語に1,600〜1,800語程度の新語を加えた語 | 1,200語程度 |
| 高等学校 | 1,800〜2,500語程度 | — |
解説は、この「1,600〜1,800語程度」の意味づけも書いています。1,600語は中学校の外国語科で新たに指導する語数の下限、1,800語は指導で取り扱う一定の目安であり、1,800語程度を上限として固定する趣旨ではないという説明です。
さらに、ここで示された語数は主として受容語彙(読んだり聞いたりして意味が分かる語)として扱われるものだと整理されています。読むために必要な語彙と、自分で使える語彙(発信語彙)は同じではない、という前提が指導要領解説の側にも書かれています。
なお語数の数え方についても記載があり、綴りが同じ語は品詞にかかわらず1語と数えるとされています。教材ごとの「◇◇語収録」といった表示を比べるときは、数え方の定義が揃っているかを見る必要があります。
英語のリーディング速度を測るときに間違えやすい3つのこと
ここまでの数字を自分の測定に当てはめるとき、ずれが生じやすい点を3つ挙げます。いずれもBrysbaert(2019)本文に根拠の記述があるものです。
1つめは、理解の確認をしない測定は速度として比較できないことです。Taylor(1965)の学年別データは、正誤問題で70%以上正答した人だけを集計に入れています。理解の水準を揃えないと、飛ばし読みと読解が同じ土俵に乗ってしまいます。
2つめは、文章の語の長さです。論文は、ノンフィクションとフィクションの238と260という差を、語長で説明できるとしています。同じ人が同じ日に測っても、教材が違えば毎分語数は20語前後動きうるということです。
3つめは、集中の持続です。論文は「これらは最後まで課題に集中し続けた人の値であり、制約の緩い状況ではマインドワンダリング(注意の逸れ)や中断のため、実際の読書速度はもっと低くなる可能性が高い」と明記しています。試験のように区切られた条件での英語のリーディング速度と、日常の読書でのそれは同じ数字になりません。
補足として、速読の主張についての論文の立場も書いておきます。Rayner ら(2016)は、内容理解を大きく損なわずに毎分1,000語を超えることは、停留と跳躍という眼球運動の仕組み上できないと説明しています。Brysbaert(2019)はこれを引き継ぎ、300 wpmという目安ですら「大半の人にとっては高すぎる基準で、届かなかったときに落胆を招きやすい」と述べています。
英語のリーディング速度で最後に確認しておくこと
この記事で並べた数字を、出どころ別に整理し直します。研究から出た数字と、試験団体・行政が公表している数字は、性質が違うので混ぜないほうが安全です。
| 数字 | 値 | 出どころ | 確認日 |
|---|---|---|---|
| 英語母語話者の黙読(ノンフィクション) | 238 wpm | Brysbaert 2019(査読論文) | 2026年9月17日 |
| 英語母語話者の黙読(フィクション) | 260 wpm | 同上 | 2026年9月17日 |
| 英語母語話者の音読 | 183 wpm | 同上 | 2026年9月17日 |
| 日本の大学生(理解確認75%超) | 139 wpm | Hirai 1999(同論文が引用) | 2026年9月17日 |
| TOEIC L&Rのリーディング | 75分・100問(Part 7は54問) | IIBC | 2026年9月17日 |
| TOEFL iBTリーディング(2026年1月21日より前) | 700語×2本・20問・35分 | ETS | 2026年9月17日 |
| 英検2級の一次試験 | リーディング・ライティング85分 | 日本英語検定協会 | 2026年9月17日 |
| 中学校で新たに扱う語数 | 1,600〜1,800語程度 | 文部科学省 | 2026年9月17日 |
自分の英語のリーディング速度を把握したい場合、比較の相手は「238」ではなく、条件を揃えた自分の過去の記録になります。238は英語母語話者・18〜60歳・読字に困難なし・ノンフィクションという条件つきの値です。
最後に、この記事に書かなかったことを明示しておきます。TOEICと英検の本文総語数は、運営団体が公表していないため書いていません。TOEFL iBTの新形式(2026年1月21日以降)の語数も同じ理由で書いていません。推定値で埋めれば読みやすくはなりますが、それは公表値ではなくなるためです。
- 英語のリーディング速度の学術的な代表値=238 wpm(ノンフィクション黙読・英語母語話者)
- 大半の成人が収まる幅=175〜300 wpm(ノンフィクション黙読)
- 第二言語として読む場合は大きく下がり、毎分100語を下回る例も報告されている
- 言語間の比較は、膨張指数(同じ内容に必要な語数)を踏まえないと成立しない
- 試験から速度を逆算できるのは、語数が公表されている場合だけ

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