
英語の資格を持っていると、大学の英語科目がそのまま単位になることがある。国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が2021年10月・11月・12月に全国1,135校へ行った調査では、TOEIC Programを単位認定に使っていると答えた学校は434校だった。うち大学は334校で、調査した大学776校のうち334校=43.0%にあたる(割合は編集部が計算したもの)。
この記事は、IIBCの調査資料、文部科学省が定める大学設置基準、そして各大学が公表している履修の手引き・単位認定制度のページに載っている数字だけを並べ直したものである。数字は2026年9月21日に各公式サイトで確認した。確認が取れなかったものは載せていない。制度は入学年度によって変わるため、最終的には在籍する大学の公表資料を見てほしい。
大学で英語の資格が単位になるのは何校あるか
IIBCの「TOEIC Program 単位認定における活用状況」(2021年度/株式会社大学通信に委託して実施)は、調査対象と活用校数の両方を公表している。校数の内訳は次のとおり。
| 区分 | 調査実施校数 | 単位認定活用校数 | 割合(編集部の計算) |
|---|---|---|---|
| 大学 | 776校 | 334校 | 43.0% |
| 短期大学 | 302校 | 56校 | 18.5% |
| 高等専門学校 | 57校 | 44校 | 77.2% |
| 計 | 1,135校 | 434校 | 38.2% |
目立つのは高等専門学校の77.2%で、4校に3校が単位認定に使っている。逆に短期大学は18.5%にとどまる。なお同資料は、活用校数のなかに詳細を非公開とした学校も含まれるため、巻末の活用一覧に載っている校数とは一致しないと注記している。
大学が資格に単位を出せる根拠はどこにあるか
根拠は文部科学省令の大学設置基準にある。第29条は「大学は、教育上有益と認めるときは、学生が行う短期大学又は高等専門学校の専攻科における学修その他文部科学大臣が別に定める学修を、当該大学における授業科目の履修とみなし、大学の定めるところにより単位を与えることができる」と定める。学外での学修を授業の履修とみなす、という組み立てである。
ただし上限がある。第28条(他大学・短期大学での履修)が60単位を超えない範囲と定め、第29条はその単位数と「合わせて六十単位を超えないものとする」、第30条(入学前の既修得単位等の認定)も第28条・第29条と「合わせて六十単位を超えないものとする」と重ねている。
60単位は「英語の資格だけで60単位」という意味ではない。他大学での履修、学外の学修、入学前の既修得単位を合算した上限が60単位である。学士課程の卒業要件は124単位以上が基本なので、合算しても半分以下という設計になっている。各大学はこの枠内で、さらに自校の規程で狭い上限を置いている。
大学が求めているTOEICスコアはどのあたりに集まっているか
IIBCの活用一覧には、公開に同意した大学が1行ずつ「基準スコア」と「単位数」を載せている。編集部がこの一覧から大学(国公立・私立)のTOEIC Listening & Reading(L&R)の行だけを数えたところ、733行が得られた。1つの大学が複数の基準を持つため、行数は校数ではない。スコア帯の分布は次のとおり。
| TOEIC L&R の基準スコア帯 | 該当行数 | 構成比(編集部の計算) |
|---|---|---|
| 499点以下 | 54行 | 7.4% |
| 500〜599点 | 139行 | 19.0% |
| 600〜699点 | 193行 | 26.3% |
| 700〜799点 | 182行 | 24.8% |
| 800〜899点 | 127行 | 17.3% |
| 900点以上 | 38行 | 5.2% |
| 合計 | 733行 | 100.0% |
いちばん多い帯は600〜699点で26.3%、次が700〜799点で24.8%。700点未満の基準が386行=52.7%を占め、平均は669.6点だった(いずれも編集部の集計)。900点以上を求める行は5.2%しかない。一覧の最低値は350点、最高値は980点である。
大学が出している単位数は何単位が多いか
同じ733行を単位数で数え直すと、2単位を出す設計がもっとも多い。1行に「1〜2単位」のように幅を持たせた大学は、下限の数字で数えた。
| 認定される単位数 | 該当行数 | 構成比(編集部の計算) |
|---|---|---|
| 1単位 | 95行 | 13.0% |
| 2単位 | 257行 | 35.1% |
| 3単位 | 22行 | 3.0% |
| 4単位 | 189行 | 25.8% |
| 5単位 | 8行 | 1.1% |
| 6単位 | 88行 | 12.0% |
| 8単位 | 54行 | 7.4% |
| その他(7・9・10・12・14・16・22・24単位) | 20行 | 2.7% |
2単位以下が352行=48.0%で、およそ半分。一方で12単位・16単位・24単位といった大きな数字を出す行も20行あり、これは外国語を専門に学ぶ学部で語学科目の比重が大きいケースにあたる。制度としては「英語科目1〜2コマ分が免除される」規模が標準形だと読める。
大学・短期大学・高等専門学校で基準はどう違うか
同じ一覧を区分ごとに分けて集計すると、求めるスコアの水準に差が出る。国公立大学の中央値が700点、私立大学が650点、短期大学と高等専門学校はいずれも600点だった。
| 区分 | TOEIC L&R の行数 | 基準スコアの中央値 | 最低〜最高 | 最も多い単位数 |
|---|---|---|---|---|
| 国公立大学 | 176行 | 700点 | 350〜980点 | 2単位(63行) |
| 私立大学 | 557行 | 650点 | 350〜950点 | 2単位(194行) |
| 短期大学 | 61行 | 600点 | 300〜945点 | 2単位(25行) |
| 高等専門学校 | 133行 | 600点 | 300〜900点 | 2単位(35行) |
4区分すべてで最多が2単位という点は共通している。違いが出るのはスコアのほうで、国公立大学と高等専門学校の中央値の差は100点(編集部の集計)。ただし国公立大学は行数が176行と少なく、私立大学の557行に比べて母数が小さい点には注意がいる。
大学6校が公表している英語の認定基準
集計だけでは制度の形が見えにくいので、各大学が自分のサイトで公表している基準をそのまま並べる。対象科目名・単位数・成績の付け方まで公開している大学は少なくない。
| 大学(資料) | 公表されている英語の基準(抜粋) | 認定される単位 |
|---|---|---|
| 東北大学(令和4年度以降入学者用) | 英検1級/TOEIC L&R 900点以上/TOEFL ITP 600点以上/TOEFL iBT 100点以上/IELTS 7.0以上 | 2単位・評価AA(英語の認定は上限2単位) |
| 東北大学(同) | TOEIC L&R 830点以上/TOEFL ITP 550点以上/TOEFL iBT 79点以上/IELTS 6.5以上 | 1単位・評価AA |
| 小樽商科大学(平成25年度以降入学者) | 実用英語技能検定準1級以上/TOEFL iBT 80点以上/TOEIC 730点以上 | 英語ⅠA〜ⅠDから2単位または1単位・成績「秀95」 |
| 小樽商科大学(同) | TOEFL iBT 61点以上/TOEIC 700点以上 | 同科目群から2単位または1単位・成績「優85」 |
| 名古屋大学(2022年度入学生用・春学期) | 英検1級/国連英検A級・特A級/TOEFL iBT 88点以上/TOEIC L&R 787点以上/ケンブリッジ英検C1 Advanced・C2 Proficiency/IELTS 7.0以上 | 英語(基礎)(中級)(コミュニケーション)から2単位(1科目) |
| 岡山大学(2025年度入学者) | 英検1級(2630点以上)/国連英検A級/TOEFL iBT 82点以上/IELTS 6.5以上 | コミュニケーション英語(S&L)と(R&W)で計4単位 |
| 岡山大学(同) | 英検準1級(2304点以上)/TOEFL iBT 72点以上/IELTS 6.0以上 | コミュニケーション英語のいずれかで2単位 |
| 岡山大学(同) | TOEIC L&R 800点以上 | 高年次英語で1単位 |
| 東北学院大学 | TOEIC(L&R)/(S&W)790点以上/英検2級合格・1980点以上/GTEC 960点以上/IELTS 4.0以上/TEAP 225点以上/TEAP CBT 420点以上/TOEFL iBT 42点以上/ケンブリッジ英検140点以上 | 未履修の英語科目2科目・2単位まで(成績は85・90・95・100のいずれか) |
| 近畿大学 理工学部 | TOEIC・TOEFL・IELTS・英検(具体的な基準は履修要項に記載) | 「TOEIC1」「TOEIC2」の計2単位を100点として認定 |
同じTOEICでも、東北学院大学は790点で2単位、東北大学は830点で1単位・900点で2単位と、求める点数がまるで違う。岡山大学のようにTOEIC L&RとS&Wのスコアを足して判定する仕組み(ListeningとSpeakingの合計615点以上、ReadingとWritingの合計580点以上)を置く大学もある。
大学は英語以外の外国語でも資格を単位にしている
制度は英語だけのものではない。ドイツ語・フランス語・中国語・スペイン語・ロシア語の検定を対象にしている大学があり、英語より大きい単位数を出している例もある。
| 大学 | 言語と検定 | 公表されている単位数 |
|---|---|---|
| 東北大学 | ドイツ語・フランス語 | 認定単位数の上限は各4単位 |
| 東北大学 | スペイン語 | 認定単位数の上限は8単位(理学部の学生は4単位) |
| 名古屋大学 | ドイツ語技能検定試験 4級 | 4単位 |
| 名古屋大学 | ドイツ語技能検定試験 3級〜1級 | 6単位 |
| 名古屋大学 | ゲーテ・ドイツ語検定試験 A1 | 4単位 |
| 名古屋大学 | ゲーテ・ドイツ語検定試験 A2・B1〜C2 | 6単位 |
| 岡山大学 | ドイツ語技能検定試験 2級以上/3級/4級/5級 | 4単位まで/3単位まで/2単位まで/1単位まで |
| 岡山大学 | 実用フランス語技能検定試験 3級以上/4級/5級 | 4単位まで/2単位まで/1単位まで |
| 岡山大学 | 漢語水平考試(HSK)4級以上(5級・6級は180点以上)/中国語検定2級以上 | 4単位まで |
| 小樽商科大学 | ドイツ語技能検定3級合格(80点以上)または2級以上 | 4単位または2単位・成績「秀90」 |
| 小樽商科大学 | スペイン語技能検定3級以上/ロシア語能力検定4級以上 | 4単位または2単位(昼間コースの授業科目として認定) |
英語の認定上限が2単位の東北大学でも、スペイン語は上限8単位と4倍になる。履修科目の構成と、その言語の検定が到達度をどれくらい細かく分けているかで設計が変わる、と読むのが自然だろう。
大学への申請には期限と回数の条件がついている
スコアを持っていれば自動で単位になるわけではない。多くの大学は申請期間と、スコアの取得時期、申請できる回数を規程で区切っている。公表されている条件を挙げる。
東北学院大学は、申請できるのは「在学中一度のみ」、対象は「申請月から遡って24か月以内」に受けた試験と明記している。近畿大学理工学部は「取得後2年以内のスコアまたは合格証原本」を求めている。東北大学は「同一認定基準による複数回申請は認めない。ただし、前に申請した認定基準より上位の認定基準による申請は認める」としており、830点で1単位を取ったあとに900点で残り1単位を取る運用を例示している。
大学が対象科目を絞っている点も見落とされやすい。東北大学の制度は経済学部・理学部・医学部・歯学部・薬学部・工学部・農学部の7学部で実施され、歯学部と薬学部は「英語Ⅲ」または「英語Ⅲ(e-learning)」からの認定に限られる。東北学院大学は文学部英文学科と教育学科を対象外としている。
大学の単位認定データで読み違えやすい点
公表データを並べるときに、そのまま受け取ると数字を取り違えるポイントが3つある。IIBCの資料が自ら注記している内容と、大学側の規程の書き方に由来するものである。
1つめは、一覧に載る「601点」のような実在しないスコア。IIBCは「601点より高いTOEIC Listening & Readingスコア(実在するスコアは605点)から単位認定の要件などとする」という意味だと注記している。L&Rのスコアは10〜990点の5点刻みである。2つめは、公開テストとIPテスト(団体特別受験制度)の扱い。「IPテストは学内での実施に限る」と条件を付ける大学があり、東北大学は歯学部・工学部・農学部で団体受験のスコアによる認定を行わないと明記している。3つめは、活用校数と一覧掲載校数のずれで、これは詳細を非公開にした学校が活用校数に含まれるためである。
なお文部科学省の「大学における教育内容等の改革状況について(令和5年度)」は、792大学を対象に調査し786大学が回答(回答率99%、令和6年10月28日公表)しているが、この調査は教学マネジメントやカリキュラム編成が主題で、英語検定による単位認定の校数はここからは取れない。校数の数字がほしい場合は、試験団体が自ら行う調査に当たることになる。
大学で資格を単位にする前に最後に確認しておくこと
- TOEIC Programを単位認定に使う学校は434校(大学334校・短期大学56校・高等専門学校44校/IIBC 2021年度調査)
- 大学の活用率は776校中334校で43.0%、高等専門学校は57校中44校で77.2%(編集部の計算)
- 学外の学修による単位認定は、大学設置基準第28条〜第30条により合算で60単位が上限
- 公表されたTOEIC L&Rの基準733行のうち、700点未満が52.7%、平均は669.6点(編集部の集計)
- 認定される単位数は2単位が35.1%で最多、2単位以下で48.0%(同)
- 基準スコアの中央値は国公立大学700点・私立大学650点・短期大学と高等専門学校600点(同)
- 申請は「在学中一度のみ」「24か月以内のスコア」など回数と期限の条件が付くことが多い
一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会「TOEIC Program 単位認定における活用状況 −大学・短期大学・高等専門学校−」2021年度調査(2021年10月・11月・12月実施、株式会社大学通信に委託)/文部科学省令「大学設置基準」第28条・第29条・第30条/文部科学省「大学における教育内容等の改革状況について(令和5年度)」令和6年10月28日公表/東北大学「外国語技能検定試験等による単位認定制度について(令和4年度以降入学者用)」/小樽商科大学「単位を認定することができる検定等(平成25年度以降入学者)」/名古屋大学教養教育院統括部「2022年度春学期 検定試験による単位認定の手続きについて」/岡山大学「外部検定試験による単位の認定基準 2025年度入学者」/東北学院大学 外国語教育センター英語セクション「外部検定試験による単位認定について」/近畿大学 理工学部「外国語学習・留学情報」。いずれも2026年9月21日に各公式サイトで確認した。割合・中央値・平均・行数の集計は編集部が計算したもの。
公表データを並べて見えるのは、制度そのものは珍しくないのに、基準が大学ごとにばらばらだという一点である。TOEIC 790点で2単位になる大学があり、830点でようやく1単位という大学もある。スコアを取ってから調べるのではなく、在籍する(あるいは進学先の)大学が公表している履修の手引きと単位認定制度のページを先に開き、対象科目・上限単位数・申請期間・スコアの期限の4つを確認してから受験計画を立てるほうが、時間の使い方としては無駄が少ない。
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